休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

METライヴビューイング2024-25 から

  (オペラの録画を映画仕様で楽しむ)

20250703(了)

リヒャルト・シュトラウス

:歌劇『サロメ

  サロメ・・・エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー(sp)

  ヨカナーン・・・ペーター・マッテイ(bar)
  ヘロデ王・・・ゲルハルト・ジーゲル(ten)
  ヘロディアス・・・ミシェル・デ・ヤング(ms)
  指揮;ヤニック・ネゼ=セガン/メトロポリタン歌劇場管弦楽団
   ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 上演日:2025年5月17日
   オペラを映画館で(7/3 於;なんばパークスシネマ)
   <★★★☆>

 

舞台ではワーグナーと似たり寄ったりで、間持たせに頭の中である種の操作が
必要なことが多いのが、ワタシにとってのオペラ。R・シュトラウスなら『ば
らの騎士』だと結構演劇的にも無理がないのですが、『ザロメ』は観たことが
なかったので、ちょっと心配だった。音だけなら平気だったのに、、、心配は当
たって、やっぱりワーグナーの親戚筋。衣装は一応近現代風で、演出も新しい
ものなんだろうけれど、演技をしていないキャラがそこそこ多いこと!
 
サロメは何と言っても本来キリストの時代のヘロデ大王の娘で、ひねくれて異
常。相当なイカレ女なので、王の娘以外じゃ許されるはずもない色欲に満ち性
悪な言動を、オペラはストーリ―とも言えないお話(原作はオスカー・ワイル
ド)にまとめている。
その辺をおさえて観聴きしたわけだけれど、先にも書いたように現代風衣装は、
エロっぽくないし(キリスト教圏としてのアメリカが比較的嫌うんやろうね)、
サロメの分身みたいな女の子が小学校から大学生ぐらいまでのが6人ほどもい
て、サロメに付きまとい、様々な動きをするもので、目を奪ってはくれる。そ
の一人はバレエの素養もあって大活躍だった。
でもどうでしょうか、全体としては成功していたとは言い難いんじゃないか。
もとがもとだから新演出ったって難しかったんでしょうな。
サロメ本人だって、絵画から出てきたような薄物を着てほとんど気がふれたか
のごとき目つきや振る舞いをする、なんてイメージとはかなり遠い。(つまりワ
タシのイメージってことです)
この歌劇の中では、これだけほとんど浮いた感じの「7つのヴェールの踊り」も
女の子たちを使って、(その必要があるかどうかはともかく)エロっぽさは感じ
させなかった。
 
肝心のヒーヴァー/サロメについても、体格が大きくがっちりした感じで、ひ
ずんだ色欲の持ち主には見えず、こういってはヘンかもしれないが声量豊かで
力強く健康的・・・ 疲れを知らぬ感じ。歌唱は非常に正確で暗さはなく、そ
の限りにおいてニュアンスだってちゃんと使い分ける実力の持ち主のようで
した。
 
バプテスマ(洗礼者)のヨハネに当たるヨカナーンを歌ったP・マッテイさんへ
の拍手が、ヒーヴァーさんに次いで多かったみたいでした。いでたちは半裸で
鎖に繋がれており、後半は首なし死体になっちゃう。ワタシには歌唱の良し悪
しはよくわからなかったなぁ。それよりはかわいい顔つきのヘロデ王/シーゲ
ルさんのほうが好みでしたね。
 
ネゼ=セガンのオケのドライブ感も、ヒーヴァー/サロメのどこか明るく(!)
切り替えて行く感じと合っているというか、微妙なニュアンスよりはスッキリ、
てきぱきと鳴らしていた。パワーは十分でアンサンブルも十全。管弦楽曲とし
てよく聴かれる「7つのヴェールの踊り」など、もっと外連味が欲しいという
向きもいるに違いありませんが、なに、ワタシはあれでよかった。
 
ま、オペラには経験不足のワタクシメのことですから、勘違いしていることも
触れていない大事なこともあるに違いありません、その辺はご容赦。
 
デカい画面、デカい音はいいもんですね。いつもだと絶対疲れるけど今回は大
丈夫でした。
一週間、一日一回の上映の最終日。お客は十数名。ちょいと寂しかった。
次は多分年末から年始にかけてのシーズンのものを、来春から上映するんだろ
うね。何か一つぐらい観たいな。紹介されていた中でちらっと眼にとまったの

は『清教徒』あたり。まだ先の話。どうなりますか。

 

(付録)
7月10日ごろでしたか、テレビで深夜、録画を流していました。
R・シュトラウス/「影のない女」交響的幻想曲
                 ギエドレ・シュレキーテ指揮/NHK交響楽団
この女流指揮者はリトアニア出身。若くてきびきびしていて良かったことは
良かったのですが、NHKホールの音が(小さいTVの音によるのかもしれませ
んけどね)よくなく、不満が残っちゃった。
このシュレキーテさん、上記「サロメ」のタイトルロールを歌ったヒーヴァ
ーさんに偶然結構似てらっしゃった。(もちろん何の関係もありません)
R・シュトラウスが最晩年に、30年も前の自作オペラから「交響的幻想曲」
なるものをこしらえちゃった(そんなニュアンス)とある。オペラの方も知
らないから、この管弦楽曲は当然知りませんでした。地味ながら、もうちょ
っとちゃんと聴いてみたくなったという次第。あまり人気がないのか、CDが
少ないよう。You tubeも含めて探してみましょう。