休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 新井紀子著

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20190630(了)
『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 新井紀子
第1章 MARCHに合格――AIはライバル
 ・AIとシンギュラリティ
 ・偏差値57.1
 ・AI進化の歴史
 ・YOLOの衝撃  画像認識の最先端
 ・ワトソンの活躍
 ・東ロボくんの戦略
 ・AIが仕事を奪う
第2章 桜散る――シンギュラリティはSF
 ・読解力と常識の壁  詰め込み教育の失敗
 ・意味を理解しないAI
 ・Siri(シリ)は賢者か?
 ・奇妙なピアノ曲
 ・機械翻訳
 ・シンギュラリティは到来しない
第3章 教科書が読めない――全国読解力調査
 ・人間は「AIにできない仕事」ができるか?
 ・数学ができないのか、問題文を理解していないのか?―大学生数学基本調査
 ・全国2万5000人の基礎的読解力を調査
 ・3人に1人が、簡単な文章が読めない
 ・偏差値と読解力
第4章 最悪のシナリオ
 ・AIに分断されるホワイトカラー
 ・企業が消えていく
 ・そして、AI世界恐慌がやってくる
おわりに
  2018年2月/ソフトカバー単行本/東洋経済新報社/中古
  <★★★★☆>

かなり話題になった本です。
ノウハウ本のようなイメージが漂うので、はじめは読む気なんぞなかったの
ですが、養老先生が薦めるに及んで、こりゃ気にしているシンギュラリティ
話の方向らしいということもわかって、読むことにしました。
結果、たいそう刺激的でした。もちろん面白かったです。
AIに仕事を奪われる心配というときのAIったって、本来のAIとAI技術の言葉
上の区別をつけないとわかりにくいこと甚だしいんだけれど、ともあれ、まず
は‘シンギュラリティ’。ロボットに東大を受験させてみようという、まあつまり
AIなんだけれど、そういうもともと研究されていた試みに合わせて、シンギュ
ラリティってどうなんよ、ということを述べておられる。
‘真の意味でのAI’はシンギュラリティに到達するか!
著者はそれはすくなくとも当面はない!と結論付けている。前半は、「東ロボ
くん」と併せて、微に入り細を穿ってその理由を説明してくれる。
なるほどです。この本の賞味期限は多分まだまだ切れない。
しかし仕事が取られることは間違いない。
AIにできることは、偏りがあるものの、多い。
人間はAIのできないことをやればいい、やるしかない。それも確かだ。
だけど、AIが不得手なことをやるといっても、ほんとにできるの?と考え、調
べてみたというのが後半。
AIの超苦手なものの中に、文章を読んで理解するというものがある・・・
意味を理解することができないというのととても近い。
ところがところが、著者(新井先生)は中学校・高校生のある能力(読解力)に
慄然とする。
それでこのタイトルなんだ。
読むこっちも、先生ほどじゃないかもしらんが、慄然。(ホンマかよ?嘘やろ!
の世界)
SNSばかりいじっているようでは、恐ろしいことになる。それを教えてやるのが
大人だと思うが、もう高校生や大学生になった子どもたちは、親の言うことや
教師の言うことにだって、まともに取り合わないのじゃないか。
‘空恐ろしい’という感覚と‘ざまぁ見ろ!’という感覚が同時に起きていて、そ
れも含めて‘面白い’と言っちゃっていいのなら、面白い。
当然のこと、ひねくれた気分なんですけどね・・・
問題意識を行動に表しておられるのがさすがにエライ先生だなぁ。
若いお父さんお母さんに読んでほしいが、スマホばっかり触っているようじゃ
そもそも読まれへんかぁ。それから、先生や文科省には絶対!
我が国の宰相はどう思うでしょうか。理解できたとしても、政策に反映させる
のは無理でしょう。
それ以上の政治的な発言は止めておきますが、そっちのほうにもけっこう発
想が向かいました。
これは『教科書』のように読まれていい本だと思います。おそまきながら・・・