休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ペルー「アンデス、ふたりぼっち」

20251128(了)

映画『アンデス、ふたりぼっち』

  監督・脚本・撮影;オスカル・カタコラ
  2017年製作/86分/ペルー/原題:Winaypacha/
  劇場公開日:2022年7月30日/PrimeVideo
  <★★★★>

製作されてから劇場公開まで時間がかかった映画のよう。3年以上前に新聞
で見かけ、興味をひいてメモっておいたもの。
人間は完全に夫婦役の二人だけ。いったいいくつぐらいの方々なんだろう。
80歳過ぎぐらいかな。老いの演技ったって、お二人は十分老いておられる
ようにお見受けしたから、肉体は演技じゃない感じ。セリフは完全に素人で、
年寄り声で棒読み。大丈夫なんかいな、と思っていたら、知らん間に気にな
らなくなってました。
他には羊が五頭ぐらい、大きなリャマ(アルパカをでかくしたようなの)が
一頭、犬一頭。それだけ。
 
アンデスのどこなんだろうと思ってはいたんですが、ポスターじゃペルー。
それも標高5000mを超えてそうなあたり。平らな鞍部のようなところに、石
組みの小屋が二つ。一つが住まい。氷河から溶け出した流れがあちこちにあ

りました。この平らなところには普通はあまり雪は降らないみたい。でもな

いのかな。会話にあった「畑」は見えなかった。
アイマラ」という文化や言葉なんだそうな。なんだかアメリカ映画のイン
ディアンの言葉に似ているように聞こえましたね。
寒そー!そして、村はこの二人(の体力)にはすでに十分に遠い。
氷河がすぐ近くに見える。カラッと爽快に晴れた時よりは、むしろ雲や霧の
中といった暗い景色が多い。それはそれで充分深みがあって壮大ですごいと
言っていい景観なんだけれど、こりゃ厳しすぎる。
 
祈りに満ちた生活なんだなぁという感じのスタートなんだが、いやいや、と
んでもない。お互いに頼り合い励まし合って過ごしている2人に(最終的に
は動物たちにも)、次から次へと艱難辛苦が迫り、どう見ても平穏が続きそう
もない。精一杯生きているのはわかるものの、体力の限界をとっく越え、危
険に(二人は不運と表現する)晒され続ける。スリルという表現をどこかで
見た気がするが、そんなもんじゃない!
息子がいたらしく、二人は切に待つ。特に妻のほうが夢に見て、来てくれそ
うだとか、時に見捨てたとか言う。(悪いほうは、裸で走る息子が濁った川
に落ちる夢を見た、とかいった表現) もっとも、一度、夜、赤子のミイラ
みたいなのが映って、生きた息子がいるのかどうか怪しく思えてくる。

マッチがなくなるあたりから、状況はさらに一気に悪化。
ともあれ、ここで生きるというのが二人りの選択だったのだから致し方ない、
引き返せる段階はもう過ぎてしまっていた・・・ 
観ているのがつらくなってきました。そして、おしまいのシーン。あれはい
ったいどういう意味なんだろう・・・
ちゃんと最後まで観ましたよ。珍しくカミさんも一緒に。
極端な状況下のドラマ。むき出しの「老い」というものを意識せずにはおれ
ないインパクトのある作品でした。

                この暗さ・・・

 

(気分をかえて 付録)
こういう映画だと、音楽はポロンポロンと、少しだけ鳴っておればいいので
すが、わぁわぁ鳴らすものについては、一工夫ほしいことが多い。こりゃあ
音楽映画か!と嫌味を言われてもいいから、こだわりがあったほうがいい。
12/4のお昼過ぎの映画(NHK-BS)の始めところがちらっと目に入りまして、
食卓を片付ける手を止めて2‐3分眺めていたら、『ペイ・フォワード』。少
ハーレイ・ジョエル・オスメント君が自転車に乗って、寂れたような街は
ずれを妙に考え深げに観察しながら進んでゆく・・・ まあそこまでで別の
ことをし始めましたが、印象的というか懐かしいというか、音楽がトーマス
・ニューマンのもので、ああよく聴いたヤツだなあ、と。非常にセンスのあ
るシンセ中心の音楽。勿論アコースティックも用いるんだけれど。
最近見る映画では、ここまで素敵に感じる音楽には出会えていないなぁ、な
んて思ったもので、ちょっと追加したしだい。