休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『流』 東山彰良

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20190205(了)
『流』 東山彰良
 
  2015年/小説/単行本/講談社/(借り物)
  <★★★★>
 
深読みがいくらでもできそうな感じの台湾を舞台にした物語。
ミステリーじゃないと言ったら正しくないのだけれども、なんといっても猛烈
な熱量を感じる青春小説系やね。作者の出自と関係があるのは間違いな
いとは思うものの、調査や参考にしたネタは多分とんでもない量なんだろう。
細かい挿話や描写のディーテイルが圧倒的。またそういうリアリズムのみ
ならず、主に前半ではプッと吹き出すユーモアも負けじと詰まっていて、は
じめっから掴まれました。
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職場の先輩のかたからかなり前に借りていて、やっと読む気になったもの
です。しかもまだ2冊ばかりあるんですよ。
本は、あげるのは自己満足的でOKなんですが、あまり借りるもんじゃない。
わかってはいるんですけどね、断りにくくてついウンと言ってしまう。
 
で、不死身の祖父の死にざまなんて、わけがわからなになりに相当ショッ
キングなんだけれど、おおむねふわふわした主人公葉秋生のストーリーは、
祖父の死のミステリー解明という通奏低音は細ぼそと繋がりはするものの、
お構いなしにスピーディーに、オーバーに言えば怒涛のように、転がっていく
く。
替え玉受験、恋や自身の受験(失敗)、入隊、就職など、忙しいのに、子ど
ものころからのロクでもないさまざまなつきあいが、ストーリーにああでもな
いこうでもないとチャチャを入れまくる。とくにヤクザに絡んでいる部分はけ
っこうヤバイ。さてさて・・・
果たしてこれはミステリーなの?
 
ミステリアスな(ミステリー込みで描かれた)台湾の現代史であり、このミス
テリーと共に主人公は成長してゆく。
ワタシは戦後(すぐに)生まれた人間。戦後ではあるけれど、こんな切り口
の歴史なんて習ったんですかねぇ。
受験戦争なんて言われたころのこと、世界史や日本史なんて、現代史な
んか入試には出ないんだから必要ない、とパスされたのは覚えてますね。
教科書も参考書も、おしまいのほうはきれいなもんだった。今思えば正気
の沙汰じゃなかった。
ある程度詳しく知ったのは大人になってから。
 
戻ります。
形の上では復讐の連鎖のようなものと言えるでしょう。でもそういうネタは、
考えてみれば今でも日々作られ続けているみたいで、悲しいねぇ。
重くならない文章、読みやすさは一種爽快。登場する人の名が中国名で、
引っかかるに違いないと心配したのに、全く問題なし。
雑誌「このミス」では2016年版(2015年度)で、写真のように国内の第5位
にランクインしています。そして何より大きな賞を獲得。
見事なエンタテインメントだと思います。
中国じゃ、発禁というより、そもそも出版してもらえないし、持ち込みも禁止
だろうね。