休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『北の果ての小さな村で』

20210129(了)

映画『北の果ての小さな村で』

   サミュエル・コラルデ監督//アンダース・ビーデゴー
   音楽;エルワン・シャンドン
   2018年製作/94分/フランス/原題:Une annee polaire/DVDレンタル
   <★★★★>

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 グリーンランドでの話。本国デンマークで代々農家をやっている家の若者
が、思うところあって教職の免許を取り、国に願い出て、あろうことかグリ
ーンランドの北のほう、住民80人の村に教師として赴任する。
 7-8歳から10歳前後の子どもたちを教える。10人もいない。さすがに
暖房は完備しており、明るく立派な校舎には官給品だろうパソコンなんかも
見えるが、そんなことより、とても朗らかな子どもたちには勉強する気がほ
とんどない(みたい)。意思疎通そのものも難しい。住人に通訳のできる人
もいるものの、教室には当然いない。そもそもここへ来るとき、教育関係の
役人らしいバアサンには、確かグリーンランド語を覚えることなんか必要な
い、デンマーク語を教えればいいんだと、申し渡されていた。これは観てい
るほうだってえらく引っかかる話。で、やっぱり言葉は障壁。教えることな
んかできない。試行錯誤の毎日。
 そして実はもっと難しいのが子どもの親たちや祖父母たち。デンマーク
の必要より、そもそも教育の必要性を基本的に認めていないし、「本国」へ
の反発心が非常に強い。故に教師は無視され続ける。この若い教師が80人
の村の中で、どんなふうに入り込み打ち解けて行くかを描いている。
 この教師役の方は本名なので、役者じゃないんじゃないか。とすると、全
員役者じゃないってことなんやね。
 
 煮え切らないドラマがあって、問題点を見せてくれるものの、どう収束、
解決していくのか、いちいち最後まで説明的に見せることはしない。
 そんなことやってられないという感じ。圧倒的に迫る自然の凄まじさや厳
しい命のやり取りを前に、デンマーク語がどうの、なんて言ってられない。
 そのことは、この映画が始まって、教師が村へやってくるときの景色、無
数の氷が浮かぶ海をちっぽけなボートが進んでいくのを、カメラが上から追
いかけていくのですが、まずその迫力に言葉を失ってしまったことだけでわ
かっていたようなもの。
 海の向こうには峩々たる山々や氷河。その規模感と共に非情さが猛烈。
人がこの中で生きて行くって言うなら、優先順位は見直さないといけない。
ま、基本的に、ここからのスタートなんで、とりあえず、ちまちましたこと
(≒うじうじしたこと、微妙なニュアンスのこと)は言っておれない。

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 グリーンランドも温暖化の影響を受けてどんどん氷河が融け続けており、
資源開発の波が当然押し寄せていると聞く。人もたくさん住むようになる。
 もう犬橇で出かけ狩りだけで生きてゆくなんて生活が長く続けられるはず
もない。8歳のモンゴロイドの男の子だって、すぐそこで理論武装が必要に
なる。
 シベリアの永久凍土が、かなりの勢いで融けてきていて、封じこめられて
いた温暖化を進めることになる気体がガンガン開放されているわけだけれど
・・・グリーンランドもそういうのに並ぶ問題を作りそうな気がする。ここ
は大陸並みの大きさ。
 そんな環境問題ふうなことを想像すると、悲しいけれど、ひとまずはこの
景色や、バアサンがアザラシをささっと捌く様なんかを記憶に焼き付けるし
かないでしょうかねぇ。
 ワタシにはこんな寒いところはとんでもないが、景色にだけは偽りなく、
圧倒されっぱなしでした。