(1)『質屋』 |
※1964年、米映、シドニー・ルメット監督/ロッド・スタイガー/ジェラルディン・フィッツ |
ジェラルド/ブロック・ピータース 116分 |
(映画.com解説)ニューヨークで質屋を営むユダヤ人のソルはナチ |
の強制収容所で妻子を殺され、それ以来人間不信に陥っていた。 |
ソルを尊敬し、その助手として働いていた若者ジーサスは金欲し |
さも手伝って、チンピラたちとともに自分の勤める質屋から金を盗 |
み出そうとするが・・・。心を閉ざしていた男が絶望から立ち直って |
いく姿を感動的に描いた社会派ドラマ。 |
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非常に世評の高い映画でした。学生時代にロードショーとして地方都市 |
で観たんですが、ロッド・スタイガーつながりの「夜の大捜査線」と、観た |
時期はほとんど変わらない記憶なので、「質屋」はかなり遅れて回ってき |
たんやね。インパクトはあったと思うが、なんたって昔のこと、どうでしょう、 |
ワタシ、どれだけ理解していたんだか、怪しいなあ。 |
さて、 |
クインシーの映画音楽としては最初期のもののはず。音楽の印象は「冷 |
血」や「夜の大捜査線」と比べてうんと地味で、正直ほとんど印象がなか |
ったんだが、ひょっとして、と、手に入れてみた。 |
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フルバンドものはマーキュリー時代そのものだが、コンボものも素晴らし |
い。ウィズ・ストリングス物も、なんのことはない、お手の物で、クラシック |
系の古い映画音楽作曲家のスタイルを踏襲しつつも、ジョニー・マンデ |
ルやネルソン・リドルのような粋なニュアンスもちゃんとこめている。 |
①も歌で、Jack Lawrenceという歌手。知らない。サントラ全体のテーマ |
のメロディ。 |
⑦だけは音楽じゃなく、スタイガーのわざとらしい訛りのあるセリフがメ |
イン。始め抑えて喋りはじめるが、だんだん激昂してくるのがド迫力。 |
最後の⑪で堂々たるサラ・ヴォーンの歌が、次の映画の最初の⑫で脱 |
力系のA・ジルベルトの歌が、続いて流れてくるというのも、オツなもの。
*ジャケットにはモノラルの表示があるが、結構露骨に、左右に音が
分かれてます。昔流行った‘偽ステ’なのか、もともとステレオだっ
たのか。どうでもいいことではありますが。
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(2)『恐怖との遭遇』 |
※1967年、英映、シドニー・ルメット監督/ジェイムズ・メイソン/マクシミリアン・シェル |
107分/日本未公開/原作;ル・カレ「死者にかかってきた電話」 |
なんと、ジョージ・スマイリーが出てくる最初の小説、というより、ル・カレ |
の最初の小説。英国の諜報活動のお話。読んだはずやけど、もう、なー |
んにも覚えてません。老獪なスマイリーの出てくる5冊の、あとの3作は |
まだなんとなく覚えてるかも。『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』 |
『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』。 |
最初のはルメットだったんやね。スマイリー役は多分ジェイムズ・メイソ |
ン、少し老けすぎかな、、、でもけっこうピッタリな気がする。 |
で・・・アストラッド・ジルベルトの歌で始まるサントラは、地味な諜報活動 |
だとか秘密情報局の話だというのに、全て(ホントにすべて!)ジャズ系 |
ボサノバで統一、メロディのヴァリエーションで構成されている。 言われ |
なきゃこれがクインシーの音楽だとはとても思えない。ボサノバがもう完 |
璧に米英に(欧も?)に定着していたことがわかる。ボサノバの草創から |
はそんなにたっていないのに。 もともとジャズとは相性がめちゃくちゃよ |
かったわけだけどね。 |
コンボでのもの、ブラスが入ってのものなどは当然うまいのは当たり前だ |
が、ストリングスでのオブリガートや、フルオーケストラでのドライブも、正 |
式な教育を受けているからでもあろうが、そのセンス、さすがとしか言い |
ようがない。 |
ところで、このムードたっぷりなボサノバ、映画にどうフィットしたんだろう。 |
ル・カレだよ!(驚いても、50年前じゃね、話にならん) |
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というわけで、シドニー・ルメット監督の2作が、たまたま音楽も共にクイン |
シー・ジョーンズの映画担当の最初期にもあたっていたということで、出 |
来過ぎなほどうまいカップリングのサントラCD。 |
悪かろうはずもない。音質はまあまあ。悪くはないというところ。 |
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『カポーティ』を観たことで俄然記憶が呼びさまされた『冷血』(1967、リチャ |
ード・ブルックス監督)のクインシーのサントラ、非常に薄気味悪い音楽(や |
はりジャズ系)の一部はいまだ覚えている(気がする)が、ちょっと調べて |
みたところ、現在は少なくともCDでは手に入らないよう。残念。 |
スタイガーを忘れられなくさせた『夜の大捜査線』(1967、ノーマン・ジュイソン |
監督)のクインシーのサントラは、これはずいぶん前に手に入れて持っ |
ている。良くも悪くも、レイ・チャールズの歌があまりに有名(いや実際名 |
曲だし名歌唱でもある)で、クインシーが霞んでいるが、スコア部分も悪 |
くないサントラ。 |
この後の映画音楽担当となると・・・ |
「マッケンナの黄金」監督J・リー・トンプソン 1969年 |
「ミニミニ大作戦」監督ピーター・コリンソン 1969年 |
「ジョンとメリー」監督ピーター・イェーツ 1969年 |
「ゲッタウェイ」監督サム・ペキンパー 1972年 |
「カラーパープル」監督スティーヴン・スピルバーグ 1985年 |
全部観ているはずだけれど、一番よく覚えているのは恥ずかしながら、 |
最初の「マッケンナの黄金」。ホセ・フェリシアーノの歌とともに・・・。 |
ともあれクインシーの映画ったら、これだけ。 |
どんどん映画から遠ざかってしまって、本来のジャズやフュージョンや |
プロデュースのドン(≒偉人)みたいになっていく。 |
TVドラマのテーマ担当(上記と同時期)で、「鬼警部アイアンサイド」な |
んていう、クインシーのことも音楽のことなどもろくに知らない人でも、 |
“ああ、これ知ってる!” |
と言うに違いない曲もものしている。 |
因みに、プロデュースで一番売れたのって、マイケル・ジャクソンのアル |
バム『スリラー』なんじゃなかったっけ、記憶違いかもしれないけど。 |
天才クインシーも、もう84-85歳なんだなぁ。 |