休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

OMPS「やさしい本泥棒」

20221028(了)

サントラ『やさしい本泥棒』

THE BOOK THIEF/Original Motion Piture Soundtrack
MUSIC COMPOSED AND CONDUCTED BY JOHN WILLIAMS
  ①-㉒
  CD/映画音楽/OMPS/Ⓟ&ⓒ Twentieth Century Fox Film Corporation/
  ソニー・クラシカル/輸入/中古
  <★★★★>

    《映画》ブライアン・パーシバル(監督)/ジェフリー・ラッシュ
                 /エミリー・ワトソン/ ソフィー・ネリッセ
    2013年製作/130分/G/アメリカ・ドイツ合作/原題:The Book Thief

今年5月に載せた『アンジェラの灰』のサントラと、どうしても較べてしまう
ことになりました。これは名作サントラです。ちょっと分が悪いか。
これに敵わない点は、、、
わかりやすい耳に残るメロディやピアノ、ハープなどの扱いの出来、などでし
ょうか。といっても、違う映画なのだから、違いは無論当たり前。
『アンジェラの灰』が、むしろ素朴な内容であるにも拘らず、美しく出来過ぎ
ていたり、新天地に向かうことが、まるでゴージャスに賛美するかのような聞
こえ方をする。それでよかったのだろうかという意見もありうると思うのです。
『A.I』に似たキラキラ感もふんだんで、そう思と、音楽だけ聴く分にはいいけ
れど、映画にはどうだったのだろう・・もう少し地味でもよかったんじゃない? 
ファンタジー? 
ワタシは実は大好きです。
 
さあ、それに対し、『本泥棒』のほうは・・・
全体に抑えたタッチで、目立ったメロディや歌い上げはほとんどない。
いや地味とはいえ、なかなかいいメロディなんですよ。でも『アンジェラ』に
は対抗できない。むしろおとなしく、沈潜しがちな雰囲気に貢献している。
もっとも、そうではありながらも、どこか都会的なセンス、っていうのかな。

感覚的なものだけど、その辺の感じが大きく違う点ということになるように思

う。

 
ああ、『アンジェラ』にちょくちょく出てきて、『本泥棒』に一切なかったよ
うだったサウンドが一つあるね。弦のピツィカート。チャイコフスキーの第4
交響曲のように、大々的にピチカートが使われるところがあります。
 
『アンジェラ』の記述のほうが多くなっちゃったな。
似ているのは、柔らかくぶ厚い弦、オーボエ・ソロが多いこと・・・
でもね、いろいろ比較はしても、ジョン・ウィリアムズサウンドとでもいう
ような音(色)の作り方やメロディの形は、個性としてあるのですよ。それは
あちこちで感じられました。
メロディだって作曲家自身の癖や個性。音色は彼と彼の専属オーケストレータ
ーたちとのコンビネーションの癖や個性。

 

そうだ、ウィリアムズの映画音楽でのミニマル、今頃一つ思い出した。
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
これって、もろにそうだったじゃないか・・・ 非常に上手な使い方。そして
木管の音色が独特だった。
ま、いろいろ記憶の襞には残ってるんだろうけれど、必要なものでなきゃ、そ
う簡単には思い出さなくなりました。

 

もはや90歳になっておられるジョン・ウィリアムズさん(観客として「スタ
ー・ウォーズ」は見たことがないそうな!)、お元気でしょうか・・・



雨の法隆寺

コロナで予定が飛んだ久々の奈良歩き

雨になりました・・・

一昨日、ああもう先一昨日か。年に一二回、呼び出してもらって奈良を歩い
ています。今回は法隆寺界隈を歩きました。(11月23日)
残念なことに予報通りの雨。観光客が少ないのはよかった。
ワタシは大阪府なんで、呼んでくださった方(東京)よりはよほど近いのに、
この法隆寺は何故か機会がなく、多分60年ぶりぐらいのはず。少し手前の
「王子」なんざ、オヤジの墓があるせいで何十回も来ていたのに。
 
中学生ぐらいで来た時は、晴れてギラギラした太陽のもと、暑くてもっとだ
だっ広いという印象だったのが、今回きてみて、それなりの広さだったんだ
なと納得。奈良市街を含め、奈良公園東大寺春日大社などのあたりを随
分歩き回ったこともあるのでしょう。

傘をさしての歩き回りは、少々効率が悪く、気勢も上がらなかったので、予
定した全部までは見学しきれなかった(らしい)。ワタシの歩数計では一万
八千歩台はいってまして、ゴルフの時より多かった。(ゴルフだと、すぐに
カートに乗ってしまうもんだから、あまりかせげないのです・・・)
 
一番最初に観たのは、お寺の敷地をぐるっと回って、藤ノ木古墳
直径50m、高さは9mって言ったかな、大きな円墳。前方後円墳のあとは、
こうした円墳が主流になった。
これが1985年ぐらいから発掘が始まったというんだから、ワタシにとっ
ちゃあ、もちろん60年のブランクの中。場所の感覚なんてまるっきりなか
った。実はほとんど法隆寺の脇にあるといってもいいぐらい近い。
ああ、斑鳩にいるんだなぁ、って感じが嬉しかったです。そのことは引率し
てくれた方には、言い忘れたかもしれないや。

(中へは入れませんでした、石棺は奥のほうに見えました、ライトアップ

 されてたのかな。 覗き込んでいるのは引率者)

(下はありふれた写真です)

 

歩き回りは早めに切り上げ、JR奈良駅の近くで少し呑んで帰りました。
次はどこかな。纏向遺跡なんて気になるなぁ・・・なんて。

 

そうそう、忘れるところでした。
境内には桜の木もたくさんありましてね、どうしてもクビアカツヤカミキリ
の影響があるのかどうか気になって、ついつい幹の下の方を見ていたのです。
もう「時期」から3カ月近くたっていて、風雨や清掃でフラス(ヤツラの幼

虫の出した木屑)はたいてい消えているものなのですが、見つけました。

法隆寺さんも大変だ。(お坊さんたちもカミキリムシ、殺したはるんやろう

か?)

残念ながら、奈良県もしっかりやられているとわかってしまった。

《現代日本の作曲家》 間宮芳生作品集

20221022(了)
現代日本の作曲家》

間宮芳生作品集

(1)歌曲集「郵便切手」(1992) 12:39
   (ヨアヒム・リンゲルナッツ詩/板倉鞆音訳)
   ①公園にて 3:18
   ②郵便切手 4:07
   ③新しき遠景 3:08
   ④真田虫 2:04
     竹沢嘉明(vo.)、水野佐知香(vn.)、吉沢実(クラムホルン、リコーダー)
     つのだたかし(リュート、ūd)
     録音:1993年11月 神奈川県立音楽堂(ライブ)

(2)弦楽四重奏曲 第2番「いのちみな調和の海より」

     (1980) 19:28

   ⑤Andante 7:24  ⑥Presto 4:25  ⑦Adagio Lamentazione 7:30
     安田明子(vn)、桐山建志(vn)、白尾偕子(vla)、安田謙一郎(vcl)
     録音:1993年11月 神奈川県立音楽堂(ライブ)

(3)尺八とチェロのための「KIO」(1988) 

   ⑧14:24

     阪田誠山(尺八)、エルッキ・ラウティオ(vcl
     録音;1993年5月 浜離宮朝日ホール(ライブ)

(4)合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画

     (1966) 17:36

     混声合唱コントラバス(2)、打楽器(2人)のための
   ⑨アンダンテ 4:55   ⑩アレグレット 4:53   ⑪アレグロ 2:19   ⑫アレグロ 5:18
     東京混声合唱団、間宮芳生(指揮)、小島光(perc)、加藤訓子perc)、
     吉田秀(b)
     録音;1995年10月、静岡音楽館AOI(ライブ)
 
     CD/現代音楽/フォンテック/邦盤/中古
     <★★★>

ライナーの解説は、作曲者自身のもの。
読んでもよくわかりませんでした。
作曲家の紹介的なもの、ショーケースのようなシリーズなんでしょう。
もっといろいろなジャンルに興味を示し、実際に色々な作品を残されたかた
なので、このアルバムくらいじゃいくらも表出されているわけではないので
しょうから、その意味ではちょっとは不満を覚えたものの、このなかでどの
タイプの作品がワタシに楽しめる楽しめないという傾向が少し分かったとい
うのが収穫・・・

 

(1)歌曲集「郵便切手」 

① 小さな小さな鹿が・・・

ヴァイオリン一台のつぶやくような伴奏で、公園の鹿を描写。石膏だったっ
ていう。
② ・・・恋が芽生えたが、用事(旅)があったんで、キスは返せなかった
・・・ 男声の裏声やクラムホルンが使われる。
③ 成層圏の入り口の左側に廊下があって・・・暗闇ばかり・・・
歌以外はリュート(あるいはウード)とヴァイオリン。
④ サナダ虫の状態が非常に悪かった・・・おしりが痒かった・・・
うーん、サナダ虫なぁ。クラムホルン、ヴァイオリンなど。
 調性のない音楽が、滑稽というしかない詩に貢献しているらしいが、ワタ
シにゃ何が面白いのかさっぱりわからない。詩がどちらかというと苦手なワ
タシだから余計にそうなのかもしれない。感興らしいものとは全く無縁でし

た。これ、予備知識なくていいのかねぇ。何べん聴いてもアキマセンでした。

 

(2)弦楽四重奏曲 第2番

上の歌よりはなんぼか面白く聴けました。残響がえらく短いので、ギスギス

感はありましたが、これぐらいなら、聞き慣れているというか、抵抗感はな
かった。ただし、サブタイトルの意味はわからない。⑤はポリネシアのパン
パイプの音楽に、⑥のピツィカートの楽章はザイールのシロフォンの音楽に、
⑦はフィンランドの「泣きうた」に、それぞれ紐づいているという。元々は
どなたかの思い出に捧げた「悲歌」なんだそうな。わかっても、だからどう

なの?という感じ。(1)と(2)は同じライブでの録音のよう。

 

(3)尺八とチェロのための「KIO」

KIOというのは敬愛する詩人の名だそうな。

この曲が一番面白かったですね。「自己凝縮」がどうのと言っているのは、
まるでわからんが、チェロと尺八がある一定の方向を向きつつ、インプロ
ヴィゼーションをやったら、こんなに合うというか、響き合うというか、
意外な発見でした。つまりは相性。インプロヴィゼーションじゃなく、ち
ゃんと根っこが民謡みたいな音楽の楽譜がちゃんとあるんでしょうけどね。
チェロのほうは、和風じゃなくむしろ洋風というたたずまいなのに。

この録音はよかった。

 

(4)合唱のためのコンポジション第5番

                 「鳥獣戯画

ワタシが間宮を知るきっかけになったのは、合唱のためのコンポジション

一曲で子供の領分というもの。子供の合唱とオーケストラで、万人向き。
わらべ歌がぎっしりと詰めこまれていて、オケ伴の音質がちょっと寂しいが、
聴きやすく非常に楽しかった。LPも当時人気があったはずです。
ところが、作曲者ご本人は西洋音楽からのいただきが多いとかなんとか、気
に食わない作品だと言ってらした。ドッチラケでした。(もう昔のことです) 
でもワタシ、この曲、今でも大好きです。
さてこちらは、基本的なエレメントとしては民族音楽と仏教音楽からの引用
ですって。
⑨では、引用の一つ「東大寺二月堂のお水取りの法要のうた」があって、お
水取りは何度か行ってますから、ああこんな感じだったっけ、なんて。
⑩ではジャズのベースとドラムスの掛け合いみたいな音が出てきて、思わず
耳をそばだててしまったが、歌は民族音楽というより日本の民謡系。
⑪子供の合唱風だけど大人の女声。それにわざとらしい古風な笑いが挟まれ、
あの戯画の感じ(笑い転げるカエルやウサギ?)を出しているよう。
⑫ジャズのベースやドラムが聞こえたりもするが、ここは「お祭り騒ぎ」ふ
うな表現で締めます。
音質は良好でした。

 

ここではワタシは(3)とかろうじて(4)ですかね。
(4)はあのわざとらしい笑い声が引っかかってしまった。
(2)のクァルテットは、音があんなにデッドでなければ、印象はきっとだ
いぶんよくなるとは思います。

 

9月の鑑賞予定分、やっと終わりました。

 
発売年は不明。
古風なことに、ジャスラックのシールが貼ってある。フォンテックだから
「そう」なんだ、というわけでもなさそう。
たくさん書かれ、たくさんの評価も受けられた方だけれど、ワタシはよく

わからない。好きと言えるのは、今のところ合唱のためのコンポジション

子供の領分』だけ。寂しい話です。

 

映画『モンタナの目撃者』

山火事こそ主役!

20221019(了)

映画『モンタナの目撃者』

  テイラー・シェリダン監督//アンジェリーナ・ジョリー/フィン・リトル
          エイダン・ギレン/ニコラス・ホルト/ジョン・バーンサル
  音楽:ブライアン・タイラー
  2021年製作/100分/米映/原題:Those Who Wish Me Dead
  DVDレンタル
  <★★★>

重大な秘密を握っていた父親が、身の危険を感じて、息子である少年をせか
して車で逃げ出す。その追手はプロの暗殺者二人に任され、最初のカタスト
ローフは逃げた父子の父のほうが子(コナー)の目の前で殺されること。
一方、森林消防隊員であるハンナは気丈な性格ながら、数年前に山火事です
ぐ近くにいた少年3人を、自分が風を読めなかったせいで助けられなかった
というトラウマを抱えていて、強がっている割には煮詰まっている。
少年コナーと消防隊員ハンナに接点ができて、、、という読みやすい展開の
ストーリーとなる。
山中で逃げるハンナとコナー、追う無慈悲極まりない殺し屋二人、そして殺

し屋が引き起こした山火事が通せんぼをする。すごい火事の描写でした。と

いうか、、、どう映されようと、恐い。

そのほか、地元のシェリフ(白人)と彼の身重の奥さん(黒人)が絡む・・・
 
殺し屋が目くらましのために起こす山火事は、一応理由はわかるのだが、コ
ナーの父親(会計士?)が抱えていた秘密がどういう類のものなのかが、ワ
タシにはわからなかった。(コナーが父親に渡された紙切れ以外に暗示する
ようなもの、あったっけ?) なんらかの不正経理が絡んだものらしくて、
それでなんだろうと一応納得しようとはしたんですけどねぇ。
殺し屋が途中で会う人物が、ワタシには殺しを請け負った会社の人間ぽく見
えたこととか、殺し屋二人がすっきりと着こなしたスーツにFBIのでかいバッ
ジを付けた格好(勿論それは偽物だろうが)が結構様になっていたこと、な
どからどうも混乱しましてね。あの猛烈に殺しまくる殺し屋を雇うとしたら
一体誰? 中身がもうちょっとわからないとなぁ。
国や大企業が絡むなら、絶対に目立たないようにやるだろう・・・どんなも
んでしょうか。
ジョリーの「トゥームレイダー」だとか「ミスター&ミセス スミス」のようなマン
ガじゃなく、サスペンスはなかなかイケてたのに、残念。
映画の最後ではその秘密が暴かれることは自明の理だったので、ストーリー
の中ではそれでいいんだけどね、それじゃ片手落ちじゃない?
 
コナー役の男の子がどんどんよくなりました。いい演技だったと思います。
 
ブライアン・タイラーの音楽は、これまで同様無機質だけれど、なかなか頑
張ってはいました。

 

 評を読むのは好きなのに、自分ではしっかりした選び方はなかなかできま

 せん。たまには選びますけどね。

 でもまあ週に一本のエンタメを適当に店頭で・・・
 準新作が旧作扱いになったというコーナー(あまり意味ないと思うんだが)
 に、ジャケットが見えるように置いてあったので、手にとることになりま
 した。いつも通りの安直な選択です。カミサンの選び方にケチをつける資
 格は全くない!(というか、往々、逆にケチを付けられる)

 しかし、このごろのレンタル屋の在庫の痩せ方が(やっぱり)腹立たしい

 ・・・ 職場の近所のTSU社はなくなっちゃうようですし。

 

 思い出した。面白い「ワイルドライフ」という映画でも、山火事がちょっと

 出て来まして、ここもモンタナだったのですね。

タンスマン(1897-1986);交響曲集 Vol.1

20221018(了)

タンスマン(1897-1986)

   交響曲集 Vol.1-The War Years

Alexandre Tansman; Symphonies Vol.1

  交響曲 №4(1936-39) 21:13

               ①8:26/②5:00/③7:36

 交響曲 №5(1942) 26:26

       ④6:50/⑤5:31/⑥5:41/⑦8:11

 交響曲 №6 ‘In Memoriam’(1944) 20:14 premiere recording

       ⑧6:47/⑨.3:08/⑩3:56/⑪6:24

  オレグ・カエターニ指揮/メルボルン交響楽団
  メルボルン合唱団(⑪)
  録音:2005年9月、豪、メルボルン、モナシュ大学、ロバート・ブラックウッド・ホール
  2006年/CD/管弦楽/Ⓟ&ⓒ Chandos Records(Super Audio CD)/中古
  <★★★★☆>

なんとも素敵な交響曲集で、この前の分と、この後の分が出ているほか、室
交響曲ふうな1枚もあるみたい。まあおいおい。
それにしても、この素敵さ、何と表現したらいいのか、正直わからない。音
色だけが好きというわけでもないんでしょうが、悩ましい。以下、うだうだ
書いてみます。
 
このスーパー・オーディオCDという録音のせいもあるのか(いや、きっとあ
ると思うが)、非常にふっくら、ふんわりしている。その柔らかく繊細な弦

で始まるこの4番。いいホールでもって、オケのすぐぞばで聴いているみた

い。

交響曲 №4;

アダージョで始まっていくつかの曲想、テンポを経て、第一楽章らしく盛

り上がって終る。勇ましいというんじゃなく、淡いロマンティシズム。
②Tranquillo。要するに静かなアダージョで、濃厚でないあっさりした甘味が、
通り過ぎる。割と単純な楽章。5分があっという間。
③第4楽章がなく、楽し気なアレグレットで終わり。こういうところは新古
典と言われてしまうんだろう。木管によるリズミックなアンサンブルが頻繁
に出てくる。かなりカラフル。オーケストレーションのうまさがよく表れて
いる気がする。都会の、、、パリじゃなく、アメリカかなぁ、街の雰囲気だ

ろうか。深いものじゃない、ファンタジックな美しさが心地よい。力まない

盛り上がりでスマートに終わる。

 

交響曲 №5;

4番でアメリカの街と書いたけれど、この5番のほうこそが、アメリカ時代

の代表的な作品らしい。
アルバム全体が「The War Years」とある。タンスマンで今まで聴いた曲で戦
争を思い起こさせる曲はほとんどなかったと思うけれど、この5番の始め④
なんかは、あるいはそうかもしれない。レントからどんどんテンポが上がり、
強奏が増す。でも、あられもなく叫ぶようなことはない。ミヨーのような音
がセーブをかける。
アメリカでの余情や中西部のまどろむような・・・素敵なインテルメッツ
ォ。途中で少し激するも、過ぎた嵐のように忘れてしまう。
⑥どこかで聞いたことのあるような音色が混ざるスケルツォ。このリズムは、
どれもこれもストラヴィンスキーで聞いたもののアレンジみたいな気がする
なぁ。
⑦フィナーレは管の咆哮と牧歌みたいなのとが交互に出てきて、ひとまずは
落ち着く。それからは曲想が目まぐるしくどんどん入れ替わって行く。フー
ガ風なアメリカや、ショスタコーヴィチの戦争の匂うスケルツォみたいなも
の、、、でもね、大騒ぎにはしないで、フッと力みを解いて終わる。独特。
 

交響曲 №6;

⑧低く柔らかい不協和音から始まって、連想するのは、たぶん誰もが「春の

祭典」「詩篇交響曲」その他のストラヴィンスキーだろうと思う。ふんわり
と、なんともうまくデフォルメするもんだなと、舌を巻く。
もっとも、サブタイトル ‘In Memoriam’というのは、いや増すフランスへの
思慕を指しているようなんだけれど。でもまあ、ストラヴィンスキーはここ
にいる。

⑨弦楽だけの楽章で、鋭い音を挟みながらも、快活さが心地よく、後半のカ

ルテットによるレントも爽やか。

⑩ほとんど続いて奏され、第二楽章のビジーな調子を持ち込む。フルオケに
戻っている。密やかで尖って不穏さがある。大事な部分のような気がする。
フランスのオーベルニュの歌で聞き覚えのある民謡のメロディで締めくくる。
⑪和声もメロデイも、どうもストラヴィンスキーで聞いたような合唱で始ま
る。歌詞の翻訳がないので意味は全くわからない。横文字を眺めていると、
第二楽章⑩の追伸のようなもんじゃないかとか、無益な戦争を悲しんでいる
んじゃないかとか書かれているみたい。そんな気は全然しない。カッコいい
し極めて美しい。

       (マンガっぽいストラヴィンスキーの隣にいらっしゃる)

ある鑑賞記によると、指揮者がロマンティックな面を上手く表出できていな
いんじゃないかという。なるほどね。だけれど、そもそもそんなにロマンテ
ィックな面を強調しなくちゃならん曲たちかね?
 
イギリス風な叙情、フランスの素敵な和声、R・シュトラウスで聴かれたよ
うな木管アンサンブル、もちろん色んなストラヴィンスキー・・・それに、
アメリカっぽい音も確かに混ざったような気がしました。
欧米の当時の音楽をできるだけたくさん吸収して、自分なりに消化し再構成
してみたといったふうなので、「個性は?オリジナリティは?」と訊きたが
る向きも多かろうが、こんな見事な咀嚼って、そうそうはあれへんで!
そう、例えば、全体を覆っている独特のファンタジックなムード、なんての
は、どうだろう、個性なんじゃないかなぁ。
 
いずれも素敵な曲でした。ワタシの場合、音色が先かなぁ。
録音もよかった。シャンドスがオーストラリアまで出向いて録ったもので、

しかも Super Audio CD だってのも効いているんだ。(メルボルン響って、

岩城宏之が常任指揮者をやっていたオケですよね)

モロ好み。これほど「瑕のない好み」はあまりないですね。

映画『アンビュランス』

20221015(了)

映画『アンビュランス』

  マイケル・ベイ監督//ジェイク・ギレンホール
           /ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/エイザ・ゴンザレス
  音楽;ローン・バルフェ
  2022年製作/136分/PG12/アメリカ/原題:Ambulance/DVDレンタル
  <★★★△>

兵士としてアフガニスタンでお国のために尽くしたのに、その後はそれらし
い扱いや待遇がなく、家族の重い病気に保険がない(利かない?)もんだか
ら困り果てている男ウィル、黒人。わけあって彼とは兄弟と思い合っている
犯罪で生きる(殺人はしない建て前の)男ダニー、白人。
ウィルが金に困ってダニーを訪ねると、ダニーは銀行強盗をする直前で、こ
れにウィルは巻き込まれてしまう、という今どきどうなんだろうと思ってし
まうスタートのお話。用意は周到らしいんだけど。
それが、さすがに一筋縄ではいかない展開になる。まあそうでないと時代錯
誤だもの。(イヤ、十分そうだったかも)
お約束通りのように、すんなりいかなくてひたすら逃亡し、官憲がどんどん
でかくなりながら追いかける。そこに絡むのが救急車1台。その内の救急救
命士の女性、出くわしてしまった警官二人のうちケガした状態で拉致されて
しまったほう、それに警官隊を束ねるリーダー、ダニーをよく知るFBIの上級
職らしい男。
主なキャラクターはこんなところです。
 
この救急車による逃亡劇が凄まじいのですな。
ダニーを演じるのがギレンホールというビッグネームで、監督がマイケル・
ベイなのだから、どこにウェイトがかかってるのだろうと思ったら、もうモ
ロに逃亡劇自体。人物構成もその絡ませ方も確かに上手くできてはいるんだ
けれど、特にカーチェイスシーンの撮影の工夫には目を見張りました。
あとでわかりました。随所で最先端と言っていいドローン撮影を駆使したそ
うな。わかっているようなものではあるのですが、もう、ドローンでこんな
ことができるのですね。CGでもできるような気はするんですが、どうなん
でしょう、ちょっとわからない。劇場のでかい画面で観ないと、この作品を
ちゃんと楽しんだことにはならないかもしれない。
昔、シネラマのデモンストレーション映画の「これがシネラマだ!」なんて
タイトルのものを観た時―― 高校生ぐらいだったでしょうか ――まん中じ
ゃない、脇のほうの席で観ていた記憶があります、それがいけなかったか、
ワタシ、気分が悪くなってしまい、外へ出てゲロゲロやった。そのことをね、
フッと思い出させられました。(ちょっと古かったですね)
 
音楽はローン・バルフェというかたで、ハンス・ジマーの組織に属している
作曲家のよう。まあこの映画で凝った音楽を付けるなんざ、勿体ないとは思

うけれど、・・・いつもの書き方、映画抜きで聴くのは無理、ということで

いい。

時代小説「物書同心居眠り紋蔵 わけあり師匠事の顚末」

20221014(了)

わけあり師匠 事の顚末 

 物書同心居眠り紋蔵/佐藤雅美

  ㈠ 密通女の思う壺
  ㈡家督を捨てる女の決意
  ㈢真綿でくるんだ芋がくる
  ㈣にっと笑った女の生首
  ㈤御奉行に発止と女が礫を投げた
  ㈥牢で生まれ牢で育った七つの娘
  ㈦霊験あらたか若狭稲荷効能の絡繰
  ㈧手習塾市川堂乗っ取りの手口
 
   2017年5月/(連作的)時代小説シリーズ/文庫本/中古//(2014年単行本)
   /講談社
   <★★★★>

佐藤雅美(まさみ/まさよし)が2019年に突然亡くなった時、朝日新聞の死
亡記事があまりに小さいのにビックリしたことは、妙に強く覚えてますねぇ。
このことはその頃にも書いた気がしますが・・・
 
そもそも時代物のシリーズはいくつか読んだ程度で、それも、佐藤の居眠
り紋蔵ものと池波正太郎のシリーズつぐらいだったでしょうか。始めの2,3
冊を読んで続かなかったのはいくつもあります。藤沢周平は好きで、ずい
ぶんたくさん読みましたし、中の連作ものは皆読んだと思います。
この居眠り紋蔵ものは、続いたが読み方がゆっくりだったものだから、ヘン
に残ってしまって、気になってしまいましてね、積読を始め、時々読み、今
回最後(多分)の三冊のうちの一冊に取り付いたところ。といっても、後の
二冊なんていつになるやら。傑作かどうかなんてよくわかりません。でも、
馴染んでしまったシリーズものなんてそんなもんじゃないですかねぇ。
第13卷目。(残りを読んでも、多分「完結」なんてことはないんだろうな)
 

の密通する女の不倫なんて、いわば見え見えのもの。苦し紛れについた嘘

(強姦されたなどという)や芝居が、はじめ、意外なまでに通じてしまって、

訴訟に発展する。役所としても捨ておけず紋蔵のいるセクションを大いに悩
ませる。もっとも結局は密通なのだ。本来は死罪。しかしながら実際はそれ
ほど厳しいことにはならないケースが多かった。とはいえ、今で言う刑事事
件扱いなので、死罪の確率もそこそこあったとも言われる。
案の定バレて、あれで死罪は可哀そうだなぁという大方の見方で、役所の皆
も意気上がらない。いつものように物書き同心で判例など文書に強い紋蔵は、
頼られてお歴々の命を受ける。過去の判例などから知恵を絞って出した紋蔵
の策(実際に捜査もさせられてしまう)が実った形になる。結果、女は死罪
にはならず、それでもなかなか厳しい判決を受けるのだが、なんとなんと、
それがちゃっかり彼女の思いを遂げさせてしまうことになる。
明るいといっていい話で、錯綜ぶりが楽しい。いいですねぇこういうの。
ここでの紋蔵の居眠り(ナルコレプシー阿佐田哲也のそれを学生時代から

知っていましたので、ずっと前はハハァあれかぁと思ったものです)の記述

はなし。

 

は、大店でもって、死人を前にわぁわぁ遺言や相続の話で侃々諤々の大

盛り上がり、という出だし。これで役所や紋蔵がどう絡むんだい?

・・・ははぁ、名主が役所に相談に来て、念番与力の筆頭が、部下である紋
蔵が詳しいはずだと呼びつけるのね。ムードは暗くないものの、いやいや、
これも難しい。それに、紋蔵にはもうひとつ問題が持ち上がりそう・・・
本編の難問はこんな感じのもの・・・
 「幼少の娘に跡を継がせ、弟を後見人にするという内容の遺書を書いたの
 が十二年も前のことで、当人はその二年後に後添えを貰い、あらたに娘二
 人が生まれた。そしてこのほど、死去した。その場合、十二年前に書いた
 遺書は有効か無効か、どちらなのでしょう?」
こらぁ揉めるわ。
 

 正直な道具屋(古物商)の手代が、「真綿でくるんだ芋」と言っていい

娘を娶らせられることになる。持参金100両も付けてなので、そんな「芋」、

つまりブスなんだと、大弱り。そんなの嫌だ! というところに、大大名の納
戸役が処分に持ってきた掛け軸の一つがとんでもない貴重なものだと判明し、
持参金のために嫁など貰わなくてもいいじゃないかと喜ぶが、ことはそんな
ふうには運ばず、、、というやはり明るい調子の(けっこう素敵な)話。こ
こでは紋蔵はその名が一度出ただけ。こんなのもあるんやね。
 

牢内で生まれ、7つまで牢内で育った女の子が見つかってしまう。とこ

ろがこの子、不思議な「福」をもたらすことが知れ渡り、とんでもないとこ

ろにまで波及する話。ぷっ!と笑える、ユーモア譚の類。
いろんな部屋がある牢屋の蘊蓄が珍しかったのですが、長くて書き写すのは
さすがにメンドクサイのでやめときます。
かわりに、、、ここでの小伝馬町の牢には女牢も当然あったが、女性の犯罪
者は男の十分の一ぐらいで、あった牢もその程度だったらしいが、込み具合
は男牢と変わらず、「ぎゅうぎゅうに詰め込まれて、夜は折り重なるように
して寝た」そうな。牢の係は皆男。女牢にはほとんど入らなかったというん
で、女の子がいるなんて妙なことになった。
母親が首を刎ねられた後、牢名主(女牢にもいたんだね)が世話をし、首を
刎ねられたら、また次の牢名主に世話が引き継がれて、なんてことが何回か
繰り返すうちに、女の子は7歳になっちゃう・・・

(これは通奏低音に当たる話のほうの紹介ですね)

 

寝る前に一篇づつというふうな読み方。紹介はこの辺でやめておきますが、
佐藤さん、「紋蔵」に関する作風や調子が変わってきていたんですかねぇ、
なんとなく暗さも重さも減って、イメージが違ってきた気がする。
かつてのような大事件が起きそうな感じはありません、わかりませんけど
ね、でも淡々としてはいても、おもしろそうではあります。
そうでした、本卷の通奏低音的なものは、紋蔵とは知り合いの女性が運営
している塾の塾長のような男が抱える問題で、藩(広島だったかな)のお
家騒動にまつわることと、各章毎のごたごた。これらが別々に流れて行き
ます。そして最終話では、別々の事件であったものが、急転直下ドッキン
して終りました。
 
居眠り紋蔵の映像化は、いいのがあったら観たいのだが、舘ひろしのもの
が過去にあった(多分テレビドラマ)程度で、他は知らない。話が地味だ
からなぁ、映像化するとしても、古いものじゃないといかんだろう。ドラ
マチックな内容も家族の変動なんかも、もうしばらくないもんね。
どちらかというと背はちょっと低め、細身で、風采上がらず、必要な時以
外はあまりしゃべらない。お役所の物書き同心。武士の人生としてはあま

りいい目に遭ったことはないものの、いろいろあってせわしなく、かつ決

して暗くはない。

とても知能指数が高く、なのに、と言ってはヘンかもしれんが、極めて生
真面目。持病はナルコレプシー。突然、ことっと眠りに落ちる。(阿佐田
哲也=色川武大さんの如く) もっとも、その表現はどんどん減ってしま
いました。いつものように居眠りをしていると・・・といった描写のあと、
上役からのお呼びがかかったりする程度。
ワタシがピッタリだと思った役者は、「七人の侍」に出ておられたころの
宮口精二さんなんですけどねえ・・・
 
この紋蔵の名字は藤木といい、ご近所にもこの名字のうちがあります。実
はこの方もなかなか紋蔵さんのイメージに合うのです。しかもこの方の家
でも柴犬()を飼っていて、ウチのコ()と姿かたちもそこそこ似てい
るなんてネタまである。だったら話だって合わせられなくもない。
でも、話したことはありません。だからひととなりも存じあげません。飼

い犬に注ぐまなざしがものすごく優しい!それくらい、かな。ああそれと、

夜遅くにも散歩される・・・

通りかかるとき、たまに「紋蔵さん、今日の散歩も夜ですか?」などと頭

の中で話しかけつつ会釈するだけ。(嘘っぽいですかね、でもほぼホンマ

です)

身近な話に脱線しました。いつも気にしつつメモしたことがない事なんで、
こりゃあ、良い脱線になったかも。