原題が面白くないので、日本の映画配給会社では相当考えたんでしょうね。 |
英語のタイトルはポスターによれば「IN THE FADE」のようで、これだってドイ |
ツ語のタイトルとどうもニュアンスが違っている。 |
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<映画.com解説から> ・・・名匠ファティ・アキン監督が、ダイアン・クルーガーを |
主演に迎え、突然の悲劇で家族を奪われた主人公の女性が絶望の中で下す |
決断を描いたドラマ。・・・クルーガーが、ドイツ語を使った演技に初挑戦・・・ |
ドイツ、ハンブルグ。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤは幸せな家庭を築 |
いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリと息子の |
ロッコが犠牲になってしまう。 警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていた |
が、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家 |
族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまようが……。 |
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夫と息子を爆破テロでいっぺんに失ってしまった女の復讐譚。実際にあった事 |
件をもとに書かれたストーリーだそうだ。 |
呆然自失、裁判とそれによる疲弊、追跡とカタストローフ。 経過も非常にわか |
りやすく、観やすかった。 |
ドイツは多分トルコ人だらけなんでしょうが、ここでは夫がトルコのクルド人。 |
イラン、ジョージア、イラク、シリア、トルコ、レバノンなどにわたっている民族で、 |
3000万人とも言われる人口がありながら、現在はクルディスタンという国は地 |
図にはない。 |
微妙だよなぁと思いながら観ていると、この映画ではトルコ人が狙われたのか |
クルド人が狙われたのか、などなど判然としないまま物語は進み、彼女自身の |
妻と母親としての感受性の枠からはほとんどはみ出してゆかない。 |
夫の家族と彼女の家族とが一堂に会しての緊張感や、おおむね無表情でほと |
んどセリフのない犯人であるテロリスト(たち)の存在が、ドイツの状況を暗示し |
てくれる程度。とはいえ不安感は十分煽ってくれている。 |
‘二度の決断’が気になり始めます。で、おしまいのほうのある時点から、ああ |
こういうことなんだなあとやっと分かる。邦題もなかなか。 |
家族を亡くして何にもなくなっちゃった喪失を指して‘Nichts’と言っているわ |
けでしょう。aus で‘そこから’あるいは‘その状態から出ること’という意になっ |
ているのがもとのタイトル。英語の「IN THE FADE」よりはむしろいい。 |
さて、でもわかるのはそういうことだけで、社会的背景はわかるようなわから |
ないような・・・、でした。ま、欲張ってはいない、欲張って表現しなくてもどうい
う状態かわかるでしょ、というようなことなんだと思います。
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これ書きすぎていますね、きっと。 |
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犯人側弁護人、きれいに剥げた憎たらし気なオッサン、の喋る固いドイツ語が |
たいそう美しくかっこよかった。ほれぼれ。これがドイツ語だァ!という感じ。ワ |
タシは、恥ずかしながら、シューベルトの歌のドイツ語より、こっちのほうが好き |
かも。 |
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音楽のことはどうでもいいようなもんですが、ひとこと言わせていただくなら、英 |
語(圏)の歌ばっかりだったのがつまらなかったです。 |