休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

テッド・チャン/あなたの人生の物語 3-3

テッド・チャンあなたの人生の物語
 Ted Chiang/Stories Of Your Life And Others
1、「バビロンの塔」(The of Babylon, 1990)浅倉久志 
2、「理解」(Understand, 1991)公手成幸 
3、「ゼロで割る」(Division by Zero, 1991)浅倉久志 
4、「あなたの人生の物語」(Story of Your Life, 1998)公手成幸 
5、「七十二文字」(Seventy-Two Letters, 2000)嶋田洋一 
6、「人類科学の進化」(The Evolution of Human Science, 2000)古沢嘉通 
7、「地獄とは神の不在なり」Hell Is the Absence of God, 2001)古沢嘉通 
8、「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」  (Liking What You See:
    A Documentary, 2002)浅倉久志 
  「作品覚え書き」(Story Note)古沢嘉通 
  解説:山岸 
  2003年/ハヤカワ文庫/SF短編集/(近所の本屋にて)



7、「地獄とは神の不在なり」
これも中編。神のご意思の話。
その気まぐれな恩寵やら試練について、この世界じゃうんと具体的で、
天使の降臨という形を採ってどんどん起きる。たまに堕天使も降る。
しかるに人は試練にすら恩寵を感じるというオカシサ。
なんと、天国のみならず地獄も具体的に表現される。
面白いかどうかよくわからんが、今とのずれ方が猛烈でかつ非常に刺
刺激的であることは確かやね。
ライトシーカー(光が伴う降臨に立ち会い、それを追いかける人)になっ
た主人公。もともと身障者で変にねじ曲がった考え方を持つ者だが、最
愛の妻を亡くした後、神を愛する動機や理由について、さらにねじ曲が
った論理を、周りを巻き込みながら展開する。彼がかかわりを持つ人々
自身もなかなかややこしい。これが最後まで続く。
天使の降臨は、恩寵とともにまるで歩留まりとでもいうように死人も出て、
アメリカ中部をよく襲う竜巻みたいなのね。
結論は?
オフクロはこの頃体力的な問題で教会に行っておらず、教会の情報は
教会員が届けてくれている。とまあ、それはともかくとして、そこの若い
牧師はミステリー好き(これは一応知っている)で論客らしい(この点は
よく知らない)。ミステリー好きな牧師がいたって何の不思議もない。彼
にこの物語(宗教談義)を読ませて、なんと言うか訊いてみたい気がし
た。それが結論かい?と言われるとちょっと恥ずかしい。
聖書では確か「神を試してはならない」ってことだった。牧師を試すのは
どうなんだろうねえ・・・。 
関係ないけど、下世話を知らない牧師なんてあまり人を導けそうでない
気はする。(彼はそうじゃないと思う)
えー、読んでもらって感想を聞くなんてこと、実際にはしません。
                             <★★★△>(7/21)
8、「顔の美醜について  ドキュメンタリー」
ドキュメンタリーってのがふるっている。
「もし、人びとが外見でお互いを判断しないような環境に住むこと
ができたら? もしそうした環境で自分の子供を育てることができた
ら?」
その仕組みの呼び名は“美醜失認処置”。脳の神経を弄る技術やね。
ある大学で使われ始める。追随する大学も。学生会議の議題で、採用
するしないの投票があるらしい。
ある女学生がそれをセットしてみたら・・・外してみたら・・・などと、10組
に満たない関係者のインタヴューのようなもので構成されている。
中には学生のみならず先生たちのコメント、化粧品会社のPRの文章な
どもある。
面白い切り口がネタの話。真面目に考え始めると、実にいろいろな問
題を含んでいることがわかってくるんだ、これが。
単純には、例えば、個性や平等の考え方に、とか、意識せず知らずに
優れた形質ないし遺伝子を生物学的に選択してしまう仕方に、とか。
そう、美の感じ方ってのは深い。それをストップさせたらどんなふうにな
るか、またそれを外したらどんな影響が出るかってのを小説にしちゃっ
た。全体的には道徳・倫理・礼節などの真面目な反応の出てくるウェイ
トが高いが、なんだかなあ、結論的にはノンシャランな色恋系で幕が
引かれる・・・
ただ投票に大きな影響を与えるのは、上記化粧品会社がある女学生
のスピーチ映像を流したこと。(ま、今と同じ、メディアのかかわりかた)
ほかにもね、、相貌失認(処置)など失認処置は色々あることになって
いる。
そのときそのときの社会が茶々を入れるので、話が複雑になりがちで
すが、実際は生物としてのありように大きくかかわることで、案外単純。
だから根が深いとか浅いとか言えるものではないと思うのですが、一
応なにか反応したくなりますね。
でもでも、正直なところ面白いかどうかよくわからなかった。すごいのは
これを小説にしちゃったことかな。
小説として・・・成立してますかねぇ。
なぜか、あらかた忘れてしまっているはずのS・レムを連想しました。
(星の数は甘い)
                              <★★★>(7/27)
「作品覚え書き」
数学や物理学への興味が強い方のようだけれど、4や5から、言語(の
想像的力)に関する興味はそれ以上のよう。(実はそうでもなかった。)
7は聖書の知識がもう少しあったほうがよかった(ワタシのこと)かなぁ。
8、こんなものがあったら、作者と同じで、試してみたい。
この覚書を読んだら「あちゃー!」なんじゃないかと心配したけど、書くき
っかけになったものをちょっと教えてくれる程度で、具体的に中身に繋が
るものはほぼなかった。
もうちょっとわかりよけりゃあなあ。
チャンが最も評価しているというのがグレッグ・イーガン。昔っから読み
たいリストに入れていた作家で、いまだに果たしていない。もうほとんど
忘れていたけどね。イーガンの作風は・・・
形而上学の領域へ科学が手を伸ばし、人間の問題をハードSFとして
扱うことを可能にした”
チャンさんもその点を称賛しているんだそうな。
ワタシのようなノータリンにはイーガンも難しいかもしれないが、またイ
ーガンの名が浮上。(もう読まないか)

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            (これは映画の写真。〈4〉のエイリアンの例の‘文字’の一つなんやろうな)