休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『メアリーの総て』

たまたま画家フュースリとつながりました

20240413(了)

映画『メアリーの総て』

 監督;ハイファ・アル=マンスールエル・ファニング/ダグラス・ブース/
                スティーヴン・ディレイン/ベル・パウリー
 2017年製作/121分/ルクセンブルク・英・米合作/原題:Mary Shelley
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 <★★★△>

中野京子さんの『怖い絵3』の最後の絵、フュースリの「夢魔」のところで、フ
ュースリゆかりの人ということで、メアリー・シェリーが紹介されている。そこ
に書いた自分の感想文から少し復習すると・・・スイス人画家フュースリという
画家は、、、
 フェミニズムの先駆者メアリー・ウルストンクラフトに恋される。メアリーに
 フランス革命視察に誘われるが断る。ここからは恋多きメアリの話で、パリで
 革命の擁護論文を書き、恋をして子供を作ったあと英国に帰り自殺未遂、アナ
 ーキストのゴドウィンと結婚、また出産して、今度はほんとうに落命。娘の名
 は同じメアリー。このメアリー、母を殺したのは自分だというトラウマに苦し
 んだり、母同様恋の遍歴を経、妻ある男に夢中になるが、この相手が誰あろう
 詩人シェリー。すったもんだの末、シェリーの妻に収まる。詩人シェリーのこ
 とはさておいて、つまり彼女こそは『フランケンシュタイン』の生みの親「メ
 アリー・シェリー」・・・
とまあそんなふうなことで、大まかには上記のストーリーを追いかけたような映
画になっていました。メアリーははじめは16才で、18才台ぐらいまで(その
若さがスゴイ)が描かれる。詩人パーシー・シェリーは、まぁボンボンで、ここ
への登場時は21才。

彼女の正しい名前は、メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリ

(1797-1851)!

通奏低音的なものがあって、彼女の「不可解な衝動」と、もう一つは彼女のお母
さんも突き動かされた「フェミニズム」ということになるでしょうか。
短い期間のこととはいえ、じっくり描かれるのは、男が絡んだ実にドロドロの失
敗・失意・落胆など(子供の死もある)からの克服や成長譚。当然彼女の周りの
人びともしっかり描かれる。はじめは父親で、アナーキストの面は見えなかった
が、かなり教養のある本屋のオヤジ。極端に狭量な継母。メアリーの恋の逃避行
にも付き合ってしまう妹。メアリーがのぼせ上がる自由人詩人シェリー。姉妹や
シェリーを一時的に受け入れる裕福な詩人ロード・バイロンバイロンの友人で
ある医者(≒科学者)、彼は「ヴァンパイア」を書いて出版しようとするのだが、
ついに著者名を載せてもらえなかった。

           (バイロン邸滞在のおしまいごろ)

恋愛が色褪せた後のドロドロのなかで、たまたまバイロンが怪談ものを書く提案
をしたことが、メアリーの超有名なゴシックロマンを書くことにつながる。(そ
のあたりのシーンが上掲写真だったと思います)
彼女の見る夢や湧き上がってくる話の構想なども絡めて、その経過の描かれ方が
この映画の見どころだなんでしょう。
フランケンシュタイン」自体の誕生の経過は、わからぬではないものの、ピン

ときませんでした。まあ、当たり前とはいえ古色蒼然だったので。もっとも、後

の世がアレンジしすぎてしまったのかも。

著者名に関する悶着がおしまいにさらっと扱われます。
それから有名詩人シェリーはかなりカッコ悪く描かれるものの、最後にはなんと
なく失地回復が図られている風でした。
 
音楽は突っ込みのない、ムード音楽でした。監督や製作者の意向なんでしょう。
そうそう、フュースリの絵「夢魔」(1781)が、バイロンの屋敷に飾られている
のに気づきました。