休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『交通誘導員 ヨレヨレ漫画日記』

20230422(了)

交通誘導員 ヨレヨレ漫画日記』

    原作;柏耕一/漫画;植本勇/脚本;堀田孝之

まえがき
某月某日 トイレ掃除
某月某日 わからず屋
某月某日 当事者になった日
某月某日 お金の話
某月某日 夜勤明けの出来事
某月某日 通行止
某月某日 猛女
某月某日 油断大敵
某月某日 人は噓をつく
某月某日 黄金の人
某月某日 職場放棄
某月某日 パチンコ屋警備
某月某日 首振り人形
某月某日 承認欲求
某月某日 通報される警備員
某月某日 誘導ミス
某月某日 警備員は歯が悪い?
某月某日 たかが挨拶
某月某日 警備員クイズ!
某月某日 陽気な異邦人
某月某日 花火大会
2020年11月 本書を刊行して、その後・・・(エピローグ)
 
 2020年12月/漫画/㈱三五館シンシャ/中古
 <★★★★>

この作者の方は、少し変わった事情(借金だから別に変わっちゃいないか)
で、交通誘導員になる。まあ事情を言い出したら、際限ないとは思うけど
ね。たまたま出版の業界と結びつきがあったのは、もとの本の出版も漫画
版にしても、大きかったろう。
この原作者は元々はそれなりの文化人、教養人だったみたいだけれど、普
通、この仕事をわざわざ目指す人はいない。いろんな意味の「食い詰め」
以外には逃げ込んできたり隠れたりするヒトぐらいでしょう。
逃げ込みや食い詰めの理由は千差万別なので、視点、感じ方、考え方も同
様。
たったこれだけの本に全てが詰まっているはずもないが、どの逸話も、ど
こか共通項で括れそう(人間性という言葉よりは少し前段階のネ)という
か、いかにもありそうで、わかりやすいものばかりでした。
 
土壇場に追い詰められてはいるんだが、最低限日当9000円はある、と
いうことで仕事や雇い主と繋がった、ほぼほぼ最底辺の職場。社会とつな
がる最後の「クモの糸」というような表現がされている。
それでも接点を持たざるを得なかったさまざまな周りの人たちのこと、そ
の事情やぶつかり合いなどが(ぐっと抑制的表現が多いんだけれど、それ

でも)生々しく描かれる。勿論というべきか、想像の域を出るような内容

は一切ありません。

この仕事を、バカにしている面がワタシの中にないかというと、それは嘘
になるでしょうね。それに全くのゼロ経験でもない。でもここで書かれて

いることは、多分自分とは「状況」が違うから、納得できている? ウーン、

どうだろう。

だったらなんでこんなもの読むんだ?といわれると、案外答えに窮します。
この先、やることもあり得ないことではない、というような予測に近いも
のでしょうか。いやいや、やっぱり「興味本位」なのかな。

 

漫画でなく文章版ならさらにいろいろ細かい描写があったでしょう。
ただ、もうこの時の原作者よりも年齢が行ってしまって、ワタシには体力
的にきっとむずかしいという現実に思い当たる。
バレちゃいますが、原作者はほとんど同じ世代です。
 
どうなんだろう・・・ワタシャはどんなジジイやってんのかな、、、
カミサンや子どもたちから、今の自分がどう見えているのか、訊いてみた
ことがない。なにか言われたこともない。

   やりがいや面白さという点では、なかなかむずかしいものの、見えて
   くるものは、卑近さゆえにというしかない興味深さ。この世界を知っ
   てか知らずか、あちこちでの奥さんの反応がたいてい白々しいのが、

   案外面白いです(って、書きにくいよ、ここんところは)。

   このシーンなんかはまだ生易しい。

 

・・・そうした思いに誘われてしまいました。
(姿勢が悪くなったよ、背が丸いよ、顎出てるよ、なんて言われて、憮然あ
るいはドギマギするんかねぇ)

 

脱線としては・・・
自分も含め、近所で見かけるジジイ、ジイサン、てのは概して仏頂面、不機
嫌面をしていることが多い。経験則じゃあ、この不機嫌面が決して不機嫌と

いうわけでもない、時にふっと柔らかい表情に変わりやすいみたいなのに対

し、、、

バアサンの唇の端っこには、笑み(のようなもの)をこびりつかせていて変
わらないヒトが多くて、かえって機嫌が感じられにくい、なんてことを、思
い浮かべちゃいました。(これ、セクハラ?・・・)
ジジイとの、長ーい間の、人生観や生き方、近くのものごとへの注意・関心
の向け方、神経の張り巡らし方の違い、、、なんてものを、つい考えてしま
う。ジジイになってからの性向の一つです。
 
単行本に限らず漫画も好調なようで慶賀。この若い出版社、よく新聞にも広
告が載っていましたっけ。みんな「ヨレヨレ」が切り口なんで、他にも読ん
でみたいジャンルがあります、、、出来が良ければ、(出てればだけど)漫
画版でいいんだけどな。
こんなん、読まんでもわかるやろ! 
まあそうかもしらんが、意外にわかってないかもよ。
こんなことやるわけがないと思っているあなた、好奇心、湧きません?

         (これが単行本の表紙)