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<帯紹介文から> 現在、ピアソラを知らない人はいないでしょう。彼の名前は、 |
すっかりアルゼンチン・タンゴと同義語になり、誰もがあの哀愁漂うメロディを |
頭の中に思い描くのです。この盤に収録されている「シンフォニア・ブエノスア |
イレス」は華麗なるオーケストラをバックにバンドネオンが妖しく歌います。こ |
こでは、彼が20代の頃に5年間私的に師事したヒナステラの影響も存分に生 |
かされた、豊かな色彩を感じさせる力作です。アンデス山脈最高峰の山の名 |
前を取った「アコンカグア」は見事なバンドネオン協奏曲。アグレッシヴな音が |
魅力的。「ブエノスアイレスの四季」はヴァイオリンとオーケストラ版で、バンド |
ネオンとはまた違った味わいが楽しめます。 |
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素晴らしい! |
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ピアソラはクラシックの作曲家として身を立てようとしたことがあるそうな。そし |
てそれにストップをかけたのが、音楽の歴史でたびたび目にする、かの大物 |
批評家ナディア・ブーランジェだったとか。こんな場面でも影響力を発揮したん |
やね。で、作曲をヒナステラに学びつつ、結局タンゴで食い続けた。 |
でも、ここでのオーケストレーションを聴いていると、ヒナステラの名が出たせ |
いもあるのか、タンゴの匂いが強くて独特なのは勿論ながら、そうか、それで |
ああいう暗さや激しさのオーケストラによる表現なんだ、と理解出来た気がし |
た。 |
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(1)曲名に町名‘ブエノス・アイレス’が入るのがすごく多いのね。 |
立派なオーケストレーション。ヒナステラからは主に‘理論’を学んだというの |
だが、鋭く激しいバーバリズムに血沸き肉躍る。最後なんざすごいよ。 |
木管、金管のアンサンブル、バンドネオンやヴァイオリン・ソロ、そして打楽器 |
の活躍。明らかに曲調にもヒナステラとの類似性があると思う。 |
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(2)他の演奏者(アコーディオン版をたまたま持っている)のもので見てみる |
と、‘バンドネオンと弦楽オーケストラ、ピアノ、ハープ、打楽器のための’とな |
っている。ピアノは少ない。ハープ時々小さい音が聞こえた。 |
「アコンカグア」のタイトルは、どうやらマネージャーが勝手につけたもののよ |
う。‘頂点’を南米の最高峰アコンカグア山になぞらえた。 |
ワタシなんざ7000m以上の山として中学時代に覚えたけれど、ずっと後年、 |
6000m台に直されちゃったものの、それでもアジア以外では最も高い有名 |
な山。 |
なんたってタンゴのニュアンス横溢。どっちがいい悪いじゃなく、(1)のヒナス |
テラを真似たようなものとは明らかに違う。タンゴの編成を大きくしたという |
感じ。フルオケではないと思う。 |
音が厚くなった分、甘く柔らかくはなったが、ビターさはけっして薄まってはい |
ないと思う。 |
なんというか・・・当たり前だけれど、これぞピアソラ! |
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(3)前の二曲の間の期間に書かれた曲。 |
本来はバンドネオンのためのコンチェルトなんだろう。 ヴァイオリン用にアレ |
ンジされたものなので、ややクラシック寄りのサウンドも聴かれるが、まあ調 |
子はやっぱり中間だろうか。 |
遊び心だろう、⑧冬と⑩夏にはヴィヴァルディの「四季」のそれぞれの季節か |
ら有名メロディが顔をのぞかせる。⑧ではパッヒェルベルのカノンみたいなの |
も。⑨⑩はタンゴらしさと臆面もないロマンティシズム。エンディングも面白い。 |
ほかにも引用がありそうな気がする。 |
タンゴとヒナステラの薫陶を得たオーケストレーションの合体のみならず、この |
感性/個性のすばらしさは、筆舌に尽くしがたい。 |
これも名曲ではないか。 |
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時々聴きたくなるピアソラ。こういうオーケストラの編成の生演奏を聴く機会 |
なんて、きてくれそうもない。 |
このCDでの演奏、とてもよかった気がする。ゲレーロという指揮者がツボを |
心得ていたのだろう。この人どこの人なんだろう、ライナーには書いてない。 |
ベネズエラの例のシモン・ボリバル響とはつながりを持っているようだという |
ことはなんとなくわかった。ベネズエラ出身なのかな? |
オケも録音もシャッキリ。 |
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考えてみると、7月21日に名古屋で聴いたヒナステラの「エスタンシア」、これ |
は4曲ほどの組曲で、本来フルでは10曲ほどもある。それを知っているから |
物足りなかった。これもねぇ、フル・ヴァージョンはもうCDでしか聴けなかろう |
ねぇ。仏印象派やストラヴィンスキの影響が濃い作品1の「パナンビ」も・・・。 |
貧乏ジジイの妬み・・・ |