| 大きな賞を受けた「犬婿入り」から読みました。(「ペルソナ」もその候補作) |
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| 犬婿入り; |
| 沖縄あたりの民話にそんなのがあって、おおらかだが少々卑猥なおかしみ |
| がある・・・ |
| 語り手はなんとなく移動する感じはあるけれど、一応女のようでもあるし第 |
| 三者のようでもある。 |
| 東京の多摩。 |
| 40前らしい女が住み着いて、塾を始める。子供たちはなつき、母親どもは |
| この女についてあれこれ口さがないが、しまいにゃ認めてしまう。 |
| 女は、子どもたちにしばしば尻を舐める犬の話をする。 |
| 次は、女の住まいへ妙な男が入り込み、なぜかそのまま同棲生活になる。 |
| 女の目に映るこの変な男のことが面白く語られる。 |
| その次には、この男の妻だったらしい女がやってきて、この男とのことを |
| 説明し始める。ぜんぜん怒っていない。この男には変身癖がある。それは |
| ともかくこの男、なんだか犬っぽい。女が子供たちにした尻を舐める犬の |
| 話と呼応する感じがある。それは女よりむしろ読者側が連想するのかな。 |
| そしてその次には‘出来の悪い’女の子が、女の生活の大切な一部にな |
| るというようなことが起きて・・・ |
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| とまあこうしたことが句点(。)のごく少ない、だらだら続く文章で綴られて |
| ゆく。作者がドイツで書くことから連想したトーマス・マンの長たらしいセン |
| テンスとは感じが違うし、吉田健一の妙に楽しいひらがなの多いヌタヌタ |
| 文とも違って、(比べるほうがヘンなんだけどね) 確信犯的に子供っぽく |
| 独特。意図はよくわからない。でもちょっと面白い気もする。ユーモアを支 |
| えていた感じ。これならエンタテインメントだよね(?)。 |
| <★★★△> |
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| ペルソナ; |
| ドイツに姉弟で留学に来ている。 |
| 主に姉のほうを描いている。ほとんど日本人ばかりを相手にしながら、 |
| 彼女は何に対しても「イヤイヤ」の雰囲気を発散しつつ、徹底的にいじけ |
| まくっているの図。 |
| こうして倦むことなく(?)・・・うだうだと自分探しをしたり、気持ちや感 |
| 情や記憶の襞に分け入ったり分け入るのをためらったり、あるいはそういうこ |
| とから懸命に逃げたり。そんなことをネタによくもまあ書き続けることが出 |
| 来るもんだと思う。女性という点が希少なんだろうか。 そうでもないよね、 |
| きっと。漱石じゃあるまいしって、彼女はそこがドイツでなく日本でも似た |
| ようなことになりそうに思うが、どうなんだろう。 |
| 何を象徴するのか、おしまいでは‘スペイン製の能面’を付けて、つまり |
| これが‘ペルソナ’なんだけれど、モンゴロイドとしての平静を得たような |
| 具合。 |
| これはエンタテインメントじゃない。 |
| <★★★> |
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| この方のドイツ便りふうな記事が、行き届いて冷静な感じで面白かったの |
| で、何か一つ読んでみようと思って、中古屋のバーゲンで見つけたもので |
| す。 |
| この二篇では、「犬婿入り」のほうがずっと面白かったですが、20年近くも |
| 前のものですからね、その後はドイツ語でも小説を書いて、どんな権威が |
| あるのかは存じ上げないが、むこうでクライスト賞とかいうのを受賞。朝日 |
| 新聞の片隅に載ったのを憶えています。 |
| ワタシの感触では(エラそうに何を言うかってなもんですが)まだこの2作 |
| 品は原石ふうで、今はすっかりタイプの違ったものみたいに見えるものを |
| 書いておられるような気がします。 |