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「地球ゴルフ倶楽部」という単行本で、もう30年も前でしょうか、ファンにな |
ったかた。ゴルフライターという職種になっている。 |
いくらか単行本を読んでから、「夏坂健セレクション(1)~(6)」を読んだら、 |
たいていのものがダブってしまうようになった。この本も読んだ記憶のある |
ものがあったりなかったり。でも、いいですねえ、何度読んでも。 |
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〈Ⅰ〉が聖地スコットランドでの資料調査やゴルフ(ラウンド) |
〈Ⅱ〉は世界各地でのラウンドのほんの一部 |
〈Ⅲ〉は、正しいゴルフとは何ぞや/いいゴルファーたれ/と訓をたれる |
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特に素敵なのは〈Ⅰ〉でしょうか。 |
12篇はいずれも極上の‘読むゴルフ’。やはり発祥の地の歴史の重みや伝 |
統が人の生や生活にがっしりと入り込んでいることのすばらしさ(≒うらやま |
しさ!)、独特の雰囲気、そしてある種の旧弊さ。 |
MLBの7回に歌われる「私を野球に連れてって!」の歌詞の最後が “At |
the old ball game”と古い、時代遅れのという感じを出している(訳は‘昔 |
なじみのスタイルで’)ものの、ゴルフの古さはそんなもんじゃない。 |
このあいだのルール改訂にはびっくりしましたけどね。米国のみならず、英 |
国のゴルフ協会も一緒にというのが・・・。まあ、変わっていかざるを得ない |
んでしょう。基本的に「時短」のため、というのが面はゆい。 |
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どれでもいいんですが、ここで紹介するのは、“スコットランドのパブは爆笑 |
で更ける”というジョークをネタにした軽い一篇。 |
スコットランドでは、都会以外は、コンビニなんてものはないし、21時も回れ |
ばシーンと静まり返ってしまう。唯一、パブだとかフィッシュ&チップスなどと |
書いてある所だけが開いている。 |
そこじゃあ、夜な夜なジョークが語られつつ、更けてゆくんだとさ。 |
夏坂さんが入ったパブにて・・・はじめは、まあ硬めに紹介される、その一部。 |
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「俺たちは人なつっこい民族、店に来た者は誰でも歓迎する。ただし、パ |
ブはジョークの寄席だよ、ユーモアのない人間には居心地が悪い場所だと |
思う。これは人生全般についても言える話だがね。」 |
夜の8時過ぎ、常連が次々にやって来る。ケルト発祥のゲーリック訛り、 |
要するにズーズー弁と紫煙が絡み合い、爆笑が充満して店内は酸欠状態。 |
酔いが回るほどにジョーク合戦の幕が切って落とされる。客の多くは生ま |
れついての筋金入りゴルファーであり、本職のキャディもパブの常連だ。ゴ |
ルフは平等のゲームとあって両社の関係は互角、遠慮など微塵も存在しな |
い。 |
「ユーモアはスコットランドが分泌した最高の文学。この事実に全世界が |
気づかないのは残念である」 |
詩人のウィル・シモンズは、名著『ケルトの末裔』の中で次のように書い |
た。 |
「かつて、ユーモアはフモール(液体)と呼ばれた。古代ローマの生理学 |
では、人間の性格と気質を決定する液体と見られ、滑稽、機知、諧謔、風 |
刺の精神が旺盛な人ほど、フモール液も豊富だと思われた。スコットランド |
は寂しい土地ゆえ、過酷な環境に生きる人間ほど心の支えとしてユーモア |
が不可欠であった。それは睡眠と酒に匹敵するほど必要なもの、ユーモア |
は人生の糧である」 |
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なーんてなことを書き、そこからはジョークの一端が紹介される。そう書く筆 |
者も日本のジョークを尋ねられて、一つ披歴している。ここではその直後に |
紹介される話を、載せてみます。 |
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「・・・ 大昔、アル中の男が尼僧とゴルフをすることになった。1番から男 |
は悪態のつき放題、『畜生、ミスったぜ』と叫んだあとが『ファック』の連続 |
だった。そのたびに尼僧は眉をひそめたが、罵声はひどくなるばかり。つい |
に彼女が厳しい口調で言った。 |
「これ以上ひどい言葉を口にしたら、天の神様にお願いして罰を当てて |
もらいますよ』 |
次のホール、男は懲りずに下卑た言葉を口走った。次の瞬間、暗雲が二 |
つに裂けて稲妻が轟き、目も眩む光芒がが大地に突き刺さって一人のゴル |
ファーが即死した。よく見ると犠牲になったのは尼僧だった。そのとき天上か |
ら狼狽する神の声が響いた。 |
「畜生、ミスったぜ!」 |
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パブに爆笑がさく裂したのは言うまでもない。 |
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楽しい読み物でした。
個人的につきあいがあったらしい解説の高橋三千綱氏の文章には、哀惜の |
念がぎっしり詰まったもの。引用はヤンペ。
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| | (8/3) | テレビのニュースを見るたび「命にかかわる・・・」という言葉が聞こえます。 | こう暑くては、頭の中にゴルフのゴの字もない。 | 「読むゴルフ」しかない。 |
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