休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ロバート・カーソン/「シャドウ・ダイバー」

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20150525(了)
ロバート・カーソン/「シャドウ・ダイバー」 上・下
Robert Curson/Shadow Divers:
 The True Adventure of Two Americans Who Risked Everything
 to Solve One of the Last Mysteries of World War Ⅱ
(上巻)
 はしがき
 第1章 秘密の数字
 第2章 視界ゼロ
 第3章 威力を秘めたかたち
 第4章 ジョン・チャタトン
 第5章 常識外れの深さ
 第6章 リッチー・コーラー
 第7章 ホレンブルクのナイフ
(下巻)
 第8章 該当する潜水艦なし
 第9章 大きな犠牲
 第10章 ゆがめられた歴史
 第11章 届かなかったシグナル
 第12章 戻らぬ覚悟
 第13章 試練のとき
 第14章 逆戻りする魚雷
 第15章 捨て身の計画
 エピローグ
      出典について
      謝辞
      訳者あとがき
  2008年7月/文庫上下巻/ドキュメンタリー/ハヤカワ文庫/中古
  (©2004、単行本2005年早川書房
  <★★★★>
 
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“深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち”という日本語サブタイト
ル。
2012年7月ごろ朝日新聞で見つけた文庫本の紹介記事。しつこく残し
ていて、これで読む気になって探した。
   ・・・沈没船の捜索ダイバーが、深海のそこに沈んでいるナチス
   潜水艦「Uボート」を発見する。そこから始まる生者と死者の邂逅は、
   長い旅路の果てに、かつての敵と味方の抱擁にたどり着く。
   文句なしに面白い海洋冒険ノンフィクションの金字塔である。
ディープレック・ダイビングというものがどういうものかということ、とりあえ
ず理解。
レジャースポーツとはいっても、米国大西洋岸、ニュージャージー沖の
海。南の暖かい、サンゴ礁に囲まれた浅い海をお散歩するのとはわけ
が違う。窒素酔いの影響だとか、減圧をすっ飛ばすことの怖さとか、そ
もそも暗くて視界が悪いうえに、降り積もっているものですぐ濁ってまる
で見えない、とか・・・ 深海ったってたかだか70メートルぐらいなんだ
けどね。それが生身の人間にとっていかに危険で過酷な世界なのか、
初めて知ったような具合で、そのことに最初ドーンと脅かされる。
機材は日進月歩で、どんどん良くなっているそうではあるけどね。
グラン・ブルー」なんて妙な映画で、素潜りの深さを競うのを見たが、
ありゃあ100m以上行っていたっけ。あれは深さはすごいが、短時間
だから、減圧の時間も少なくて済むのか? 減圧の時間を取ってたとし
たら映していないだけだったか。・・・ でも、素潜りなんだから息が
続かない。途中でスタッフがボンベを用意してたんだっけ。とまあ、ワ
タシャなんにも知らないし、映画だってあらかた忘れてしまっている。
ダイバーを案内する仕事の中で偶然、あるはずのないところで見つかっ
た(1991年)潜水艦。そのミステリーが、主役のダイバー個々の事情や
目標、悲劇や喜びを超えて、歴史を紐解く大きな話へと発展してゆく。
多くの遺骨や歴史への関与などにオーバーなほどにこだわりがある表
現が随所にあって、それがモーチベーションでもあるのだが、これにつ
いては始め、若干後付的な印象も持った。
もっとも、どんどん責任が意識されるように変わっていったようではあっ
て、何度もドイツへ行くことなど、不自然さはなし。乗組員の家族などへ
の取材や報告、生まれる交流は、あっさりとはしていても、余韻は濃い。
結果的にそれこそがこの読み物の読後の印象を引き上げている。
構成に相当苦労したんじゃないか。
もっとも、完全にのめり込んでオタク状態の二人のダイバーの不屈はす
ごいとしか言いようがないものの、だからこそ、二人とも当初の家庭は
崩壊させてしまった。これ、納得。 そして、時間はかかるが、共に新
しい(理解のある)パートナーを見つけているところなんざ、まことに慶
賀。まさに“蓼食う虫の宝庫”としてのアメリカ。
娘と違い‘潜り’が好きじゃないワタクシメは、ノンフィクションが持つド
迫力のリアリズムを書物で満喫。いやーこれで十分ヨ。
潜るのはごめん。
 
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