休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

三代目 三遊亭金馬ベスト

~20250725(メモ了)

コロムビア創立100周年記念/落語決定盤

三代目 三遊亭金馬ベスト

Disc1
(1)居酒屋 昭和33年(1958)11月2日 NHK 12:30
(2)たがや 昭和31年(1956)4月21日 NHK 18:22
(3)花見の仇討 昭和34年(1959)4月5日 NHK 23:18
  <★★★☆>
Disc2
(4)茶の湯 昭和31年(1956)5月 NHK 25:15
(5)小言念仏 昭和34年(1959)5月21日 NHK 14:20
(6)藪入り 昭和30年(1955)3月4日 NHK 28:26
  (4)<★★★★>、(5)(6)<★★★>
 
  三代目 三遊亭金馬(1894-1964)
  2011年/CD2枚組/落語/日本コロムビア/中古(レンタル落ち)

はっきり言って、音が古い!しかもこっちの知識も足りないからだが、早口の
東京弁(江戸言葉?)がなにかとわからない。聞き取れないというんじゃ、本
来なら致命的なんやろうなぁ。関西弁やったらもうちょっとはマシやろうに。
 
(1)居酒屋 初めての居酒屋に入ったオッサンと、店の若い注文聞き(小僧)
の会話だけのような、短い噺。小僧にとっちゃあ当たり前のことが、この客に
は通じず、この客は酔いが進むにつれて、小僧の言葉尻を捕まえては無理難題
を押し付けるが、小僧は小僧で対抗してくる。急激に酔いがまわる感じやふた
りの声の使い分けが、なかなかどうして面白い。短い一篇。
 
(2)たがや 江戸の名物を色々並べてまくらにしたあと、話を花火に収斂さ
せる。タマヤは早々に廃業したのに、カギヤー!じゃなくタマヤー!なのね。
戻って、見物人でごった返す隅田川の橋の上。あまりの混雑でたがやの桶職人
がにっちもさっちもゆかず、つい、荷の竹筒を落っことしたら爆発し、それが
おりしも通りかかったお武家のご一行のうち、馬上のさるお殿様のかぶり物を
ぶっ飛ばしてしまう。それを見とがめた重臣が、土下座して何度も深く謝るた
がやを許さない。屋敷に来いという。この先は打ち首だね。これを見とがめた
「江戸っ子でぇ」の見物の何人かが挑発。すると尻を叩かれた形で職人が一転
ケツをまくってお武家と渡り合い、丁々発止のけんかに発展してしまう。ここ
からは実はびっくり仰天のスプラッターものなのに、それをスラプスティック
にしちゃった。落語ならでは。講談ならかなり凄惨になるだろうな。知られた
出し物らしい。早口な言葉がいくつもとれなくて弱った。何度も聴いちゃいま
した。面白いんだが、全部わかったらきっともっと面白いはず。
 
ところで江戸の名物を並べ立てるまくらにあたるところが面白く、たくさん勉
強になっちゃった。染物の「紫」、「犬のくそ」などなど・・・
それから、そのついでにでてきた「ってやんでぇ、べらぼうめぇ」の「べらぼ
う」。毎週何かのタイミングで観ている蔦重のあれ、『べらぼう』と同じなんだ
ろうが、全然知らなかったその意味や語源もおおよそわかっちゃった。
穀類(米?)をつぶす「へら」的な用い方の棒切れのことを「ヘラボウ」とい
ったが、他に使い途もない、つまり(他に)役に立たない棒ということで、「ご
くつぶし」の意味になった。ところが、ヘラボウじゃふにゃふにゃして語感が
弱いんで、濁らせて「ベラボウ」にしたなんてことらしい。「ってやんでぇ、べ
らぼうめぇ」というと、基本、「何を言ってやがる、この役立たずが!」
このお話の中の江戸名物としては「武士(が威張ってること)」「花火」「喧嘩」
あたりか。
あれあれ、長くなっちゃいました・・・
 
(3)花見の仇討 知らない言葉は依然あるけれど、発音ないし録音としては、
前の二作よりはわかりよかったかも。
さて、町人であるオッサンたち仲間で、花見客でごった返す真っただ中で、客
たちを楽しませる(≒びっくりさせる)趣向をやろうじゃねぇかと話はまとま
る。こいつら、花見自体にはとんと興味がないみたい。とはいえ彼らは、毎年
そういう怪しい人騒がせなことをやらかすのは好きなくせに、たいていうまく
いかないみたいなのね。なのに懲りない。今回の企画は仇討のドラマ化。即席
とはいえ一応準備はやる。その準備段階もおかしいが、実際に始まってみると、
予想しなかった事態が出来して、大いにもたついちゃう。これがツボ。何人分
も一人で高速で喋るんで、めちゃくちゃ大変そう。ギャグも機関銃のごとくで、
全部わかっているわけじゃないのに、つい笑っちゃう。
 
(4)茶の湯
成功した蔵前の商家のボスだったオッサンさんが、早々に隠居するにあたって、
閑静な住まいを見つけてもらい、お気に入りの小者と二人住まいを始めるのね。
社会と隔絶しているわけじゃない、小さい長屋の大家なんていう役目も一応あ
る。
さあこれから何をやろうと思っても、なんたって金儲けしかしてこなかったも
んだから、風流人どころか俗人そのもの。剽軽な小者にせっつかれるように思
いついた、やってみたいことが「お茶」。小者ともども分からないまま準備し、
自分たちだけでやってみる。お茶そのものがまるで出鱈目だし、道具はあって
も作法も無茶苦茶。2人してやってみて腹まで壊すのに、今度は誰か呼んでみ
ようじゃないか、そうだ長屋の三人がいいんじゃないか・・・  (嘘ォ!)
てんで、今度は、更に風流なんぞに縁のない三人は降りかかった火の粉に大わ
らわ。三人がそれぞれに引っ越しまで考えるが、三人一緒なら何とかなるかも
とかしこまってご隠居宅に行く。そこで巻き起こる俗人たちのとんちんかんな
ドタバタ・・・  意外に凝った話で、ワタシはとても面白かった。
 
(5)小言念仏
まくらなのか本編なのかよくわからないうちに終わってしまった。
始めの方では、幽霊のありようの色々を面白おかしく語って笑いを取る。まく
らだよなぁと思っていると、いつの間にかお経や念仏の話になっていて、その
ありようの色々で笑いを取る。それが念仏中心にシフトし、それを唱えながら、
その最中の間に、関係ないカミさんの言動などにいちいち反応して、実にいろ
んな喋り、ちゃちゃを挟み込みながら、基本は念仏であって、脱線してもすぐ
に念仏に戻る、というのを延々繰り返す。むずかしいネタに違いなく、おかし
みはわかる。でもね、ついにストーリー性はセロ。おかしな動作や変顔などが
会場では受けているようでしたが、ウーン、これはワタシ面白くなかった。口
調がいよいよ速くて、わけのわからない所が少なくなかったし・・・ どこか
ね、タレントの一発芸みたい。金馬さんの十八番だそうな。フーン・・・
 
(6)藪入り
年季奉公のシステムも、年に二度の藪入りの意味も、鼠の懸賞ができた理由
も、平成の世に生きる我々にはどれ一つ、ピンとくるものがない・・・」と、
解説の頭にある通り。わかる気もするが、類推するしかない。
年季奉公に出した息子がニ三年たって藪入りでやっと実家にやってくる。二親
のソワソワは大変なもの。特に男親は猛烈なハイテンション。前の晩から眠れ
ない。少しは冷静なカミさんとのやり取りや、息子がとうとう戻ってきたとき
のやり取りが、男親の喋りや様子を中心に、涙を誘う噺になっている。という
か、男親が涙を止められないままひたすら喋りまくる噺になっている、といっ
た方がいいかな。
(5)と少し似て、(5)ほどではないが、ワン・シチュエーションの感じ。とも
に金馬さんの自家薬籠中のものらしい。でもワタシにはいまいち合いませんで
した。よーく考えてみると、男親の喋りや感じが、どうも合っていない感じな
のが、最終的に引っかかったみたい。息子の声も娘っぽかったし。
 
江戸落語であることも、三代目金馬さんであることも関係があるのでしょう。
言葉のわからないところがいろいろあって残念でした。それでも、おかしみは
味わえたから、まあ良しとしましょう。
(4)が一番面白く、その次は(1)(2)(3)の3つ。
かなり時代を感じさせられたと言わざるを得ないものの、(1)~(4)は十分
に楽しめたと思います。
金馬さんというと、ワタシなんぞ知っているのは「4代目」ですね。 「お笑い
三人組」なんて子供のころですが、何度も観ていたはずです。ドラ声のかた。

 

 昨日の夕刊だったか、談春さんの「芝浜」の公演広告が載っていました。

 なにも恥ずかしいとは思いませんが、ワタシは寄席で落語を見聞きした

 ことは一度もありません。

 売れっ子の噺家のものは高いですねぇ。でも、一回だけでいいから、ラ

 イヴの体験をしてみたいとは思っています。