休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

未来のアラブ人 ― 中東の子ども時代(1978-1984)(マンガ)

20220929(了)

未来のアラブ人 

     ― 中東の子ども時代(1978-1984

   作―リアド・サトゥフ 訳―鵜野孝紀

   2019年7月/マンガ/花伝社/共栄書房/単行本/中古
   <★★★☆>

 

子供時代のうち、中東にいたころのことというぐらいの意味か。
マンガです。セリフの上に説明もついていて、小うるさい感じ。

でもわかりやすかったですよ・・・  

本は、 from  left  to right です。

 
シリア人の父とブルターニュ生まれの母親がパリで結婚し、子供が生まれる。
この子が主役というか、作者。なかなか才能に恵まれた人。ま、自伝です。

第一章 1978-1982
この親子3人がまずはリビアに行く。トリポリ。あのカダフィリビアですよ!
主に2歳ぐらいからのことが描かれる。
子供から見ているという形をとっているので、親もへんてこりんなら、この子も
ヘン。保育園もヘンだが、なにより奇妙な感じなのがリビアという国・・・
ドクターになって学校で教える父親が妙に短絡的な感じなのと、こんな亭主とよ
く結婚したなというような鈍感な調子に見える母親。ま、似合いの夫婦に見えな
くもない。常にカワイイカワイイと周りから言われ続ける本人・・・

第二章 1982~
リビアに見切りをつけたらしい両親は、ブルターニュの根っこ、つまり奥さんの
実家に行くことにする。当時の大統領はポンピドー。いろんなところに出てくる。
ここで面白いのは俄然幼稚園。もうひとり、近所のおばあさんがホラーめいて出
てくるのも笑えたが。
で、お母さんが次の子を出産。

第三章
フランスでは父親は職探しをしなかったのに、今度はシリアで教職探し。古い
コネの社会で、なかなかちゃんとしたポストが見つからない。(1971年以
降、シリアでは元戦闘機パイロットのアサドが実権を握り続けている。アル=
アサドは「ライオン」で本名ではなく、本名は「野獣」を意味するアル=ワッ
シュ。シリアは多数派のスンニ派なのにアサドはシーア派に属する・・・ )
入国時の悶着・・・
散歩しながら、買物しながら、親戚んちへ行きながら、、、父親の祖国である
シリアのお勉強・・・。 シリアのいろんなことを見聞きし体験するのだが、言
葉ができないことがいろいろ差し障って、親戚のガキたちの一部からいびられ
脅され、懸案の学校には行きそびれてしまうという、長い章。人を見下したり
誹謗中傷したりする際の言葉でイギタナク盛り上がる。
 
作者にとって、シリアはどう見てもあまり好意的に捉えられる国(国情)では
ないのですねぇ。シリアよりはむしろリビアのほうが好ましく思えたよう。
リアドの父親はああだこうだとシリアのことを弁解するような言葉を発したり
拡大解釈をしたりして強がる。リアドに向かっても「お前はフランス人じゃな
い、シリア人だ!」などと言う。 大学の教師かなにかなのに、まるでバカみ
たい。(専門もわからない) というか、始めから常にあちこちでバカみたい
に描かれ続けるのだ。本当はバカなわけはないと思う。後年のリアドの感覚や
記憶なんだろうね。
急転直下、シリアを出る。多分理由はこの子のせいでなく、別の理由でシリア
を出ることになるよう。(母親の堪忍袋の緒が切れたみたいにも思えたが、違
うのかな・・・)

第四章 ~1984
母親の堪忍袋なんて、全然違ってました。
パリ、イギリス海峡の島(ドーヴァー海峡じゃないの?)と移動し、そこでリ
ビアで働いた金を得て(へんなの!)、またシリアへ戻ることに。
この子(著者)は、第三章の理由(またいじめられる)で、大いにゲッソリ。

父親は地元で豪邸を立てるぞと息巻く。家族4人で飛行機に乗って、第一巻終

り。

 
中東、といっても実際はリビアとシリアだけどね、そこにいた時代の、ほぼ0
歳から6歳までのことを描いている。
上手い絵でもないし繊細とも言えないでしょうが、一応の統一感があり、独特
の表情付けだと思います。親子3人とも「ヘンテコリン」に近いかも。
顔つきだけでなくキャラも不思議。始めに、この父親の反応が、ヘン。 コス
モポリタンじゃない。ヨーロッパ、アフリカ、中東をまたにかけてんだから、
少しはグローバリズムぐらいあってもいいのに、なんだか大雑把、大風呂敷。
母親もヘンで、このヘンな夫にあまり文句も言わない。不可解。
さいころの作者にとっては、そういう感じだったんでしょう。

 

リビアやシリアなんて、まるっきり知らないですからね、こっちは珍しいもの
見たさです。でも実際のところ、どれだけ感じが掴めたろう。
繰り返しになりますが、、、一見子供の理解度の浅さや関心の狭さを踏まえて
の表現を採っているけれど、大人になった自分の評価や説明を擦り込ませてい
る。まあそりゃしょうがない。でもだからこそ、父親のバカげた意固地さや、
それを赦しているらしい母親の態度は、ものすごくケッタイ。
もっとも、、そういう奇天烈さは、しまいにゃ慣れてきてしまって、ヘンなが
ら、一種のハーモニーを奏でているみたいでもある。
 
さて、シリアに戻ってから、どうなるんだろうな。
豪邸なんて建つのか(建つわけない)、4人になった家族はちゃんとやって
行けるのか。(まあ、なんとかやってはいきそう)
おひざ元のアサドの強権政治をはじめ、この辺では歴史的事象が実にいろいろ

起きることになる。家族にとってどんなふうに見えたのか、見届けてみたい。

日本人にはたいていよくわからない世界のことですから。

2冊目、3冊目をリストアップしました。いつ読めるかは、わかりませんけど。