休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『あの日のように抱きしめて』 スピーク・ロウ

20250604(了)

映画『あの日のように抱きしめて』

 クリスティアン・ペッツォルト監督/ニーナ・ホス/ローナルト・ツェーアフェルト
 2014年製作/98分/ドイツ/原題または英題:Phoenix/DVDレンタル
 <★★★★>

観終わって、ウーン、なかなかうまいタイトル・・・
『東ベルリンから来た女』が同じ監督、女優、男優だったんですね。もう忘れ
ていました。ワタシはだいたいこんなものです。
 
4曲ほど出てくる曲のうち、クルト・ワイルの超有名なスタンダードナンバー
「スピーク・ロウ」が、タイトルにしてもいいくらい重要な使われ方をします。
最初はほぼベースのソロ、山の部分ではピアノ伴奏のヴォーカル、最後はエン
ドタイトルでのコンボ+淡いストリングス。いいニュアンス3パターンでした。
1943年の曲だから、戦時中!
もう一つ知っている曲が流れました。「ナイト・アンド・デイ」(1932年、コール・
ポーター)。面白かったのはこれがドイツ語では「Tag und Nacht」と、逆になって
いたこと。エンドタイトルを見ていて、へぇ―・・・
 
強制収容所から命からがら助かったネリーがドイツに戻ってくるが、顔がめち
ゃめちゃ。整形は成功するも、かなり違った顔になってしまう。彼女はもちろ
ユダヤ人。歌手で資産がある。自分を取り戻そうと、行方知れずの夫ヨハネ
ス(通称ジョニー、ドイツ人のよう)を捜す。タイトルになっているフィーニ
ックスというアメリカ人がこしらえたようなクラブで下働きをしているのを見
つけるのだが、顔が違うので気付いてもらえない。
ジョニーのほうは、死んだはずのネリーに似ていると思い、一計を案じる。そ
の女をネリーに仕立てて、あるはずの「遺産」をいただこうと。
 
ジョニーはネリー本人をネリーに仕立てようというのだが、ネリーもわざと騙
されたままでい続けてしまうのだから、これはいつかカタストロフィーに繋が
るに違いないと、観るほうはわかっている。その待ち受けを楽しむという感じ。
この図式は古風としか言いようのないと感じましたけどねぇ、どうでしょうか。
最高の余韻とまではいかなかったものの、それでも、いい幕切だった。
始めに「スピーク・ロウ」のことを三つ書きましたが、その二番目のヤツがそ
うです。というと、まぁほぼほぼネタバレなんですけどね。

「スピーク・ロウ」
    Kurt Weill 1943(和訳 鈴木輪)
 小声で囁いて!愛を語る時は、、、。
 私達の夏の日はすぐに消え去っていくから
 小声で囁いて!愛を語る時は、、、。
 私達の時は漂う船のように早いの
 すぐに押し流されて離れ離れになるの
 小声で囁いて!ダーリン!
 愛は火花。暗闇に消える(火花)
 とても早く。そう、とても早く。
 私は感じている!どこにいようとも、、、。
 明日は近くにあって
 明日はここにあって
 そしてそれはいつもとても早く過ぎ去るということを。
 
 時間はこんなに長く、愛はとても短い。
 愛は純金、そして時間は泥棒。
 
 私達は遅れてるの、ダーリン、遅れてるの。
 幕が下りたら、すべて終わってしまう
 すぐに、、、すぐに。
 私は待ってる。ダーリン、待ってるのよ。
 私に小声でささやいて、
 愛を語って、すぐに!
 
あまりいい訳文とも思えないのですが、詩が苦手なワタシが言うのも詮無い。
ともあれワタシ、好きなこのジャズのスタンダードナンバー、なぜかピアニ
ストのウォルター・ブショップJr.の曲だと長ーいこと思い込んでおりました。
確かにビショップJr.にその名のアルバムはありましたけどね・・・そのせい
なのかなぁ。ただの思い出話です。おしまい。