<ネット紹介文> |
ひとはひとりでは 生きていけませぬ―― |
秘太刀「磯之波」は人の濁った心を一刀両断する!
|
愛する者の望みを叶えるため剣を抜いた男の運命は!?
|
りり、りり、りり。草雲雀は一晩中、恋の歌を唄う――媛野藩の若き藩士、栗屋 |
清吾は風采の上がらぬ三男坊だが、剣はめっぽう腕が立つ。女中のみつと深 |
い仲になり妻とするが、家長の長兄には認められていない。そんなとき、道場 |
仲間の山倉伊八郎から自分の用心棒になるよう頼まれる。伊八郎は実父の |
後を継ぎ、藩の筆頭家老になるには清吾の剣の技が必要だという。「子どもを |
持ちたい」というみつの願いに応えるために申し出を引き受けたものの、伊八 |
郎の出世を阻もうとする敵からの刺客が次々と襲い掛かり……。 |
|
この著者の作品を読むのは初めてです。 |
亡くなったばかりだからということではありません、例によってというほどでもな |
いのですが、職場の同僚兄が3冊ほどまた貸してくださった。ようやくその一冊 |
を読了。 |
|
葉室の小説は読んでみたいものが他にあったのですが、まあいい。 |
予想ないし希望は、藤沢周平に近いもの、でした。そんなにこだわっているわ |
けでもなかったのですが、まあ藤沢作品は大好きだったもので。『秘太刀 馬 |
の骨』なんてのもありましたっけ。 |
|
これは若くて冷や飯食らいの武家3人が、夫々違った状況で、人生を大きく変 |
えようとする、つまり三様の夢をかなえるために奮闘する話が中心。 |
そのまた中心は、いたって小さい夢に拘る剣客清吾とその妻みつの話。 |
紹介文では、固そうな感じに読めるけれど、実際は、護衛役の清吾と突如筆頭 |
家老を継ぐべく引っ張り出され護衛される立場の妾腹の子伊八郎の、ほとんど |
漫才のような掛け合い(大真面目ではあるのだがかみ合わない)が笑いを取り |
つつ、話をスイスイ進めて行く。 |
小藩内の政争、妙に‘あけっぴろげ’な権力闘争だ。 |
非常に読みやすい文章で、持って回った言い方も誇張も外連もない。剣はでき |
てもお人好しで複雑な考え方をまるでせず、小さい夢しか持たない清吾と女中 |
みつの夫婦(夫婦とは認めてもらえない)がいったいどうなってしまうのかは、 |
最後の最後にしか明かされないけれど、本の厚さの割にはたどり着くのにもど |
かしさもなかったですね。 |
草雲雀。いいタイトルです。 |
そこらへんにいる小型のコオロギ。鳴き声は「りり、りり、りり」と紹介されている |
けれど、もう少し続けざまに鳴くよう。同じく小さな虫「カンタン」と鳴き声がちょっ |
と似ている気がする。(子供のころ、カンタンを捕るの、たいへんでした。) |
|
文章も空気感も、似ているようで、そうでもなかった。 |
藤沢なら“海坂藩”という山形北部の藩を想定したものが多いが、この媛野藩 |
というのはどのへんなんやろう、わからなかった。ご出身の北九州あたりだろ |
うか。 |