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“深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち”という日本語サブタイト |
ル。 |
2012年7月ごろ朝日新聞で見つけた文庫本の紹介記事。しつこく残し |
ていて、これで読む気になって探した。 |
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・・・沈没船の捜索ダイバーが、深海のそこに沈んでいるナチスの |
潜水艦「Uボート」を発見する。そこから始まる生者と死者の邂逅は、 |
長い旅路の果てに、かつての敵と味方の抱擁にたどり着く。 |
文句なしに面白い海洋冒険ノンフィクションの金字塔である。 |
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ディープレック・ダイビングというものがどういうものかということ、とりあえ |
ず理解。 |
レジャースポーツとはいっても、米国大西洋岸、ニュージャージー沖の |
海。南の暖かい、サンゴ礁に囲まれた浅い海をお散歩するのとはわけ |
が違う。窒素酔いの影響だとか、減圧をすっ飛ばすことの怖さとか、そ |
もそも暗くて視界が悪いうえに、降り積もっているものですぐ濁ってまる |
で見えない、とか・・・ 深海ったってたかだか70メートルぐらいなんだ |
けどね。それが生身の人間にとっていかに危険で過酷な世界なのか、 |
初めて知ったような具合で、そのことに最初ドーンと脅かされる。 |
機材は日進月歩で、どんどん良くなっているそうではあるけどね。 |
「グラン・ブルー」なんて妙な映画で、素潜りの深さを競うのを見たが、 |
ありゃあ100m以上行っていたっけ。あれは深さはすごいが、短時間 |
だから、減圧の時間も少なくて済むのか? 減圧の時間を取ってたとし |
たら映していないだけだったか。・・・ でも、素潜りなんだから息が |
続かない。途中でスタッフがボンベを用意してたんだっけ。とまあ、ワ |
タシャなんにも知らないし、映画だってあらかた忘れてしまっている。 |
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ダイバーを案内する仕事の中で偶然、あるはずのないところで見つかっ |
た(1991年)潜水艦。そのミステリーが、主役のダイバー個々の事情や |
目標、悲劇や喜びを超えて、歴史を紐解く大きな話へと発展してゆく。 |
多くの遺骨や歴史への関与などにオーバーなほどにこだわりがある表 |
現が随所にあって、それがモーチベーションでもあるのだが、これにつ |
いては始め、若干後付的な印象も持った。 |
もっとも、どんどん責任が意識されるように変わっていったようではあっ |
て、何度もドイツへ行くことなど、不自然さはなし。乗組員の家族などへ |
の取材や報告、生まれる交流は、あっさりとはしていても、余韻は濃い。 |
結果的にそれこそがこの読み物の読後の印象を引き上げている。 |
構成に相当苦労したんじゃないか。 |
もっとも、完全にのめり込んでオタク状態の二人のダイバーの不屈はす |
ごいとしか言いようがないものの、だからこそ、二人とも当初の家庭は |
崩壊させてしまった。これ、納得。 そして、時間はかかるが、共に新 |
しい(理解のある)パートナーを見つけているところなんざ、まことに慶 |
賀。まさに“蓼食う虫の宝庫”としてのアメリカ。 |
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娘と違い‘潜り’が好きじゃないワタクシメは、ノンフィクションが持つド |
迫力のリアリズムを書物で満喫。いやーこれで十分ヨ。 |
潜るのはごめん。
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