深読みがいくらでもできそうな感じの台湾を舞台にした物語。 |
ミステリーじゃないと言ったら正しくないのだけれども、なんといっても猛烈 |
な熱量を感じる青春小説系やね。作者の出自と関係があるのは間違いな |
いとは思うものの、調査や参考にしたネタは多分とんでもない量なんだろう。 |
細かい挿話や描写のディーテイルが圧倒的。またそういうリアリズムのみ |
ならず、主に前半ではプッと吹き出すユーモアも負けじと詰まっていて、は |
じめっから掴まれました。 |
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職場の先輩のかたからかなり前に借りていて、やっと読む気になったもの
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です。しかもまだ2冊ばかりあるんですよ。 |
本は、あげるのは自己満足的でOKなんですが、あまり借りるもんじゃない。 |
わかってはいるんですけどね、断りにくくてついウンと言ってしまう。 |
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で、不死身の祖父の死にざまなんて、わけがわからなになりに相当ショッ |
キングなんだけれど、おおむねふわふわした主人公葉秋生のストーリーは、 |
祖父の死のミステリー解明という通奏低音は細ぼそと繋がりはするものの、 |
お構いなしにスピーディーに、オーバーに言えば怒涛のように、転がっていく |
く。 |
替え玉受験、恋や自身の受験(失敗)、入隊、就職など、忙しいのに、子ど |
ものころからのロクでもないさまざまなつきあいが、ストーリーにああでもな |
いこうでもないとチャチャを入れまくる。とくにヤクザに絡んでいる部分はけ |
っこうヤバイ。さてさて・・・ |
果たしてこれはミステリーなの? |
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ミステリアスな(ミステリー込みで描かれた)台湾の現代史であり、このミス |
テリーと共に主人公は成長してゆく。 |
ワタシは戦後(すぐに)生まれた人間。戦後ではあるけれど、こんな切り口 |
の歴史なんて習ったんですかねぇ。 |
受験戦争なんて言われたころのこと、世界史や日本史なんて、現代史な |
んか入試には出ないんだから必要ない、とパスされたのは覚えてますね。 |
教科書も参考書も、おしまいのほうはきれいなもんだった。今思えば正気 |
の沙汰じゃなかった。 |
ある程度詳しく知ったのは大人になってから。 |
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戻ります。 |
形の上では復讐の連鎖のようなものと言えるでしょう。でもそういうネタは、 |
考えてみれば今でも日々作られ続けているみたいで、悲しいねぇ。 |
重くならない文章、読みやすさは一種爽快。登場する人の名が中国名で、 |
引っかかるに違いないと心配したのに、全く問題なし。 |
雑誌「このミス」では2016年版(2015年度)で、写真のように国内の第5位 |
にランクインしています。そして何より大きな賞を獲得。 |
見事なエンタテインメントだと思います。 |
中国じゃ、発禁というより、そもそも出版してもらえないし、持ち込みも禁止 |
だろうね。 |