休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『あの日の声をさがして』

20240201(了)

映画『あの日の声をさがして』

  監督:ミシェル・アザナビシウス /ベレニス・ベジョアネット・ベニング
  原案:フレッド・ジンネマン監督の「山河遥かなり」(1947)
  2014年製作/135分/仏・ジョージア合作/原題:The Search
  <★★★△>

第二次チェチェン紛争の始まり(1999年)からしばらくを、1947年のジンネ
マンの映画を下敷きにして映画化したものらしい。
 
話は二筋。
ひとつは、チェチェン領内に攻め込んできた狂気のロシア人兵たち(といっても
おそらく近隣の小国から招集されたやくざ者の集まりか)に、父と母がいたぶら
れたうえ、無残に殺された9歳の少年ハジの話。
この時、姉も殺されてしまったと思いこんだハジは、赤ん坊の弟を抱いて逃げ出
す。しかし自分では育てられないことはわかって、国境近くのある家に弟をおい
て先へ進みさまよう。そこでEU赤十字のような女性職員キャロルやNGOのよう
な組織(ひょっとして国連?)の職員と接触し、キャロルの思い付きから同居を
を始める。一方ハジの姉は赤ん坊を見つけるとともに、ハジを探し始める。
女性職員の懊悩などもあるけれど、姉弟の再会に収斂するのかどうか。
もうひとつの話は、ロシア国内もしくは近在小国内で、つまらないことで掴まえ
られ、軍隊に放り込まれた19歳の男が、低劣至極ないじめや暴力に耐えるうち、
それに馴染み、ろくでもない兵士に変貌してゆく様を克明に描く。
 
この二筋の話は、直接絡むことはしないまま終わるのだが、このような兵士を多
く含んでいたであろう軍隊がチェチェンに攻め込んだということでは、関係性は
あるという程度。
一番最初のハジの両親の殺戮が、あまりに真に迫っていたので、こりゃあドキュ
メンタリーかと一瞬どぎまぎしたほどだった。そうでないとわかってホッとした
もんね。やがて19歳の男の変貌ぶりとつながったし、現実のロシアによるウク
ライナ侵攻における戦争犯罪をもろに想起することにも繋がってしまった。
原案だというジンネマンの映画はまったく知りません。

まあそんな映画。
時のロシアの大統領はエリツィン、首相がプーチン
足りない気がしたのは、チェチェンの軍隊のこととか、EU内の組織やNGOっぽ
い団体のやっていることが今いち見えにくかったことなどでしょうか。気にはな
りました。観直せばいくらかわかったのかもしれません。
北オセチアなどというめったに聞くことのない国名(国でなく単に自治が認めら
れているだけの一地方なのかもしれない)が出てきましたっけ。景色を見てい
て、去年観た『コーカサスの虜』をちょっと思い出しました。山並みや平原。

     (言葉・民族・宗教がいかに複雑に絡み合っているか)

毎度のことですが、邦題はこんなんでええのって言いたくなる。
音楽は、ギターをポロポロッと流す程度。これでよかったと思います。

「ドイツのためのもう一つの選択肢」

新聞ネタです。
経済低迷なのに株高。海外マネーのせいなんだから・・・
今度のはバブル期の時のものじゃなくて「正しい」株高だという人もいる。
貯め込んで分配を抑えている企業が株主を優先してきたが、ここへきて、給料
上げろのムードに多分しぶしぶ手をあげている・・・

この株高のことは、「関係者」以外はたいてい、「なによそれ!」という感じ

・・・

 
GDPで日本を追い越したドイツの経済のことが、3日間ほど連載されていま
した。
いろいろやっている。「理屈っぽいの、どうのこうの」じゃなく、ズバリ理屈
でしょう。それをやってこなかったのが日本だというのだけはよくわかる。

でも、国内の問題はそれだけじゃないはずなのに、この連載ではあまり深く触
れられていない。エネルギー問題(ガスプロム等)もほとんど出てこなかった。
その中で、あっまた出てる、と思ったのが、AfD「ドイツのためのもう一つ
の選択肢」という名の右翼政党が、世論調査政党支持率で2位になったこと。
移民の問題を始め、揉めそうな課題がわんさかあること。
 
その政党のことを中心に据えるような形で、ドイツに住む小説家多和田葉子
んが、肌感覚的なドイツの状況を「ベルリン通信」に、上記の数日前、書かれ
ていました。なんか、ぞわぞわもので、アップしてみる気になりました。

“・・・この政党が唱える「もう一つの選択肢」というのは、どうやら民主主義
以外の選択肢ということらしい”
ネオナチとは違うの?それとも、重なるの?

 

 

 切り抜きは、よく仕事場に持ち込んで、暇なときに読んだりします。
 新聞の束全体を、ばぁーっと広げるのは、お客さんから見えたりして、具合が
 悪いので、こそこそと。
 読む機会は当然限られるので、溜まります。鞄の中は切り抜きだらけ・・・

マーラー/交響曲第4番&さすらう若人の歌 室内楽版

20240129(了)

マーラー;Sym4&さすらう若人の歌     

     Gustav Mahler〔1860-1911〕

(1)交響曲 第4番(1899-1901) 53:56 by Erwin Stein(1921)
   ①15:02 ②8:40 ③20:34 ④9:38
    ソプラノ、フルート、オーボエクラリネット、ヴァイオリン2、ヴィオラ
    チェロ、コントラバス、ピアノ、ハーモニウム(リードオルガン)、打楽器

2)さすらう若人の歌(1883-85) 16:11  

                       by Arnold Schönberg(1920)

   ⑤3:56 恋人の婚礼の時
   ⑥3:59 朝の野を歩けば
   ⑦3:19 僕の胸の中には燃える剣が
   ⑧4:55 恋人の青い目
     バリトン、フルート、クラリネット、ヴァイオリン2、ヴィオラ
     チェロ、コントラバス、ピアノ、ハーモニウム
    リノス・アンサンブル
    アリソン・ブラウナー(ソプラノ)、オラーフ・ベール(バリトン)
    録音:1999-2000年、ケルン、西ドイツ放送、クラウス・フォン・ビスマルク・ホール
    Tot.70:09
    2001/CD/交響曲・歌曲/ⓒ2001 Capriccio/輸入/中古
    <★★★★△>

編曲・異稿好きの「たまひの蝸牛」さんの記事で、自分も聴けそうだと思った
ので聴いてみることにしました。バッチリ!
 
(1)結構聴き馴染んだ4番ですから、はじめこそフルオケの音を頭の中で補う
という聴き方になりましたが、だんだんこれがオリジナルみたいな感じに変わ
ってきました。
ほかのシンフォニーじゃこうは行かないでしょう(と思います)。 いやほん
とによく合ってました。しかも指揮者なし!
ピアノが良くも悪くもどこにもでしゃばってくるので、その音色に慣れるのが
実は一番時間がかかったかもしれない。時々チラッと聞こえた気のするハーモ
ニウムは微妙だったかなぁ。
全体の演奏はきりっとしていて、歌も含めて、テンポ良し、アンサンブル良し。
ヴァイオリンなんかホントによく歌ってましたしね。録音もよかったと思いま
す。中でも長い緩徐楽章③はこれで完璧でした。
勿論①も②も良かったし、③より完成度が高いと思わせた④は、歌手の出来も
良くて、すばらしかったんだけれど、次の(2)と同様にピアノ伴奏でも聴ける
ようなものなのであって、③の「完璧」は編成上のこと。意味が違う。
 
コンサートなんて今のワタシには贅沢でなかなか行けませんが、年に2度の室
内オーケストラの定期公演にだけは行くようにしています。このブログにも何
度か鑑賞記を載せています。現代もののウエイトが高いのも気に入って続いて
います。芸術監督である西村朗さんが去年急死されたんで、今後がちょっと心
配ですけどね、まぁ大丈夫でしょう。って、なに書いてんだか、、、
つまり、この室内オケでも聴いてみたい気がするということが言いたかった。
なんだか、この小オケでもきっと合うように思うのです。
(次の公演は2月で、もうすぐ。覚えていたら、アンケートに書いてみよう。
 ピアノのあるヴァージョンか、ないヴァージョンかは迷うところですが・・・
 ワタシが迷うことではありません・・・)
 

(2)さすらう若人の歌:

こっちは、予想通り始めっから違和感まったくなし。ピアノ伴奏でなきゃいい

や、ぐらいの感覚でね。こちらもよかった。
⑦の唾がかかりそうな熱い歌唱なんて、青臭い若々しさ、激しさ。有名ベテラ
ン歌手たちのものとは違って、いい感じでした。
 
よくもまあ、こんなに繰り返して聴いたもんです。特に4番。
マーラー交響曲一曲をここまで聴けたのも、ひとえにこの風通しのよい編成
であったからこそ。それも4番だったからこそであって、他の交響曲ではきっ
と難しい。

マンハッタン・トランスファー ファイブ・オリジナル・アルバムズ 2/2

20240127(メモ了)

マンハッタン・トランスファー 

ファイブ・オリジナル・アルバムズ 

3・4・5/5

   THE MANHATTAN TRANSFER

(3)ヴォーカリーズ  
   Ⓟ&Ⓒ 1985 Atlantic  45:36
(4)スウィング  SWING
   Ⓟ&Ⓒ 1997 Atlantic  44:57

(5)スピリット・オブ・セントルイス

               (サッチモに捧ぐ) 

   Ⓟ&Ⓒ 2000 Atlantic  46:23
 
   2010年8月/CD/5枚組/ヴォーカル/WMJ(限定盤)/邦盤/中古
   ジャンル:ヴォーカル・ジャズ、ア・カペラ、フュージョン、ヴォーカリーズ
73年再結成時のメンバー
シェリル・ベンティー
ジャニス・シーゲル
ティム・ハウザー
アラン・ポール

(3)VOCALESE Featurering the Lyrics of Jon Hendricks (9枚目)

①は「ザッツ・キラー・ジョー」で、これってクインシー・ジョーンズでしたねぇ。

中ジャケの極小文字を見ていてなんとなくわかりました。元になるジャズコンボの
演奏があって、それをアレンジしているんだが、時にインプロヴィゼーション部分
も含めて声で、しかも歌詞をつけてやってるんだ。その歌詞が「ランバート,ヘン
ドリックス&ロス」なんてジャズヴォーカルのユニットのメンバーだったことで知

られるあのジョン・ヘンドリックスが書いた。それで、このタイトル。挑戦的で斬

新。

②のバックは本物のカウント・ベーシー楽団のよう。斬新さはないがいいキレ。
③ヘンドリックスも入って、ハイテンポ。ヴォーカルアレンジのシーゲルのハイト
ーンがすごい。ズート・シムズをシーゲルが、デイヴ・ランバートのソロをA・ポ
ールとハウザーが、ラス・フリーマンのソロをベンティーンが、そしてヘンドリッ
クスのソロをなんとヘンドリックス自身が、模す。④はスローテンポ。プレーヤー
もすごいが、なんとゲストにフォー・フレッシュメン!⑤古めのミドルテンポ。ベ
ニー・ベイリー(tp.)はよく知らない。ビックリの⑥(ナイト・イン・チュニジア)はパー
カッションのほかは声で楽器を模すんだが、ヘンドリックスはパーカーを模し、そ
のほかになんとボビー・マクファーリン本人! やれやれ、これ、すごいトラック。 
⑦はシンセが入ってブラックミュージック系のフュージョン。⑧再び懐かしい名が
何人も見えるが、今度はカウント・ベイシー楽団を丸ごと模す感じ。乗りよし。
⑨はマッコイ・タイナー/ロン・カーター/グラディ・テイト等のリズムセクションで、アート・ファーマ
ーのソロをA・ポールが模す。 ⑩ディジー・ガレスピー/ジョン・パティトゥッチ・・・ 「ク
リフォード・ブラウン」のソロをハウザーが模している。 ⑪マイルス・デイヴィ
スのソロをJ・シーゲルが、リー・コニッツのソロをT・ハウザーが模している。
参加メンバーもやっている中身も、なんと贅沢なジャズ&ヴォーカリーズ。間違い
なく5枚のうちの白眉。というより、ひょっとすると、このグループの最高傑作な
のかも。1985年かぁ、やるねぇ。録音も一段と良くなった。すごいので、つい長く
なってしまった。                      <★★★★△>

          (左から2人目がヘンドリックス)

 

(4)SWING(15枚目)

この5枚の中では分が悪いかもと思ったが、決してそんなことなかったです!
スウィングで括ってあってまとまりがよく、しかもスウィングったっていろいろ。
小さめのコンボが多いものの、インスト部分のアレンジの工夫が効いている。
スローな③⑦⑩だけでなく、⑫⑬などでも、生ギターやヴァイオリンのかけあい、
が抜群。⑤ではストリングスが入り、⑪はオシャレ。全体に乗りがいい。
ステージなど考えずに多重録音でひたすら美しいハーモニーを探求したシンガーズ
・アンリミテッド(男3女2)とは目ざすところが違っていたようだが、ここまで
すごい歌唱を聴いていると、本当に多重録音、やってないの?と言いたくなる。
それがわかるのが最後の⑬で、これだけライヴ。すごい、本当に歌っている。
                               <★★★★>

(5)The Spirit of St.Luis(16枚目)

ついニューオーリンズを連想するが、セントルイスなのね。ライナー読みたい。
①アップテンポのチャールストンという感じ。
②脚ふみのオルガンみたいな音で始まる古風を意識したブルース。
③この曲からサッチモの唱法を少し模し始める。(ジャンル名わからない)
④真夜中のカウボーイふうなポップス、ストリングスも入ってロマンティック。
⑤行進曲的ブラックミュージックで、サッチモの唱法(ジャンル名なんだっけ?)
⑥曲名にニューオーリンズがあるが、豊かなハーモニーのスローなジャズヴォー

カル。シンガーズ・アンリミテッドにアコーディオンのバンドとの傑作があるが、

その中の曲を連想。

⑦おっとりした楽しい会話で始まる。フィッシングがドウタラコウタラ。最後に

サッチモ

⑧アップテンポの①のジャンルに近い。バンジョーやサックス、そしてちょっと

サッチモ

⑨泣くようなギターが特徴のブルース調
⑩3拍子で奇妙に凝った「星に願いを」で、宇宙っぽいサウンドのジャズ(?!)
 
⑥と⑩はジャズだけれど、そのほかはなんとなく米南部の匂いで括ったようなと
ころのあるアルバム。かつリアルを目指してはいないサッチモの歌い方をあちこ
ちにばらまいている。(3)の「ヴォーカリーズ」とは違う凝り方のもので、ヴァ
ラエティに富んでいる。(4)の「スィング」とは1作違いだが、3年開いてい

るのは、わけがあったんだろう。きっと苦労して作られたんだと思う。 

                              <★★★☆>

 

以上、たっぷり楽しみました。
ほかに聴いてみたくなるかもしれないと、アマゾンを見てみましたが、いいのが
載っていませんでした。

シェリル・ベンティーンとジャニス・シーゲル、両女声ヴォーカリスト個々のア

ルバムも色々出ていて、聴いてみたい。

それにしても、他にも賞を獲ったものもあったのに、なんでこの5枚なのかなぁ、
やっぱり気になりました。ライナーには何か書いてあったのかしらん・・・
ハイ、諦めます。終り。

(ああ、ひとつ手に入れて聴いたことがあるアルバムというのは、「tonin’」

でした。あまり出来はよくないそうだが、探して聴いてみよう)

このミス 2024年版

20240128(了)

このミステリーがすごい!

                   2024年版』

                                                   20231205/雑誌/宝島社

 本の(≒新刊の)情報は、映画と同じで、ほとんど新聞から。
 週一回の新刊評。月一回程度の書評。年一回年末の30数人の各界のプ
ロフェッショナルによる「今年の3冊」なんてやつ。 その他エッセイ風記
事や日々の広告。ま、ほぼそれだけですが、例外はこの年1回の雑誌。
 よく見てみると、ミステリーだけでなく、ミステリー味のある時代小説
や普通小説、SF、冒険小説などが、国内モノだけでなく翻訳モノでも、少
しだけだけど紛れ込んでくる。書評子が何十人もいる(70人でした)も
のだから、中にはいろんな方が混じっているのですな。ミステリー用の雑
誌なのに、他ジャンルを入れちゃう。ま、広義のミステリーとして・・・
 全員(大学のクラブといった団体名もあります)投票のみならず選択理
由の寸評を書いている。この短文がオモロイ。結構楽しみ。
 いいのを見つけたからって、やはり映画と同じで、見るわけでも読むわ
けでもありません。
 ま、たまには読みたいリストにいくらか加えるし、ごくまれにはそこの
ものを読むことになることもありますが、それも安くなってからのこと。
 
 寝る前にチビチビ読んでいて、やっと目を通し終わりました。
 どうせ読まないが、何冊かは読みたいものリストに入れておきましょう。
 年一回目を通すこと自体が目的化してしまっています。でも今回も楽し
かった。今年は国内編がよかったなぁ。



マンハッタン・トランスファー ファイブ・オリジナル・アルバムズ 1/2

マンハッタン・トランスファーの素晴らしい歌唱

とクロスオーバーアレンジ

昔、ちゃんと聴かなかったのです

 

20240127(メモ了)

マンハッタン・トランスファー

/ファイブ・オリジナル・アルバムズ

  THE MANHATTAN TRANSFER 1&2/5

(1)マンハッタン・トランスファー・デビュー 
   Ⓟ&Ⓒ 1975 Atlantic  34:41
(2)モダン・パラダイス  
   Ⓟ&Ⓒ 1981 Atlantic  36:30

 

   2010年8月/CD/5枚組/ヴォーカル/WMJ(限定盤)/邦盤/中古
   ジャンル:ヴォーカル・ジャズ、ア・カペラ、フュージョン、ヴォーカリーズ
 
   73年再結成時のメンバー
    シェリル・ベンティー
    ジャニス・シーゲル
    ティム・ハウザー
    アラン・ポール

1969年に結成され1971年にいったん解散したが、旧メンバーのティム・ハウザ
ーが中心になって73年に再結成。ここから本格的活動。ジャズ系ヴォーカル。
この5枚はすべてスタジオ録音で、これまでにメンバーも替わりながら21作のア
ルバムを作っている。ほかにライブアルバムが5枚、コンピレーションが5枚、
シングル盤も多い。『トワイライトゾーン』のテーマ曲がやっぱり有名かな。
メンバーを替えながらいまだに活動は続けているみたいですが、知らないです。
この5枚セットはどういうコンセプトのものなのかわかりません。この邦盤に
は限定盤と謳っているものの、日本だけのものではないようです。
アルバム数がまとまっているのがこれのみだし、意外に安かったので、仕入
てみる気になりました。過去になにか1枚手に入れてみたことはありますが、
なんだったか思い出せない。どこにしまい込んだかもわからない。
日本で人気も出て、仕事上大変な枚数を出荷したことはよく覚えていますし、
キレがあって上手いとは思ったが、何故か若い間は興味が持てず、うっちゃら
かしてきました。
ワタシはもう何度も書いていますが、「シンガーズ・アンリミテド」という、
ジャズ系とはいってもライヴをやらない、多重録音を駆使してベターっと美し

い(といっても混濁はしない)ハーモニーが持ち前のグループの大ファンで、

マントラにまでは手が届かなかった。

タイプは大きく違うがジャズ系ではあって、重なる部分もあった。ヴォーカル
グループとして、70-80年代には双璧だったんじゃないかなぁ。マントラ
(なんて言ってました)のほうがはるかに人気があったけどね。
今聴けばどう感じるかなと、選んでみました。
曲名はジャケット任せ。ライナーノーツは本来は入っているのですが、これに

残念ながら入っていませんでした。文句は言って認めてもらえたが、まぁこっ

ちのチェック不足。

細かく書かないで済む。

(1)

デビュー盤となっているけれど、スタジオ録音では2枚目。白人系の古いポップ

ス、少し新しいポップス、黒人系のゴスペル、古いポップス、新し目のポップス、

古いジャズ、モダンジャズ、古いダンサブルなもの・・・等々お披露目的な意図
があったのでしょう、とにかく色々。そしてほとんど原曲に寄り添い、元のイメ
ージを壊さないアレンジした感じ。始めこそきりっとしていない気もしたが、聴
くうちに乗ってきた。「だんだんよくなる法華の太鼓」、古いネ。<★★★☆>

(2)

6枚目のアルバム。一曲目、クロスオーヴァー系のバンドの上に聞こえる歌唱の
キレの良さはまったく素晴らしい。これで完全にいかれてしまう。
全体的には(1)のように色んな時代を拾っていて、味付けは明るい。声のハー
モニーが絶好調。クロスオーヴァー系のアレンジはオリジナルもちゃんと立てて
いて、かつスマート。④は「007」のジョン・バリーのではないテーマを使って
いるのが面白い。最後⑨のアカペラの「バークレー・スクェアのナイチンゲール」は実に美しい。

シンガーズ・アンリミテッドにもアカペラの歌唱があったような気がする。

(1)同様LPの時のままのアルバムはたった36分台のいかにも短い収録ながら、

全曲密度が濃い。名盤じゃないかな。             <★★★★>

次が長くなっちゃったんで、ここで切ります・・・

映画『ザ・ホエール』

20240119(了)

映画『ザ・ホエール』

  ダーレン・アロノフスキー監督/ブレンダン・フレイザー/ホン・チャウ/
       セイディ・シンク/サマンサ・モートン/タイ・シンプキンズ
  2022年製作/117分/米/原題:The Whale/DVDレンタル
  <★★★☆>

デブ(巨漢)なってしまった男の後悔まみれの最期の一週間。贖罪の物語とい
うか、しんどい会話劇でした。
はっきり言って、こんな身動きが取れないまでに太ってしまう必然は、普通は
ない。だんだんわかって来るには来るんだけれど、わかってはみても、あくま
でこの男の場合ということでしかない。確かに切実ではある。「命」の状況も
鬱血性心不全のために逼迫している。
 
なんとかトイレに行くのと玄関先のピザを取りに行くのがやっとという男。従
って彼の部屋の中だけが舞台なので、ほとんど舞台劇同然。
もともと大学の講師だったのだが、今は覆面講師として学生に文学だか文章だ
かを教えている。教養は高い。エッセイのネタに『白鯨』を使っていて、それ
が話の進み具合や収斂するべき場所にも、うだうだと絡んでいる。
彼が、おしまいのほう、ある激したシーンで、体のあちこちの不調や不都合を
一気に述べ立てるところがありました。そりゃあ、さもありなん。骨付きチキ
ンをほおばりつつ、それらを我慢し続けているというだけでも、暗澹とさせら
れちまう。
 
すべての始まりは大学教師である彼が、ある男子学生と恋をし、家庭を(妻と
当時8歳の娘を)捨ててしまったこと。
恋の状況や行方、妻との約束事、娘の育ち方、などが徐々に明らかになる。
 
彼とコミュケーションを採っている、あるいは採ることになるのは、まずはモ
ンゴロイド顔の介護系ナースの女性(自死してしまった彼の同性の恋人の妹)。
彼の現在の体の状況を最もよくわかっている。次は「ニューライフ」とかいう
キリスト教新興宗教の若い宣教師。彼はたまたま布教に訪れた。宗教と出自
に関係ある談義が中心。そのあとは、男の頭の中の大半を占める「娘」。16歳
だったかな。頭はいいが、父を求めつつも激しく憎み、こっぴどい問題児で皮
肉屋。会えば父を詰り続ける。
最後に出てくるキャラは、妻。そうだ、ピザの配達人がいました。あれだけピ
ザ(と鶏)ばかり喰えば興味も持たれる・・・
さあ、しんどい会話はどんなふうに進むのでしょうか、、、
やっぱりねぇ、救われて(≒赦されて)ほしいと思っちゃいました。

すごいメーキャップと熱演もあってオスカー(主演男優)を獲ったものだから、
すっかりメジャーな作品になっちゃった。観た人も多いはずなのに、鑑賞記が
少な目なので、なんだかアップしづらくって。気にしてもしゃーないですが。
 (百貫というと375㎏か。あの男は、そこまでではないとは思うが、いや
  いやすごいメーキャップでした。最後は巨大なシロナガスクジラが海から

  半身を突き出して、空にでも昇らんとするかのごとき感じ、そんなイメー

  ジがありました・・・)

オシマイ。
 

  

  以下は付録。音楽ネタです。茶化しているつもりではありません。

  「デーブーデーブー 百貫デーブー 電車にひかれてペッチャンコー」なん
  ていうひどい歌詞のわらべ歌がありまして、子どもの頃に聞いたことは
  ありました。それが、中学の終りか高校の始め頃ころだったと思います、

  間宮芳生の歌曲集『子供の領分に入っていて、ラジオでまた聞くこと

  になった。

  しかも聴いてめちゃくちゃファンになり、テープに録音までしてよく聴
  きました。むろん長じてはLPも手に入れた。ドビュッシーとも吉行淳之
  介とも関係ありません。オケ伴付きのわらべ歌を集めた歌曲集です。
  誤解されちゃうかもしれんが、いじめふうな感覚は持っていなかったで

  すね。素材としての単なるわらべ歌(の一つ)で、コラージュふうな巧

  みなアレンジを、サウンドを、単純に楽しんだ。

  子どもの世界というのはだいたいこんなふうに、まま明け透けで露骨に

  ストレートなものだと思っていただけでした。

  ところが、魅力的なサウンドでしかもわかりやすかった(付いている和

  洋折衷ふうオケ伴が繊細でことのほか素敵だった!)のに、何故か人気

  曲にはならなかった。通俗かもしれんが、あんないい曲(ゴジラよりよ

  っぽどいいって、較べ方が違いますね、ゴメンナサイ)本当に勿体ない。

  もっとも、作曲者自身が評価しないと語ったことを、随分前のことなの

  に何故だかワタシ、ちゃんと覚えています。理由は通俗性だったように

  思うが、そっちは覚えていません。今なら、差別用語が入っているとい

  うことで、話は簡単、そのままでは当然表に出せないでしょうね、と考

  えるだけ・・・

  

  連想してしまったんで、ここぞと品なく書き足してみました。