佐藤雅美(まさみ/まさよし)が2019年に突然亡くなった時、朝日新聞の死 |
亡記事があまりに小さいのにビックリしたことは、妙に強く覚えてますねぇ。 |
このことはその頃にも書いた気がしますが・・・ |
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そもそも時代物のシリーズはいくつか読んだ程度で、それも、佐藤の居眠 |
り紋蔵ものと池波正太郎のシリーズつぐらいだったでしょうか。始めの2,3 |
冊を読んで続かなかったのはいくつもあります。藤沢周平は好きで、ずい |
ぶんたくさん読みましたし、中の連作ものは皆読んだと思います。 |
この居眠り紋蔵ものは、続いたが読み方がゆっくりだったものだから、ヘン |
に残ってしまって、気になってしまいましてね、積読を始め、時々読み、今 |
回最後(多分)の三冊のうちの一冊に取り付いたところ。といっても、後の |
二冊なんていつになるやら。傑作かどうかなんてよくわかりません。でも、 |
馴染んでしまったシリーズものなんてそんなもんじゃないですかねぇ。 |
第13卷目。(残りを読んでも、多分「完結」なんてことはないんだろうな) |
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㈠の密通する女の不倫なんて、いわば見え見えのもの。苦し紛れについた嘘
(強姦されたなどという)や芝居が、はじめ、意外なまでに通じてしまって、
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訴訟に発展する。役所としても捨ておけず紋蔵のいるセクションを大いに悩 |
ませる。もっとも結局は密通なのだ。本来は死罪。しかしながら実際はそれ |
ほど厳しいことにはならないケースが多かった。とはいえ、今で言う刑事事 |
件扱いなので、死罪の確率もそこそこあったとも言われる。 |
案の定バレて、あれで死罪は可哀そうだなぁという大方の見方で、役所の皆 |
も意気上がらない。いつものように物書き同心で判例など文書に強い紋蔵は、 |
頼られてお歴々の命を受ける。過去の判例などから知恵を絞って出した紋蔵 |
の策(実際に捜査もさせられてしまう)が実った形になる。結果、女は死罪 |
にはならず、それでもなかなか厳しい判決を受けるのだが、なんとなんと、 |
それがちゃっかり彼女の思いを遂げさせてしまうことになる。 |
明るいといっていい話で、錯綜ぶりが楽しい。いいですねぇこういうの。 |
ここでの紋蔵の居眠り(ナルコレプシー、阿佐田哲也のそれを学生時代から |
知っていましたので、ずっと前はハハァあれかぁと思ったものです)の記述
はなし。
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㈡は、大店でもって、死人を前にわぁわぁ遺言や相続の話で侃々諤々の大
盛り上がり、という出だし。これで役所や紋蔵がどう絡むんだい?
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・・・ははぁ、名主が役所に相談に来て、念番与力の筆頭が、部下である紋 |
蔵が詳しいはずだと呼びつけるのね。ムードは暗くないものの、いやいや、 |
これも難しい。それに、紋蔵にはもうひとつ問題が持ち上がりそう・・・ |
本編の難問はこんな感じのもの・・・ |
「幼少の娘に跡を継がせ、弟を後見人にするという内容の遺書を書いたの |
が十二年も前のことで、当人はその二年後に後添えを貰い、あらたに娘二 |
人が生まれた。そしてこのほど、死去した。その場合、十二年前に書いた |
遺書は有効か無効か、どちらなのでしょう?」 |
こらぁ揉めるわ。 |
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㈢ 正直な道具屋(古物商)の手代が、「真綿でくるんだ芋」と言っていい
娘を娶らせられることになる。持参金100両も付けてなので、そんな「芋」、
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つまりブスなんだと、大弱り。そんなの嫌だ! というところに、大大名の納 |
戸役が処分に持ってきた掛け軸の一つがとんでもない貴重なものだと判明し、 |
持参金のために嫁など貰わなくてもいいじゃないかと喜ぶが、ことはそんな |
ふうには運ばず、、、というやはり明るい調子の(けっこう素敵な)話。こ |
こでは紋蔵はその名が一度出ただけ。こんなのもあるんやね。 |
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㈥ 牢内で生まれ、7つまで牢内で育った女の子が見つかってしまう。とこ
ろがこの子、不思議な「福」をもたらすことが知れ渡り、とんでもないとこ
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ろにまで波及する話。ぷっ!と笑える、ユーモア譚の類。 |
いろんな部屋がある牢屋の蘊蓄が珍しかったのですが、長くて書き写すのは |
さすがにメンドクサイのでやめときます。 |
かわりに、、、ここでの小伝馬町の牢には女牢も当然あったが、女性の犯罪 |
者は男の十分の一ぐらいで、あった牢もその程度だったらしいが、込み具合 |
は男牢と変わらず、「ぎゅうぎゅうに詰め込まれて、夜は折り重なるように |
して寝た」そうな。牢の係は皆男。女牢にはほとんど入らなかったというん |
で、女の子がいるなんて妙なことになった。 |
母親が首を刎ねられた後、牢名主(女牢にもいたんだね)が世話をし、首を |
刎ねられたら、また次の牢名主に世話が引き継がれて、なんてことが何回か |
繰り返すうちに、女の子は7歳になっちゃう・・・ |