休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

マイクル・クライトン『トラヴェルズ ―旅、心の軌跡―』 上・下

20171122(了)

マイクル・クライトン『トラヴェル ―旅、心の軌跡―』 上・下
    TRAVELS by MICHAEL CRICHTON(1942-2008)

<上>
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    序
  メディカル・デイズ 1965~1969
    解剖死体
    面白い話 
    瓢箪病棟
    男たらし
    ボストン産科医院の一日
    虱たかり
    心臓発作!
    W、X、Y、Z医師
    医学を捨てる
  ラヴェルズ 1971~1986
    ロサンゼルスの性と死
    精神医学 
    バンコク
    ボネール島
    パハン
    象の攻撃
    キリマンジャロ
    魔術師のピラミッド 
    父の死
    アイルランド
    特別対談収録;村上龍マイクル・クライトン

    
<下>
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  トラヴェルズ 1971~1986(承前)
    ロンドンの霊能者たち
    バルチスタン
    シャングリラ
    鮫
    ゴリラ
    絶滅した亀
    サボテンの教え
    ジャマイカ
    人間ライトショー
    彼ら
    首狩り族を見る
    星気界での生活
    ニューギニア
    スプーン曲げ
    オーラを見る
    ある存在物
    直接的経験
    追記 アリフォルニア工科大学の懐疑家たち
    解説;村上貴史
    訳:田中昌太郎
    2000年11月/ハヤカワ文庫NV/中古
    <★★★△>

ペンネームJohn Lange Jeffery Hudson Michael Douglas
マイケル・ダグラス あらまあ、そんなのもあったんだ。
<上>解説
名門ハーヴァード大学を首席で卒業後、医学博士となり、結婚し離婚し、
ベストセラー小説を立て続けに発表、映画を監督し、30歳で成功の絶
頂にいた―だが、次は何をしたらいい?突然目標を失った著者が選んだ
のは、自己探求の旅だった。『ジュラシック・パーク』『タイムライン』など
の多彩な大ヒット作品を次々と生み出す鬼才の自伝的旅行記。上巻末
村上龍との対談収録。 (「BOOK」データベースより)

<下>解説
水深60メートル余に及ぶダイヴィングで、キリマンジャロ登頂途上で、ク
ライトンは世界各地へ冒険の旅に訪れては思わぬ危機に陥った。しかし、
その代償に得られたものは素晴らしい自己発見と、自由な世界観への
目覚めだった。サボテンと対話をし、チャネリング体験を重ねた著者が辿
り着いた心の境地とは…既成の枠に縛られない、じかの体験の重要性
を語る奇想天外な旅行記 (「BOOK」データベースより)
  (1991年2月に小社より単行本で刊行、93年5月に小社ノンフィクショ
   ン文庫より刊行した『インナー・トラヴェルズ』(上下)を改訳・改題した
   ものです。)

身長は2メートルを超える、か。ふーん・・・
ハーヴァードを首席で卒業?医学博士となり? そうなんだ。そんな感じ
がぜんぜんしない文章なんだよな。良くも悪くも、かなり素顔のクライトン
をうかがい知ることのできる半自伝なんだ。
頭が高いというか、偉そうなというか、鼻持ちならないというか、まあそ
んな傲岸不遜に体験するという態度を取りがちだけれど、でもまあどん
なことにもぶつかって経験してみて、自分なりの考え方や収め方を学ん
でいくところが、なにやらさすが。鼻持ちならないあいだは、このヒト、頭
エエンカイなと思わせるけれど、結果をうまく収める計算のある文章でも
って、ヘンテコリンにならないところが結局面白い。そんな感じで上巻を
読み終えた。
2メートルを超えるお医者さんてのもなかなかいないよなあ、アメリカじゃ
当たり前にいるのかもしれないけどさぁ。アフリカでだったか、同じ人間
だとは思われなくて、くすくす笑いの対象になったのがあったっけ。
‘メディカル・デイズ’の面白さは、そのあとのたくさんの‘トラヴェルズ’と
は質が違っていて、もっと読みたいというか、もっと医者をやっておられ
ればよかったのに、などと感じつつ下巻を読み進む。その後の文筆や映
画の活躍のほうが我々にはよほど馴染み深いのにね。
そうか、医学に携わっている間にもすでに、有名な小説をいくつもものし
ていたんだな、あんまり大っぴらに出てこない、さらっと通り過ぎるように
書いてあるだけ。
経験の広さが半端でないと思っていたあいだはよかったのだが、、、下
巻後半ともなると、俄然‘胡散臭い’ものが多い。いや・・・
ご本人は明らかにそう思ってない。少なくとも関心は異常に高かったら
しい。少しまとまっているところから引用すると、
〇意識にはまだ誰も予測していない正当な次元がある。意識の種類
 はわたしが以前認識していたよりもかなり多様で・・・
〇少なくともいくつかの心霊現象は現実である・・・・ある人たちは、い
 まのところ説明のつかない方法で過去と未来の出来事について知
 る能力を持っているという結論にわたしは達している・・・
〇人体と結び付けられた、いまだ理解されていないエネルギーがある。
 これらのエネルギーは手で触れることも見ることもでき、治癒、病気、
 健康に関係がある・・・
などなど。
でもなんでも信用しているかというとそうでもなく、こんなふうに書く・・・
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ワタシはダメでした。こんな経験ひとつもないし。今回のノーベル物理学
賞の「重力波」と似たような感慨しかない。
例えば、ヒトにはオーラがあってその輪郭を確認してみたり、つまり‘ある’
と‘ない’の境目が見えたりする。べつに構やしないけど、信じられない。
オーラを‘毛羽立たせる’なんてところがあって、アッケ。
えー、ある種の進化が、その種全体にバアーッと広がったとしか考えら
れない!みたいなことをいくつも読んだけれど、それっていったいどんな
力が働いたんだよ!なんて考えたもんだけどさぁ、なんだか不思議な‘伝
達方法’があって、なぜか“実際に働いてしまった”“一斉に変化してしま
った”としか言えないじゃないか!
そういう不思議は、そりゃあ関係ないとは思うけどね、ものの譬えですよ、
何かあるかもしれない、ひょっとすると実態のある心霊現象の類のような
ものだってあるかもしれない・・・そういうの、ワタシが現実に見ても信用
するかどうかというと怪しいですけど。
正直なところ、こうした内容と、これまで読んだクライトンさんの本(もう7‐
8年前にたくさんの本と一緒に処分しちゃった!)との落差は、、、比較す
るほうがおかしいのは承知の上で、、、大きかった。
(ワタシャ‘能力’を退化してしまった口なのか? なんてね。)
そんなわけで、後半は俄然エクストラオーディナリーな経験(もろ心霊現
象の関係のものや、過去とのチャンネルなどに代表される)が連なり、ワ
タシはゲンナリ。読むスピードも落ちてしまって、しばしば放置。

で、おおよそいうところでは・・・これ読む人は無理に信じなくてもいいから
自分で経験しろよってことと、そもそも科学万能というにはいろいろ問題も
あったし現在もあって、科学とそうでないものとの境目なんてものは無き
に等しいんだよ、ということ。
辺縁系なんてぇなのにこだわった記述が小説にだって出てきたように記
憶しているんだが、こうした科学では理屈付けできない体験内容と、それ
を認めようとしない“科学の世界の真実”(こちらも経験やね)のことなんか
が込められていたりして・・・
ひょっとすると、本を出すにあたって、いろんな人からこのジャンルに関し
科学的でないというようなことをいろいろ言われ、頭にでも来たんだろう
か、おしまいのほうの言い草はほとんど感情的じゃないかねぇ。そこまで
シャカリキにならなくても〈わかるって〉と感じた。
‘素顔’っぽかったね。
女性同伴で世界中を飛び回った印象で、女性遍歴もいくらかわかる仕
組みになっている。愁嘆場もなんともストレート。・・・この辺は本の好き
嫌いにも評価にも影響ない。
でもねぇ、、、
少々疲れて読了、後味はいいとはいえませんでした。メモを繋ぎ・・・
読了の翌朝、朝刊一面の“折々のことば”がなんだかピッタリでね、なん
だか申し訳ない気もしましたが、これでオシマイってことにしました。
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