休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

リヒャルト・ワーグナー;序曲集/クナッパーツブッシュ指揮

20240212(了)

RICHARD WAGNER ; OVERTURES

 CD1

(1)歌劇『リエンツィ』序曲 13:27

(2)楽劇『さまよえるオランダ人』序曲 12:14

(3)ジークフリート牧歌 18:58

(4)歌劇『リーエングリン』

     第1幕への前奏曲 7:18 

                           以上<★★★☆>

 CD2

(5)楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー

     第1幕への前奏曲 10:44

(6)歌劇『タンホイザー』序曲 15:59

(7)楽劇『トリスタンとイゾルデ

     第1幕への前奏曲と<愛の死> 15:24

(8)舞台神聖祝典劇『パルジファル

     第1幕への前奏曲 11:42 

                         以上<★★★★>

    ハンス・クナッパーツブッシュ指揮

    ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団

    録音:1962年11月、バイエルン・スタジオ
    CD/2枚組/管弦楽曲/Ⓟ&Ⓒ MCA Records/中古

古いが「大物」です。
 
中古屋で偶然見つけた代物。Westminsterレーベルの、昔っから

名盤の誉れ高い2枚のアルバムで、1枚づつ出たり2枚組になったりしてい

ました。

日本では、ワタシの記憶では、始めは日本コロンビアで、次がキングレコ
ドだったかな。音はあまり良くはないだろうけれど、偉そうな評論家がほめ
ちぎるものだから、いつかちゃんと聴いてみようと思っていたのですが、色
色好みも変わってきて、放置してきました。
ジジイになってから思い出して、「ほしいものリスト」に入れていましてね、
まあいつかネ、なんて思っていたんです。それがなんと、時間調整のために
入った中古屋で見つけちゃった。アメリカのMCAレーベルなもんだから、は
じめわからなかった。曲名を見ていて同一内容だとわかった。しかもセット
なのにうんと安い!(調べると、現在はドイツグラモフォン/Universal Musicに移っ
ているそうな。) 音質は聴いてみなきゃわからないが、一応ちゃんとデジタ
ルリマスターされているようだから、ひどい失敗さえしてなきゃいいと購入。
ジャケット写真はいささかチープ(じゃない?)。

  (上の写真は、現在の(多分MCA盤より前のもそうだったと思う)の、

    2枚のアルバムの片方。普通にみて、やっぱりこっちのほうがいい感

    じだと思うなぁ)

 

期待は、カール・シューリヒトというヘンな名指揮者と対極なのに、「どっち
もすばらしい!」と感じられること・・・
 
よかったですよ。シューリヒトとの比較なんていう少々バカげたことについて
も、実にくっきりとした面白い違いがありましたしね。
シューリヒトのテンポが速めですっきりしているが、あちこち小粋な絶妙のテ
ンポの動かしなどがあって、それが曲全体を豊かなものに思わせてくれるとい
う感じ。なんでもそうというわけじゃないですけどね。
クナッパーツブッシュは、逆にテンポが遅く、悠揚として迫るところがない。
いやむしろそこまで遅くして大丈夫なのか?と言いたくなる時すらある。テン
ポをちょっと早めたり、表現を繊細に弄ってみたり、なんてことがない。
シューリヒトのワーグナー(序曲集)も「意外に」よかったのですが、このク
ナッパーツブッシュの指揮によるワーグナーは、歴史的ワーグナー演奏という
か、これが直伝のワーグナー演奏なんだというような(実際にはそうじゃない
わけですが)有無を言わさぬ説得力のようなものがみなぎっている気がしまし
た。そして派手さとか外連味なんか、ワタシには全くと言っていいほど感じら
れませんでしたね。昔からの擦り込みかもしれませんけど。
 
ミュンヘン・フィルの演奏水準はとても高かったように思います。
ならばなんでこの点数なのか。何が悪かったのか。
ひとえに録音ですね。
この後、ユニバーサルミュージックに移ってデジタル・リマスターされたでし
ょうが、どれだけ良くなったか疑わしい。つまり・・・ ホールでなくスタジオ
録音で、しかもホールトーンがまったくなく、響きの工夫もしていない。トス
カニーニNBC交響楽団ほどじゃないけれどね。なんで響きのいいホールがた
くさんあるでしょうに、そうしたコンサート会場を使わなかったんだろう。ヘ
ンなの。にもかかわらずこの2枚が名盤扱いなのは、ただただ演奏がいいから
でしょう。ワタシもいい演奏であることは疑わない。ですが、この残響がほと
んどない音には困惑しました。残念この上なし。
 
ワーグナーの名曲がずらりと並んだものですし、演奏のほうは甲乙なくすばら
しいので、曲ごとに書くのはパスします。
小細工することはほとんどなく、ほとんど朴訥といってもいいような音楽の進
めみ方なのですが、それがなんというか、神聖さのようなものと不思議に見事
に結びつく感じ、とでも言えばいいでしょうか。
 
あえて、ワタシの好みの度合いで言うなら、2枚目が粒ぞろいでしょうか。
特に、官能的というのとはちょっと違う感じの「トリスタンとイゾルデ」あた

り。また神聖さというなら勿論「パルジファル」。ドーンと来るのは「マイス

タージンガー」。

それにしても、テンポが遅いというイメージがありますが、言われるほど遅い
ですかねぇ。ブルックナーやウィンナ・ワルツなどのレコードも聴いたことは
あるが、ウィンナものがいささか重かったという記憶以外はほぼ忘れてしまい
ました。いやつまり、今回は聴いているうちに、だんだんそんなに遅いという

わけでもないんじゃないかという感覚になってきたということなんです。ワタ

シ自身の年齢のせいということはあるかもしれません。

 
ま、やっとこの2枚、聴くことができて、やっぱり、よかったというしかない。
積年の懸案をクリヤしたような、ちょっと、ほっとしたみたいな感覚です。
さっぱり系なのに独特の味を作るシューリヒトとは対極のようなアプローチで
あって、しかも共に優れものであると確認できたこともよかった。

  追記;
 ロンドンにウィーン・フィルとの一枚ものの「ワーグナー名演集」というの
 がありましてね、オケの魅力のみならず、フラグスタート、B・ニルソン、G
 ・ロンドンの名唱もちょっとづつ聞けるという名盤。今回、ほんとに久しぶ
 りに引っ張り出して聴いてみました。上掲写真。まさに絶品。録音も50年
 代なのにこっちの方がいい。ウェストミンスター盤、せめてこれぐらいのホ

 ールトーンがあればなぁ・・・とまたもやしつこく、激しく残念がってしま

 いました。

 (4年前に、感想文書いてました)

経済大国ニッポンのその先・・・

日本辺境論 です

好きなライター高野秀行さんの記事。ったって、記者がインタヴューをま

とめたもんだけど、、、

他の二人の意見は、かつての経済大国の金看板をどうするかについていわ
ば常識的な流れでもって十分わかりやすく述べてくださっているのに対し

て、あの高野氏のものが実に微妙。こういうところに載せるのがなるほど

というか斬新と言うか。でもまあ、はじめは意図がいまいちわからなかっ

た。

どうですか?

実際のところ、この文章の調子には違和感があるんですけどね・・・

 

しばらく引っかかっていたところ、一ヵ月後、偶然ちょっとおもしろい小

記事を見つけたのです。

あれ・・・これって繋がるなぁ、ってんでいただき。

 

東京23区より広い奈良県十津川村・・・
人口約3千人・・・
そこに移住して外国人ガイドをやっている女性の話です。
ダジャレみたい、そのままじゃん・・・
 

再び、どうでしょう・・・

いったんファイルしたんですが、どうせなら、と、アップしてみました。

 

 

(散歩中の最近の一枚)

映画『母の聖戦』

メキシコ、そこいらじゅうにある誘拐ビジネス

20240224(了)

映画『母の聖戦』

  テオドラ・アナ・ミハイ監督/アルセリア・ラミレス/アルバロ・ゲレロ
 2021年製作/135分/G/ベルギー・ルーマニア・メキシコ合作
 原題:La Civil/DVDレンタル
 <★★★>

誘拐が当たり前のこと(仕事)になってしまっているメキシコの話。実話をもと
にしているんだそうな。
どんどん状況が変わって行くしんどいストーリーを書いてもしょうがないなあと
思い、概略はネットの紹介文を載せます。
 
 メキシコ北部の町で暮らすシングルマザーのシエロは、10代の娘ラウラを犯罪
 組織に誘拐されてしまう。犯人の要求に従って身代金を支払うも娘は返しても
 らえず、警察にも相手にされない。自らの手で娘を救うべく立ち上がったシエ
 ロは、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結んで調査して
 いく中で、誘拐ビジネスの血生臭い実態を目の当たりにする・・・
 
このとおりですね。
母親シエロの孤軍奮闘、無謀極まりない娘の捜索は、徐々に実を結び、少しずつ
ながら組織(シンジケートという言葉、ワタシは使いにくい)に近づいて行く。
別居中の夫はあまり役には立たないが、娘を思っていることは確かなよう。警察
はまるでダメだったが、たまたま軍と出遭って直談判し、捜索はスピードアップ
する。とはいえ、テキパキというわけに行かない。もどかしい。わかってもわか
っても、その先がある。しかも、悲しいかな、身近な人たちの中に協力者がいた、
なんてことが明るみに出てきたりする。
 
誘拐をビジネスにするような国情がある。警察は全く頼りにならない。
マフィアは大きいんだか小さいんだか、力があるんだかそれほどでもないのだか、
よくわからない。ここでの問題の組織には対立する組織があるなんて話もありま
したが、そうした組織(≒マフィア)いうのが実際にはやたらとあるらしい。対
抗できるのが軍隊だけというのも心細い。突入した軍隊のほうにも死人怪我人は
出ているようでしたが、ともかくこんなふうに軍と一緒に捜査してもらえる人は
は普通はいない(だろう)。泣き寝入りしている人の話がいくつも出てくる。
 
そんなこと言っては失礼だとは思ものの、中南米の多くの国に似たような状況が
あるんじゃなかろうか。幸福度の高いコスタリカなんていうのは例外なのかもし
れないね。あっけらかんとしたビジネスの裏側の闇の深さを、勿論残酷さも、知
らされるばかり。

気軽には観られませんでした。
ただ、エンディングそのものは不可解で・・・ どういう意味かよくわかりませ
んでした。

 

ところで、ただいま現在、米下院ではウクライナの援助予算の成立が止まってし

まっている。共和党は、ウクライナ援助より、メキシコとの国境からの不法移民
の問題のほうが優先だという理由だそうな。
 (アップする今日から見れば、もう、しばらく前の話になりましたけどね。今

  は・・・ 「もしトラ」とか「ほぼとら」とかとか、、、ああもういやな略し

  方、いやな意味)

グラズノフ:「四季」「バレエの情景」

20240209(了)

グラズノフ管弦楽曲全集 第8集

グラズノフ:「四季」「バレエの情景」

 GLAZUNOV(1865-1936)

(1)組曲「バレエの情景」 Op.52
 ①第1曲 前奏曲 3:17
 ②第2曲 マリオネット 2:13
 ③第3曲 マズルカ 4:09
 ④第4曲 スケルツィーノ 1:29
 ⑤第5曲 パ・ダクシオン 5:43
 ⑥第6曲 東洋的舞曲 2:40
 ⑦第7曲 ワルツ 4:26
 ⑧第8曲 ポロネーズ 5:39
(2)組曲「踊りの情景」 Op.81
 ⑨ 9:44
(3)バレエ音楽「四季」 Op.67
 ⑩冬の序奏 2:25
 ⑪第1場 冬 1:41
 ⑫第1ヴァリエーション 「霜」 0:55
 ⑬第2ヴァリエーション 「氷」 1:09
 ⑭第3ヴァリエーション 「雹」 0:57
 ⑮第4ヴァリエーション 「雪」 3:31
 ⑯第2場 春 0:55
 ⑰第3場 冬 2:20
 ⑱矢車菊と・栗のワルツ
 ⑲舟歌 2:59
 ⑳ヴァリエーション 1:15
 ㉑コーダ 3:59
 ㉒第4場 秋 4:32
 ㉓小アダージョ 4:37
 ㉔アレグロ 2:35
 
   アレクサンドル・アニシモフ指揮/モスクワ交響楽団
   録音;1995年8月/ロシア、モスクワ、モスフィルムスタジオ
   Tot. 79:22
   CD/管弦楽曲/Ⓟ&Ⓒ1998 NHN International(Naxos)/輸入/中古
   <★★★☆>

(公式 アルバム紹介)
聴けば心が踊りだす、ロシア・バレエ音楽の精華
親しみ易く奥も深い。グラズノフが心血を注いだバレエ音楽は、ビギナーか
らマニアまでの宝です。最高傑作として名高い「四季」は、擬人化された春
夏秋冬の情景が描かれますが、それに相応しく、色彩的オーケストレーショ
ンと旋律の玉手箱状態になっています。一方「バレエの情景」は特定のイメ
ージを持ちませんが、各曲の性格の書き分けは一層見事です。特に第5曲の
「パ・ダクシオン」は素晴らしく、ハープの分散和音にのって、弦と木管
からみ合いながら盛り上がっていく様には、「名曲の王道ここにあり」とい
った感があります。
 
わかりやすい紹介です。
バレエ音楽です、好きなように振り付けてください、物語性も何か考えてく
だされば、なおよし・・・
(1)(2)(3)ともそんな感じですね。
ロシア風味がそこここで感じられる、これぞクラシックバレーの楽曲だ!
ワタシにとっては素敵な風味なんだけれど、たいていのロシア人にとっては
――たとえプーチンさんにとっても――水や空気みたいに当たり前のもので
あって、特別なものではない・・・のでしょうね。ハイ、戻りまして、、、
そのほかには実のところさほど言うことありません。
 
作品数の多いグラズノフ。一応かしこまった交響曲などのタイプも多いけれ
ど、どんな曲もどこかこのバレエ音楽に繋がっているような、カラフルで概
して明るくロマンティック、そして優しい感じがする。良くも悪くも決して
暗くなったり重くなったりしない。オーケストレーションは、その限りにお
いてだけれど、ものすごく上手いと思います。
かしこまったものも、実際には堅苦しさはなく、マイナーな感情もほとんど
感じられない。当然精神性や深みが乏しい。まあそうは言えるし、ドイツ音
楽好きの日本人評論家のなかには、こういうタイプは少なくとも昔は軽んじ
がちなかたが多かったんじゃないかと思う。今はどうなんだろうなぁ。むし

ろ現在のほうがプログラムにかかる頻度はさらに減ってしまっているんじゃ

ないか。想像です。

 
NAXOSの20枚ほどの管弦楽のシリーズは、かなり聴いてきました。この第
8集は、「四季」なんて有名曲(特に㉒なんか誰でも知っているかも)が入
っているので飛ばしてましたが、グラズノフ自体を長く聴いていないので、
選んでみたわけです。
交響曲の全集は別途スヴェトラーノフのものでも聴きました。録音がわんわ
ん響いてうるさい感じがありましたっけ。
本盤の録音の出来は他と大体同じようなもので、ホールトーンが豊かでない
スタジオのもので、抜けが良くなく、上も下も不満、音色も魅力的とは言い
にくものの、曲がいいものだから、鑑賞には問題ありませんでした。
オケ自体はアラには気付かされても、普通に頑張ってました。
 
これだけ繰り返して聴いていると、ちょっと飽きます。でもまたきっと聴き
たくなるんでしょう、そんな気がします。点数は★四つでもかまわない。

 

 グラズノフの音楽のバレエ音楽への親和性を書いたことから連想・・・
 NHKで最近、ウクライナのバレエ関係者が、日本を縦断、20公演だった
 かをこなすドキュメンタリーをやっていましてね、全部観られたわけじゃ
 ないけれど、思い返してみると、バレエ音楽がしこたまあるロシアの音楽
 を一つも聞かなかった気がする。気がしただけですが・・・20公演です
 よ。果たしてロシアの音楽なしてバレエができるもんだろうか・・・ それ
 とも単純にワタシが聞き逃しただけでしょうか。

「物書同心居眠り紋蔵」第15巻(最終巻)

20240219(了)

敵討ちか主殺しか/物書同心居眠り紋蔵

佐藤雅美(1941/1~2019/7)

1. 目隠し板貼り付け要求裏の絡繰
2. 敵討ちか主殺しか
3. 火盗改 死罪伺いの顚末
4. 底抜けの出来損ない
5. 品川・骨董屋の正体と枝珊瑚
6. 殺人鬼の復讐
7. 鳶に油揚げ
8 ちかの思いとそでの余所行き
 
  2021年4月/時代小説/講談社文庫/(単行本 2017年6月)/中古
  <★★★△>

シリーズ第15巻。これでこのシリーズもおしまい。
随分長いことかけて、こっちも付き合いました。
 
(裏表紙解説)
江戸市中あちこちで起きる厄介事は、なぜかこの男の許に持ち込まれる。
南町奉行所の窓ぎわ同心の藤木紋蔵。今日もまた難事件に奔走する。
紋蔵の養子の文吉は、御家人になり、ある縁から大名家に日参、そこで六百
五十石取りの娘に見初められる。しかし婿入り前に、京都で修行しているは
ずの文吉に江戸で出会した紋蔵は、大名家への対応に頭を悩ます。
一方、紋蔵に邪魔されたと逆恨みする火盗改役が、紋蔵の鼻を明かそうと思
案に暮れていた。
 
(他の意見)
a)他には「小説現代2017年4月号」に掲載された1編を残すのみ。本シリー
ズは江戸で起きる世間のゴタゴタと解決を、ユーモアと人情と救いのあるフ
ァンタジー的な内容で描いた傑作
b)江戸時代の法律と判例を、この作家ほど徹底的に研究して捕物帳を書く人
はもう現れないかも
 
なるほどね。
ワタシは今回の最終作は、連作としての繋がり具合はやや弱い感じで、一篇
一篇に違った魅力があるように思います。これで終わるおつもりはなかった
んでしょうね。新しい魅力のあるキャラクターが何人か出てきたりしますし。
 
(4)「底抜けの出来損ない」を少し詳しく紹介します。
 
ちょうど真ん中頃に置いてある一遍。
人畜無害で身持ちの悪そうなやさ男清次郎に、つい体を許してしまった働き
者の「なか」。こうなった以上夫婦になるしかなかろうということになる。
しかし、この清次郎という男、なんにもできないやくざ者で頭はいいし人も
悪くないのだが、人別がない。これは大問題。当然秘密めいたやつで、どう

やらわけあって「正式に」勘当されているらしい。才はあり自堕落に遊び回

れているも、住む家もない。

清次郎はなかの住まいに転がり込むと、そこは母子家庭。奇妙な3人の生活
が始まる。子どもは10歳の正太というが、これがなかなかの「利かん気」で、
清次郎のことが気に入らず、二人は狭い住まいのこととて、ひたすらぶつか
り合う。このやり取りがいちいち長く、当シリーズではめずらしいほどムー
ドやテンポがよくて、この作者にしてはめずらしいほどに楽しい。ま、清次

郎の受け流し方が上手いとも言えるんだが、徐々に正太もこのやり取りを嫌

がっているばかりではない感じも出てくる。

最終的には清次郎の正体や勘当の理由などがわかる。そしてこのユニットの
行く先には一転かなり明るいものが待っているのだが、実は清次郎の出自で
ある「家」が、この作品全体の流れになんとなく絡んでいるという感じ。
この一篇では紋蔵はこのユニットのために知恵は出しますが、目立った働き
はしません。
 
(6)も面白かったですね。誰が殺人鬼なのか、なぜそんな大勢の殺戮がな
されたのかは、読んでいる人はみなわかっているのだけれど、紋蔵たちには
あまりわかっていない、といった終わり方。このシリーズでもままあったエ
ンディング。こっちにはまったく不満はない。
 
(8)はややこしいが人情もの。元夫婦が奇妙ないきさつからよりを戻す。
ちょっと想像のつかなかった(ほんとうです!)さりげないエンディングに
ほっこり。
 
連作という感じじゃありませんでしたね。

紋蔵の出番も少な目だったし、今さらかもしれないけれど、持病のナルコレ

プシーなど全く出なかったし。

次があるべきなんだけど・・・ 

これでおしまい。

Ballads/ 中西俊博

20240131(了)

Ballads

 中西俊博 meets 林正樹

  

  中西 俊博(ヴァイオリン) 林 正樹(ピアノ)

  2005年/CD/ムード音楽/㈱キャスネット/邦盤/中古
  <★★★☆>

これまで聴いたCDとは違うレーベルみたい。
人気が翳って、少々ブランクもあって、あらためて活動を開始したのがこの
レーベルなんじゃないかしらん。想像ですが。
曲名は、ジャケットに任せます。超の付く名曲ぞろい。
実は中に一曲、ワタシがあまり好きでない曲も入っていたのですが、今回は
いけましたね。よかった。
①⑥⑬が古いミュージカルの曲。②③⑤⑦⑧⑩⑫が映画音楽系。④⑨⑪がそ
の他(≒ポップス系)。

編成は基本、ヴァイオリンとピアノのみ。ホントはね、ワタシにとってはこ

の編成こそが問題なんですけどね。

 
録音は当然ながら魅力的なサウンドを得るために工夫しているようです。
もっとも、ヴァイオリンの音像がちょっとでかいかなぁ、という気も。
それから、トラックによって、ひょっとすると、ヴァイオリンの中にマイク
を入れ込んだんじゃないかというぐらいやや臭い音のものもあった。
再生は、あまりリアルに聞こえてしまうものより、ラジカセのようなものの
ほうが聴きやすいかもしれない。あるいは、音をやや小さめにするとか。
演奏としては、とてもやさしいものだったと思います。ただし、ポルタメン
トを多用していまして、人によっては気になるかもしれないなぁ、とも。

               

            ポルタメントの表示)
 
曲ごとの話はパスします。
林正樹というピアニストのことは、中西のアルバムに入っていること以外は
知りませんでしたが、おそらく有名な人のようだし、相当な手練れ。
昨日1/21だったか、始まってすぐの大河ドラマ『光る君』。そのあとの、関
連の歴史解説ふうな番組をぼーっと見ていたら、林の名がテロップに出てい
ました。これだけじゃ別に何かわかるってわけじゃない。品のいいBGMって
だけでしたけど。
ドラマ本編の音楽のほうは、クラシックの素養のみならず他ジャンルの引き
出しもたくさんあると感じさせるもの。冬野ユミさんとおっしゃるかた。序
曲にも様々なタイプの音楽が盛り込まれてました。初めや最後のほうは、も
ろにラフマニノフやアディンセル(このかたはイギリス人だけど)を一緒に
したようなピアノ協奏曲風で、はじめ聞いた時はつい笑ってしまいました。
ワタシのイメージとしては、例えば1930年代から50年代にかけてのアメリ
映画の音楽で、ロシア系とかドイツ系の出身の作曲家によるものと思わせる
フレーズや音色を意図的に参考にされていらっしゃるみたいでした。
序曲のオケはいつも通りN響。指揮は確か広上淳一。ピアノは今や日本で一
番有名なピアニストと言っていいでしょう、反田恭平さんの名が載っていま
した。

 

ヴァイオリンは若々しいものの、写真によれば、18-9年前ながら、だいぶん
オッサン(年配)になられているように見えました。

「~させていただきます」と「~になります」のこと

もう半年以上も前の新聞の編集委員の一人の書くコラム。

「・・・させていただきます」

これ以上ないという究極の丁寧語のイメージなんで、言っときゃ間違いなか
ろう、と安心してどーんどん使っちゃう感じなんだ。 
それも、誰に対してか判然としないことも多いのに(って、丁寧語なんだか

ら、それでいいっちゃいいんだけれど)、そんなことはほとんど意識しない

まんま。

これより少しレベルを戻して使うというのも、難しそう、めんどくさそう、

だし・・・

このコラムじゃあ、その慮り具合を「よしよし、しょうがないわよねぇ」な
んて感じで優しく述べておられるようだが、こりゃ反語的なのかな。
ワタシにゃあもはや、使いすぎどころでない気がする。
これに違和感を覚えなくなったら、オワリ。

つまり、これが「普通」になる。(もう、なってるかぁ)

 「さしてもらう」という関西弁が語源かも?

  ほな、そないさしてもらいまっさ ていうような?

  ウーン、確かにゆうてましたねぇ(って、ここは関西弁のアクセントで

  読んでもらわんと、かんじでえへんよ)。

このコラムはヒリヒリものだったり、結構激烈な場合が多いのに、心情を踏
まえて、珍しく穏やかに書かれ、締められたコラムでした。
 

 

これもなんだけど、ワタシが今もっとも気になっているのが(もう何度か書

いた気がしますが)・・・

「~になります」

「~です」で、どうしてダメなの?

この連発がスゴイ。猛威を振るっている。いやもう今や猛威なんてもんじゃ
ない。このごろじゃあNHKでも連発する方が出てきた。(あれまあ・・・)

丁寧語のつもりなんやろなぁ。

文法上は間違いじゃないんだろうが、気色悪いこと甚だしい。