休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

「物書同心居眠り紋蔵」第15巻(最終巻)

20240219(了)

敵討ちか主殺しか/物書同心居眠り紋蔵

佐藤雅美(1941/1~2019/7)

1. 目隠し板貼り付け要求裏の絡繰
2. 敵討ちか主殺しか
3. 火盗改 死罪伺いの顚末
4. 底抜けの出来損ない
5. 品川・骨董屋の正体と枝珊瑚
6. 殺人鬼の復讐
7. 鳶に油揚げ
8 ちかの思いとそでの余所行き
 
  2021年4月/時代小説/講談社文庫/(単行本 2017年6月)/中古
  <★★★△>

シリーズ第15巻。これでこのシリーズもおしまい。
随分長いことかけて、こっちも付き合いました。
 
(裏表紙解説)
江戸市中あちこちで起きる厄介事は、なぜかこの男の許に持ち込まれる。
南町奉行所の窓ぎわ同心の藤木紋蔵。今日もまた難事件に奔走する。
紋蔵の養子の文吉は、御家人になり、ある縁から大名家に日参、そこで六百
五十石取りの娘に見初められる。しかし婿入り前に、京都で修行しているは
ずの文吉に江戸で出会した紋蔵は、大名家への対応に頭を悩ます。
一方、紋蔵に邪魔されたと逆恨みする火盗改役が、紋蔵の鼻を明かそうと思
案に暮れていた。
 
(他の意見)
a)他には「小説現代2017年4月号」に掲載された1編を残すのみ。本シリー
ズは江戸で起きる世間のゴタゴタと解決を、ユーモアと人情と救いのあるフ
ァンタジー的な内容で描いた傑作
b)江戸時代の法律と判例を、この作家ほど徹底的に研究して捕物帳を書く人
はもう現れないかも
 
なるほどね。
ワタシは今回の最終作は、連作としての繋がり具合はやや弱い感じで、一篇
一篇に違った魅力があるように思います。これで終わるおつもりはなかった
んでしょうね。新しい魅力のあるキャラクターが何人か出てきたりしますし。
 
(4)「底抜けの出来損ない」を少し詳しく紹介します。
 
ちょうど真ん中頃に置いてある一遍。
人畜無害で身持ちの悪そうなやさ男清次郎に、つい体を許してしまった働き
者の「なか」。こうなった以上夫婦になるしかなかろうということになる。
しかし、この清次郎という男、なんにもできないやくざ者で頭はいいし人も
悪くないのだが、人別がない。これは大問題。当然秘密めいたやつで、どう

やらわけあって「正式に」勘当されているらしい。才はあり自堕落に遊び回

れているも、住む家もない。

清次郎はなかの住まいに転がり込むと、そこは母子家庭。奇妙な3人の生活
が始まる。子どもは10歳の正太というが、これがなかなかの「利かん気」で、
清次郎のことが気に入らず、二人は狭い住まいのこととて、ひたすらぶつか
り合う。このやり取りがいちいち長く、当シリーズではめずらしいほどムー
ドやテンポがよくて、この作者にしてはめずらしいほどに楽しい。ま、清次

郎の受け流し方が上手いとも言えるんだが、徐々に正太もこのやり取りを嫌

がっているばかりではない感じも出てくる。

最終的には清次郎の正体や勘当の理由などがわかる。そしてこのユニットの
行く先には一転かなり明るいものが待っているのだが、実は清次郎の出自で
ある「家」が、この作品全体の流れになんとなく絡んでいるという感じ。
この一篇では紋蔵はこのユニットのために知恵は出しますが、目立った働き
はしません。
 
(6)も面白かったですね。誰が殺人鬼なのか、なぜそんな大勢の殺戮がな
されたのかは、読んでいる人はみなわかっているのだけれど、紋蔵たちには
あまりわかっていない、といった終わり方。このシリーズでもままあったエ
ンディング。こっちにはまったく不満はない。
 
(8)はややこしいが人情もの。元夫婦が奇妙ないきさつからよりを戻す。
ちょっと想像のつかなかった(ほんとうです!)さりげないエンディングに
ほっこり。
 
連作という感じじゃありませんでしたね。

紋蔵の出番も少な目だったし、今さらかもしれないけれど、持病のナルコレ

プシーなど全く出なかったし。

次があるべきなんだけど・・・ 

これでおしまい。