休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『わたしの叔父さん』

20211214(了)

映画『わたしの叔父さん』

  フラレ・ピーダセン監督//イェデ・スナゴー/ペーダ・ハンセン・テューセン
  2019年製作/110分/デンマーク/原題:Onkel
  <★★★★>

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                 (叔父さんの視線の先にはテレビ)

デンマークの起伏の乏しいのっぺりした田舎。
父親を亡くしたクリスティーナを引き取って叔父が乳牛と農業をして暮ら
していたが、叔父が脳梗塞かなにかで倒れ、ほぼ立場が逆転しての生活。
映画はこの立場が逆転したような、でも静かな二人だけの生活から始まる。
叔父は動けるとはいえ、いろいろな介助なしでは済まない。物分かりはよ
くて、クリスティーナの獣医師への興味や自分に縛られる生活を気にかけ
ている。
 
お互いに助け合いながらの普段の生活や仕事が描かれる場合は、彼女は命
令口調になりがちなのに、叔父はちゃんと従う。
牛に関わるシーンが多いけれど、農業もやっていて、かなり大きな重機も
時たま出てくる。
 
食事中などは彼女はたいてい獣医系の本を読んでおり、叔父は冷蔵庫の上
に置いたテレビを観ている。夜、寝るまでの時間帯は、彼女もテレビを一
緒に観ていることが多い。テレビではなぜかひたすら海外のニュースが流
れている。トランプやプーチンの言動、EUへの中東からの移民の話・・・。
買物は叔父の運転で(運転はやるんだ!)二人でスーパーへ。
会話は最低限。
 
外部とのコミュニケ―ションの一つは、人のいい獣医先生。彼はクリステ
ィーナの事情や獣医への興味を知っていて、牛の出産をきっかけにして、
なにくれとなく気を遣い、外の世界に連れ出してくれたりもする。それが
この映画の数少ないドラマに繋がって行く。
もうひとつのコミュニケーションとしては、彼女が教会で出会った聖歌隊
の青年と親しくなること。「祭り」、つまりデートに行く行かないという
ことから、ドラマが動く。これの関連では珍しく三度ばかりクスッとさせ
てくれました。というか笑えるユーモアってここだけだった気がするなぁ。
そして、そのあと、初めて音楽がちゃんと鳴りました。
しかし彼女は普通の女性と比べれば(って、めちゃくちゃな比較だけど)、

よく言えばストイックで言葉数が少ない。別の言い方をすれば、ほとんど

不機嫌に近い。愛嬌ゼロ。鬱屈が強く感じられる。こりゃ、好きになる男

も物好きだが、男はたいへんだな。

 
この叔父と姪の生活は一体どうなっていくんだろうというのは、気になり
ました。ワタシ、入って行きましたねぇ・・・

決して好きとは言えないバルト海奥の国のカウリスマキ監督作品をちょっ

と連想しました。

暗いところをグサグサ掘り下げるなんてことは、意図的にしたり見せたり
せず、優しさや慈しみの表現にとどめておくというものでした。

明るい未来が見えるなんてものじゃないのに、何故かとても好ましいと思

いました。世界じゃ何が起きているのかということはちゃんと伝わってい

るんだよ、ということも。

景色はダメです。苦手もいいとこ。

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