
| 井上章一/「京都ぎらい」 |
| (一) 洛外を生きる |
| ・京都市か、京都府か |
| ・さまざまな肥やし |
| ・京都弁の「桃太朗」 |
| ・山科もきらわれて |
| ・宇治もまた、ゆるされず |
| ・首都のメディア、におだてられ |
| ・山の彼方の空遠く |
| ・ハゲとデブ |
| ・京へいく老人たち |
| ・KYOTOがしめすもの |
| ・ブラジルの日本像 |
| (二) お坊さんと舞子さん |
| ・芸者か、芸子か |
| ・呉服と映画の時代は、すぎさって |
| ・姫・坊主・姫・坊主 |
| ・ミニスカートにそそられる |
| ・男を忘れた僧侶たち |
| ・女色に食傷する、その日まで |
| ・檜舞台の舞子たち |
| (三) 仏教のある側面 |
| ・北山の大伽藍 |
| ・写真とイラスト |
| ・ライトアップでカップルは |
| ・「古都税」闘争 |
| ・庭園秘話 |
| ・「おもてなし」をさかのぼる |
| (四) 歴史のなかから、見えること |
| ・皇居という名の行在所 |
| ・京都で維新を考える |
| ・落日の鞍馬山、そして嵐山 |
| ・京都をささえた江戸幕府 |
| ・江戸と京都の建設事情 |
| ・「五山の送り火」と言いなさい |
| ・銀座のさきがけ |
| (五) 平安京の副都心 |
| ・嵯峨、亀山、小倉山 |
| ・南朝の夢の跡 |
| ・南北朝と嵯峨室町 |
| ・鎮魂の寺 |
| ・天龍寺と法隆寺 |
| ・オカルトからは、ときはなたれて |
| ・儒学者と講釈師 |
| ・日の丸、君が代そして靖国 |
| 2015年9月/エッセイ/朝日新書/中古屋 |
| <★★★> |
| (「BOOK」データベースより) |
| あなたが旅情を覚える古都のたたずまいに、じっと目を凝らせば・・・。 |
| 気づいていながら誰もあえて書こうとしなかった数々の事実によって、 |
| 京都人のおそろしい一面が鮮やかに浮かんでくるにちがいない。洛 |
| 外に生まれ育った著者だから表現しうる京都の街によどむ底知れぬ |
| 沼気(しょうき)。洛中千年の「花」「毒」を見定める新・京都論である。 |
| ベストセラーものです。世界に冠たる京都を扱っておけば無難・・・ |
| 洛外(といっても京都)で暮らす者が眺めた洛中絵巻・・・ |
| なにかの禁忌に触れるかもしらんが、なに、今まで言いづらくて封印 |
| されて来たというだけで、どうということもない、知ったことか、と恨み |
| つらみをぶちまけてみようという感じ。少なくとも前半は。 |
| 本来は建築史の先生なんだけれど、突拍子もない切り口で猥雑なも |
| のを書かれるので有名。 |
| うまいところにめーつけはった。これは旅情なんぞの裏にあって気付 |
| かれることのほとんどない京都の「毒気」(これが‘沼気’ってわけで |
| しょう)。 |
| ご本人は洛中といってもいい?右京区花園というところで生まれたが、 |
| すぐにずっと西の嵯峨(これははっきり洛外、ここから洛中へ肥〈コエ〉 |
| 汲みに行っていたという恥ずかしき田舎)に移って育った。洛中者が |
| 明らかに優越をひけらかす態度にわだかまりを覚えつつ大きくなった |
| のね。 |
| 洛中同士では、‘西陣がなんぼのもんやね’などという洛中内での見 |
| 下し合いもあるようなんだが、とまれ、そんなイヤーなものの正体を暴 |
| いて、白日の下に晒してやるぞー!なんていうヘンテコリンな読み物。 |
| (差別発生のメカニズムを解明し?)恨みを晴らそうというわけ。 |
| 杉本秀太郎――高名なフランス文学者で、先日ワタシ「ペレアスとメリ |
| ザンド」でかなりがっかりの翻訳を読む羽目になったんでした――や |
| 大立者梅棹忠雄に小ばかにされたのが、よほど腹に据えかねたとい |
| う体裁をとって書き始められる。根は深いが皆さんはコミカルに受け取 |
| ってくださいねと、ほとんどおふざけのような内容になっていると思う。 |
| で、見つけたネタを調べてみるというと案外つまらなかったりする。これ |
| では京都人(洛中人)は少しもキズつけられないではないか、と落胆し |
| て見せる。で、ほかにもあるやろ、なんぼでもという感じで続く。 |
| 鼻を明かしてやりたいという雰囲気を、時々興を繋ぐために確信的にわ |
| ざとらしく振り撒いている。まあ、オモロイ。 |
| 以下、まことしやかな言及が続く。建築史の学者先生というよりはほと |
| んどなんでもござれの(文化人類学者ふうな)奇人変人に近い好事家 |
| として、面目躍如。 |
| 後半(三)(四)(五)には想像力たくましい歴史解釈がちりばめられて |
| いて、思わず信じそうになったもの、いくつか。 |
| 例えばお寺というものの別の側面。林業や景観管理。ホテル業。庭園の |
| 作成や追及、精進料理の開発、などなど。 |
| しかし、 |
| 鼻を明かしてやりたい理由は、始め以外に述べられているだろうか? |
| 見つけたネタは(歴史に関する作者自身の蘊蓄や想像)は、鼻を明か |
| すことに、役に立ったろうか? |
| 差別発生のメカニズム、書かれている? |
| そしてこれはちょっと真面目に言いたい。エラそうにすみませんが、先生 |
| の日本語、かなり粗い。関西弁~京都弁(のアクセント)で書いているイ |
| メージではあるけど、ひょっとしてわざと粗くしてはるの? |
| (関係ありませんが、ワタシは喋り言葉を10数年前から、関西弁に戻 |
| しました。それまでは標準語風でした。) |
| 「靖国神社」「国歌や国旗」などなどの著者の認識は面白かったし、賛 |
| 同もしますが、本筋と繋げるには丁寧な説明でもないと・・・ |
| 観光ではなんだか日本一どころか世界一の人気とかいったデータがあっ |
| て、住む人たちはきっと鼻が高かろうが、外国人には、この著者の微妙 |
| な鬱屈は簡単には伝えにくいかもね。 |
| それにね、見下しや妬み嫉みなんか、人間の根源的なものに根ざしてい |
| るからどこにでもあることで、ここが世界に冠たる大京都でもなければ、 |
| なにもねぇわざわざ紹介するまでもない。本来伝える必要はないような |
| ものだけれど、関西弁や京都弁のニュアンス以外は翻訳可能だろうか |
| ら、試しに外国でも出版してみたら? |
![]() |
![]() (5/7付朝日別紙GLOBEから)
「これでご本人はんも朝日新聞出版はんも儲けはったんやさかい、よろ
|
| しおすなぁ。 |
| けど、このままではわてらかて引き下がれまへんさかいな、覚えときな |
| はれや・・・」 |
| と洛中人が言ったかどうかはしらんが、そんなふうな言葉も交わされた |
| ようなきーがしますな。 |
| なんちゅうたかて、ヒトは周りと区別する、差別するのはモノを食うのと |
| 同じぐらい好きで、当たり前のことやさかい、京都がほれ、見てみい! |
| こんだけいやらしいのんよ、ワタシ嫌いなんよ、ということを特別にうま |
| いこと描けたかというと、それほどでもないんちゃうやろか。 |
| まぁ鼻に皺よせたんは洛中の人だけなんちゃう? |
| けっこうわろたんですよ。ホンマです。 |
| ※ |
| 天下のNHKのドラマでも関西がよく舞台になるんだが、 |
| 関西弁のアクセントのはほんとに閉口してしまう。 |
| 役者さんが一生懸命教えられたアクセントを守って喋 |
| ろうとしているのはわかっても、間違っているものが多 |
|
すぎて、ドラマどころではなくなってしまう。ワタシの場
合無視するのがきわめて難しい。
|
| まあどこの地方でも同じだとは思う。 |
| でもなんとかもっと精度を上げられないもんか。 |
| ※ |
| 大阪以外でも、奈良、和歌山、兵庫の瀬戸内側、徳島 |
| なんかはわりと似たり寄ったりのところが多いが、ワタ |
| シの感覚では京都は結構違ってたりするね。大阪弁を |
| つい関西弁の代表としてしまうのがアカンのやろうが、 |
| えっ?と思うことたびたび。おそらくそれなりの面白い |
| 文化人類学系の分析や見立てがあるんだろうな。 |
| 古い話ですが学生時代にいた下宿に京都のヤツが一 |
| 人いて、ちがうなあ、こいつホンマに関西人やろかとよ |
| く思った。関西人やけど京都なんやねと、いちいち頭の |
| 中で調整したもんです。 |
| ・ |
| この前の映画鑑賞記の時に『バカの壁』というタイトルを使った。もちろ |
| ん養老先生のベストセラー本のタイトルで、‘都市化’等々、なんにでも |
| 使える面白い概念なので、これまでにもいろいろ使ってきましたが、壁 |
| シリーズの新刊が出たみたい。それが『京都の壁』なんだって。 |
| 出版社の発想やろね、きっと。 |
| ・ |
| ここから京都へは結構時間がかかるので、苦手の早起き必須。ポイン |
| トも決めないといけないですね。 |
| とかいいつつ、お誘いがあれば行きますんで、ヨロシク。 |

