20230816(了) |
映画『笑う故郷』
監督;ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン//オスカル・マルティネス |
2016年製作/117分/アルゼンチン・スペイン合作/ |
原題:El ciudadano ilustre/DVDレンタル |
<★★★△> |
英語のタイトルだと『著名な市民』ぐらいの意味のようでした。 |
スペインに住み、故郷を離れて40年来、地元アルゼンチンのサラスの街に戻 |
っていない作家が、ノーベル文学賞を受ける。 |
そこからのストーリーは5つの章に分かれて、順序良く描かれる。 |
1)ノーベル賞の受賞スピーチは、要するにポピュリズム的な小説を書き続け |
て評価されたに過ぎず、そんなものは(自分の)小説の劣化や退化だと断じて、 |
会場を白けさせる。もっとも、もうかなり長いこと書いていない。 |
受賞により猛烈な引き合いがくるものの、ほとんど蹴っ飛ばす。 |
2)いろんな誘いの中に故郷サラスからのものがあって、何故かそれを受ける。 |
滞在は1週間強ぐらいか。 |
40年間戻る気などなかったのに、気まぐれか、何か贖罪のようなものか。あ るいは、見返してやる感覚か。 |
同行者なし。アルゼンチンに着いてからの車のエンコが不穏。小さい町ゆえか、 こじんまりした歓迎式典。 |
3)いい意味でも悪い意味でも、小市民の縮図そのものの町や町の人びと。 |
歓迎式典の続きほか、講演や講習。千客万来、作家の目を白黒させる事柄が矢 |
継ぎ早に起き続ける。曲解、強請り、たかり、逆恨み、僻み。 |
4)混乱の中でも後を引く感じなのは、絵画のコンペティションに腹を立てた |
地元の名士を気取るヤクザまがいの男、元カノと彼女の夫、講習で発言した若 |
い女の押しかけ、日和見(ポピュリストぶり)の町長など。そしてまた車のエ ンコ。 |
5)当然、作家はウンザリし、開き直るのだが、、、上記が収斂する先は、(田 |
舎らしく)非常に危なっかしい・・・ おしまい近くでも車のエンコが出て来 ます。 |
とまあ、ここらでやめなきゃならないのですが、、、 |
「故郷から40年も逃げ続け、かつ故郷から出ることがなかった」というこの |
作家の感慨が、観る者にある一定の感覚や価値観を導くような感じなんだが、 |
映画の構造としては、田舎というもののいたって狭くて卑近で鬱陶しく嫌味な |
感覚をべったり纏った世界が、これでもかと押しかけ、その集大成的な皮肉で |
突き放すような形で終わらせる。エンディング自体にさほど深い意味はないみ たい。 |
とてもよくわかりましたし、映画としてアリだと思うけれど、面白いかねぇ ・・・ですな。 |
ジャンルはもちろんコメディなのですが、ウーンと頭をぼりぼり掻かせる。 |