休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『マーブル・アーチの風』/コニー・ウィリス

20211215(了)

『マーブル・アーチの風』

     コニー・ウィリス 大森望;編訳

THE WINDS OF MARBLE ARCH AND OTHER STORIES
by CONNIE WILLIS
 白亜紀後期にて
 ニュースレター
 ひいらぎ飾ろう@クリスマス
 マーブル・アーチの風
 インサイダー疑惑
  訳者あとがき
 
  2008年/SF短編集(特別編集)/早川書房(単行本)/中古

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The Wind of Marble Arch(1999)
文科系?文学系?の二組の夫婦が、学会、あるいは業界の集まり(パーティ)
のために20年ぶりに(米国から?)ロンドンにやってきて、数日、ロンドン
を楽しもうとしている。
長老と愛称的に呼ばれる彼らの先輩格も久々にやってくるので、会うのが楽し
みという「話」になっている。
それぞれがばらばらにロンドンで行動していて、なん日後にか集まって、観劇
(観ミュージカル?)しようということになっている。長老のことと共に表面
的な興味の中心になっている。それらはやたら出てくるウルサイだけの話題で、
その実、皆がそんなに関心を持っているようには思えない。
そのチケットを頼まれている夫1人の目や感受性を通して、語られる。
 
この男、特にミュージカルに興味があるわけではないが、妻の要望には応えた
いと考え、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ・・・というところで、地下
鉄構内で、激しくも、なんともおぞましい「風」に出遭い、それを解明するこ
とへの関心がすべてといった具合になって行く。探し回る。何度も出遭うが、
どこででも出遭えるわけじゃない。
なぜこんなにおぞましい感じなのか、なぜ誰もそれに気付いていないように見
えるのか・・・
複雑なロンドンぢゅうの地下鉄を行きつ戻りつの、ロンドン地下鉄紀行といっ
た状態で、合間にチケットの算段。
いろんな「なぜ」に対して少しづつ積み重ねられてゆく理屈は、ロンドンの歴
史、特に第2次世界大戦のロンドン大空襲に絡めた(SF的)妄想。
臭いは分析され、様々なものに例えられるが、その一つは遺体安置所のもので、
マーブル・アーチにはそれがあった。

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              (ロンドンの地下鉄略図)

白けたパーティ、長老の「老い」、妻がもう一人の妻の不倫をつぶやき、自分
たちもゆらゆら。観劇の最中から、不倫話のもうひと組がヤバイ状態になる。
20年の夫婦生活のうちにたまったどうしようもなさそうに思える澱が、巻き
あげられてしまったのだ。
ところで、不思議なことにその「風」を、語り部の妻もロンドンに来た当初か
ら実は感じていて、彼女はだからこそ地下鉄に近寄らなくなっていたなんてこ
とがわかるのだが、最後のほうは、この夫婦の真実、何とも言いようのない気
の重いアップダウンをするさまが、このいやーな謎の「風」に露わにされてし
まったかのよう・・・
 
いい読後感かどうか、我ながらよくわからないんだけれど、不思議な構造のお
話には惹かれました。なにかとてもテクニカルなストーリーテリング
書評家なら自分の夫婦のことと重ね合わせるようなことはしないでしょうが、
ワタシは書評家じゃないんで、、、「糾える縄」みたく、正直ちょっと考えて
しまったことは確かやね。( ・・・ )
                            <★★★☆>
Newsletter(1997)
タガが外れたようなエイリアンもので、実在、架空のいくつものエイリアン映
画や、それらの原作になった有名な『人形つかい』や『盗まれた街』も出てく
るコミカルな話で、常套的なイライラを伴わせ、かつ完全に人を食ってる。
ある町が(自分の周りが)エイリアンに乗っ取られているとわかる。わからせ
るまでが大変。最後にバタバタと策を講じ、ひとまず撃退したみたいな状態に
なっておわりなんだが、自分しか知らないみたいって、そんなぁ。ただの冗談
の手品(やってから元に戻すみたいな?)か妄想じゃないか・・・
 
この話のきっかけになる「ニュースレター」に影響を受けて、娘へのクリスマ
スプレゼントにそんなふうな手紙を付けました・・・と、これは実際の話。
                             <★★★△>
 
せんだって読んだロバート・F・ヤングのと比べると、一篇一篇が長く、時間
の取り方が難しかった。
ハイ、積読からSF短編集、おしまい。