江戸のかっこいい職人を、さくっと
20241018(了) |
漫画『神田 ごくら町 職人ばなし』<1>
/坂本 暁仁
其の一 桶職人 |
其の二 刀鍛冶 |
其の三 紺屋 |
其の四 畳刺し |
其の五 左官 一 |
其の六 左官 二 |
其の七 左官 三 |
2023年9月/漫画/ソフトカバー/リイド社/中古 |
<★★★★☆> |
こんな切り取り方ってあるんですねぇ・・・というか、漫画として成立するんだ・・・。 意地だけ立派で 腕のねえ奴に 職人の価値はねえ 腕だけ達者で 意地のねえ奴ぁ 職人の資格がねえ |
なんだって。 |
最後に書いてありました。 |
江戸のかっこいい職人を、さくっと切り取ってある。 |
特にしっかりしたストーリーが語られるんじゃなく、優れた職人さんのある時 |
の、いわば日常的な言動を見せてくれるだけ。 |
結論があるというようなものでもない。ある時どうしたのか。それだけ。 |
(一)桶職人は明らかに若い女性。親の仕事を継いだのかどうかもわからない。 |
仏頂面だか優しい。近所の桶などはタダで直し、一日を酒をうまそうに飲んで |
終える。 |
(二)刀鍛冶は、女性っぽく見えばくもないが、男性のよう。わけあって贅沢 |
で手間がかかる組成のものをチャレンジングに作る。すごい刀ができる。 |
(三)紺屋は染物屋。女性。ドラマではないが、偉ぶらない職人がかっこいい。 |
(四)遊郭で腕を見せる畳職人やね、男。ややドラマっぽく、これも実にいい。 |
―あとは左官の話が三章― |
(五)(六)(七) |
町の端っこにある古い土蔵には歴史があって、火事から守ったなんて話もある。 |
若いリーダー格的女性職人、関西から流れてきた職人、ヤクザになってしまい |
そうな職人、年かさなのに下っ端のままの職人、差配する太っ腹な男等々・・・ |
彼らのドラマがあったのさ、という、ここまでにはなかった仕立て。その始ま りの(五)。 |
土蔵だけでなく茶室の普請も並行してあります。 |
(六)では女性職人のもとで、壊れかける職人たちの繋がり。 |
こんな絵を観ていて思い出しました。 |
奈良の興福寺中金堂の改修のおりに、ほとんど出来上がってからだけど、こ |
れを足場というよりある種の壁がすっぽり覆った状態(なんというのか知り |
ません)の中へ入って見学できるというのをやっていまして、我々の引率者 |
に連れられて見に内側に入ったことがありました。見学料は忘れましたネ。 |
足場だけじゃない、建物をそんなふうに(パオだかゲルたかの巨大なヤツみ |
たいなのが)すっぽり覆った状態だったのを思い出しました。 |
ここでの土蔵もそんな感じで覆われているみたいに見える絵。 |
ワタシには物珍しくてね、面白かった。だって、普通見ることができない屋 |
根の高さから、真新しい屋根に触らんばかりに近づいて建物のあちこちを見 ることができたので・・・。 |
そうそう、今はすぐ近く、同じ伽藍の五重塔の改修が始まっていまして、と |
てつもなくでかい「足場」のようなものが組まれ、高さ100mはありそう |
なクレーンが、その周りをうごめいていました。この10月16日に行った |
のです。中の塔はまったく見えずじまいでした。 若草山のそこそこ上のほうまで登って、疲労困憊。ジジイになっているのを ちゃんと認識しないとアブナイ。 |
奈良も、京都ほどではないにしても、去年よりやたらと外国人が増えた感じ。 |
欧米や南米、東南アジアの人たちが中心。せんだっての新聞で、ロシアの観 |
光客が1.4倍に増えたと驚くような記事を読んだものの、ワタシにはロシ |
ア人らしい客は見えなかったな。べちゃべちゃ喋り合っていないかぎり、わ |
かりませんけどね。 |
ハイ、脱線しました。 |
(七)はもちろん、土蔵も茶室も完成。余計な話は一切なしのすっきりしたも |
の。(1)~(4)よりはストーリー性があったものの、ストーリーへのこだわ りは薄目。強くはなくても余韻があって、とってもよろしい,。 |
みな、どこか「詩」のような出来上がりですね。素敵な漫画でした。 |
特に気に入ったのは、(三)と(四)かしらん。 |
表紙には<1>とあるが、<2>は、まだ出てないらしい。 |
発売日未定とある。出ても、ワタシにゃ気が付きそうもない。 |