|
(カバー裏紹介) 高輪・如来寺に赴任した快鴬(かいおう)は、門前町人たちに |
地代を課そうとしたが、彼らがいっこうに払わないので公儀に訴えた。ごく簡 |
単な訴訟だったはずなのに、背後に拝領地の売買という、奉行所が裁決を |
避けてきた容易ならぬ問題が。訴訟を取り下げさせるという厄介事が紋蔵に |
降りかかる表題作。 人気捕物帖第10弾!
|
|
例繰方の紋蔵さん、南の物書き同心として、一応落ち着いているし、ちゃん |
と?!重宝がられている。 |
トップの御奉行は替るが、その下はほとんど「転勤」はないんやね。警察とい |
うよりは町役場みたいな‘人事’なのかなあ。 |
|
(3)の奇妙に転がる判断、(4)の悲しき欲望も印象深いが、表題作の(5)が |
確かに紹介したくなる内容。 |
町人の案外のふてぶてしさにゾクリ。 |
(6)の子供の立小便の話がたのしい。これが最後に大捕り物につながるんだ |
が、捕り物の記述が少なく、これでいいのかどうか。ちょっともったいない気も |
する。 |
|
解説の国文学者島内景二氏によれば、 |
“綿密な資料の読み込み、現実には起こらなかったけれども、起きてもよかっ |
た出来事を創作した。これは正史ではなく、稗史でもなく、「可能性としての歴 |
史である。これが「紋蔵」シリーズの醍醐味なのだ・・・” |
であり、『武鑑』と(4)にひっかけては、“鴎外の血脈を受け継いでいる” |
と断言している。それも、鴎外には欠けていた読者のためのサービス精神、エ |
ンターテインメントとしての面白さを加味しているんだって。 |
|
まあそんなことはどうでもいいのですけどね。 |
楽しみました。 |