休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

佐藤雅美/「魔物が棲む町」~物書同心居眠り紋蔵

イメージ 1
 
20160304(了)

佐藤雅美/「魔物が棲む町」

     物書同心居眠り紋蔵

 
 1、十四の侠客岩吉の本音
 2、独断と偏見と冷汗三斗
 3、親殺しと自訴、灰色の決着
 4、御三家付家老五家の悲願
 5、魔物が棲む町
 6、この辺り小便無用朱の鳥居
 7、仁和寺宝物名香木行江塵の行方
 8、師走間近の虎が雨
 
   2013年/時代小説/講談社文庫/単行本2010年/中古屋
 
   <★★★☆>
 
(カバー裏紹介) 高輪・如来寺に赴任した快鴬(かいおう)は、門前町人たちに
地代を課そうとしたが、彼らがいっこうに払わないので公儀に訴えた。ごく簡
単な訴訟だったはずなのに、背後に拝領地の売買という、奉行所が裁決を
避けてきた容易ならぬ問題が。訴訟を取り下げさせるという厄介事が紋蔵に
降りかかる表題作。 人気捕物帖第10弾!
 
例繰方の紋蔵さん、南の物書き同心として、一応落ち着いているし、ちゃん
と?!重宝がられている。
トップの御奉行は替るが、その下はほとんど「転勤」はないんやね。警察とい
うよりは町役場みたいな‘人事’なのかなあ。
 
(3)の奇妙に転がる判断、(4)の悲しき欲望も印象深いが、表題作の(5)が
確かに紹介したくなる内容。
町人の案外のふてぶてしさにゾクリ。
(6)の子供の立小便の話がたのしい。これが最後に大捕り物につながるんだ
が、捕り物の記述が少なく、これでいいのかどうか。ちょっともったいない気も
する。
 
解説の国文学者島内景二氏によれば、
“綿密な資料の読み込み、現実には起こらなかったけれども、起きてもよかっ
た出来事を創作した。これは正史ではなく、稗史でもなく、「可能性としての歴
史である。これが「紋蔵」シリーズの醍醐味なのだ・・・”
であり、『武鑑』と(4)にひっかけては、“鴎外の血脈を受け継いでいる”
と断言している。それも、鴎外には欠けていた読者のためのサービス精神、エ
ンターテインメントとしての面白さを加味しているんだって。
 
まあそんなことはどうでもいいのですけどね。
楽しみました。