(帯紹介文) アーネスト・ジョン・モーラン(1894-1950)はイギリスの作曲家です。ア |
イルランド家系の聖職者の息子として生まれ、幼い頃よりヴァイオリンとピアノを学 |
び、1913年に英国王立音楽大学に入学、ここではスタンフォードに作曲を学んでい |
ます。その後第1次世界大戦に従軍しますが、ここで頭部を負傷。これが彼の生 |
涯に暗い影を落としたと言われています。室内楽や歌曲の分野に多くの作品を残 |
しましたが、1945年にチェリストのピアーズ・コートモアと結婚。このアルバムの「チ |
ェロ協奏曲」やチェロソナタなどの傑作が生まれました。セレナードは1948年に書 |
かれた大規模な管弦楽曲ですが、初演時に「長すぎる」とされ「インテルメッツォ」 |
と「フォルラーナ」を削除、以来6楽章で演奏されてきましたが、1996年に8楽章の |
原典版は出版されてからは、この当初の意向による形で演奏されるようになって |
います。同時期のイギリスの作曲家たちと同じく、母国の民謡に大きな影響を受 |
けたモーランらしく、素朴で印象的なメロディが次から次へと溢れ出してくる美しい |
音楽です。刺激的な「さびしい水」、ホワイソーンのマドリガルに基く「ホワイソーン |
の影」は初期の作品であり、複雑な音楽言語を用いつつも、耳に優しい音楽と言え |
そうです。 |
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はじめっから説き起こした長い紹介文。 |
こっちは、先の2枚のアルバムのようには、すんなりとはメモれなかった。 |
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(1)チェロ協奏曲; |
第一楽章はなんとなく進んでしまうんだが、②のアダージョがこの作曲家としては |
めずらしく少し翳りのある音楽で、かつ美しい。そして華やかな調子の第三楽章 |
③に見事につながっていく。 |
③のメロディに中には、何かでよく似たものを聴いたことがある気がするが、思い |
出さない。(気になる。デイヴ・グルーシンの映画音楽ではなかったか・・・、昔から |
有名なメロディかもしれない。) |
民謡的な調子が支配的で、これは次の曲も同じ。結局のところ‘翳り’どまりで、 |
暗さや悩みなどとは縁がない。明るく、ロマンチック。こりゃあチェリストだった奥さ |
んとのアツアツの時代の産物だったこともあるからかもね。 |
そうそう、フィンジのチェロ協奏曲など、楚々としたイメージだったが、聴いてみれ |
ば、長大で、モーランのものより糖分は低く、よほど分厚くうねり、堂々としていた。 |
記憶なんてこんなもんなんだ。(でもフィンジの曲もよかった!) |
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(2)セレナード; |
ルネサンスあたりの音楽の英国風なムード音楽化みたいな感じ。ネタはやはり民 |
謡。 |
前と後ろはファンファーレのようなものを配し、中は歌謡調のものと踊りふうなも |
のが中心。実に優しさに満ちた音楽。いつまでも聴き続けられればいいがなあ。 |
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聖職者の家に生まれた影響が、こんなに良い(≒楽天的)ケースもあるんでっせ |
というようなことを、つい考えてしまった。まあ通常はねえ、親が聖職者なんてねぇ、 |
反面教師として作用しそうな気がするもんだから、この作曲家の場合は比率的に |
は低いケースではないかと意地悪に邪推。 |
幸せな音楽にケチをつけてはいけませんな。自戒。 |
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(3)寂しい水 Lonely Waters; |
これもたいそう優しい雰囲気の音楽。 |
残り2分というところでソプラノが歌い始める。 |
このタイトルで別途「歌曲」もある。だいたい、この作曲家の主戦場は「歌曲」「合 |
唱」だったみたい。 |
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(4)ホヮイソーンの影 Whythorn's Shadow; |
優しい3拍子の踊り。 |
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やっぱりオケの手綱は幾分ゆるい気もしますが、それも案外魅力なんだよ。 |
まあ、なんです、ベートーヴェンに代表されるような、ドイツ系の、トンカチドンドン |
とぶっ叩かれてできた音楽も、決して嫌いというわけではないんだが、そうでな |
いように思えるものも好きになってみると、とてもそういう叩かれた音楽ばかり聴 |
き続ける気にはならなくなってしまい、もうもとへはなかなか戻れないのですな。 |
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さて、しつこくもう一枚だけモーランを手に入れてみようと思ってます。 |