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「蛇を踏む」という賞を受けた小説集の次のものではなかったか。 |
タダみたいな処分品の篭にあったのをつい拾いあげておいた。 |
先日読んだSFめいた長編の影響でしょう。 |
‘初期短編集’(掌編集)の一つ。 |
で、文章~文体は、ああこれこれという感じ。 |
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帯はこうです・・・ |
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・カフカが性をテーマに小説を書いたら、こんなふうになるのだ |
ろうか。しかも透明な気配が満ち満ちている。セックスと清ら |
かな透明さ。なんという不思議な共存だろう。(亀和田 武) |
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・恋愛小説の極北と断言できる。距離を決して埋められないの |
に、いわば心根を尽くして寄りそい抜く恋の姿、その切なさの |
諸相がここには描かれている。決して甘くない。むしろ噛みし |
だくほどに苦みの増す恋の滋味だ。(清水 良典) |
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絶対にややこしい文章にしない、言葉も平易なものしか選ばない |
のに、人の行為の文章化、思いの文章化がなされると、こんなに |
も独特。 |
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たとえば・・・ |
「溺レる」の恋人同士とも言いにくい男女の奇妙キテレツなミチユ |
キ。なにかからなぜ逃れるという当初の理由はどんどん曖昧にな |
り、二人で‘ただ’逃げているだけの状態になったまま、ずるずる |
時間がたって行く。ちょっと、ロードムーヴィーふう。 |
ほとんど彼女の視点から見たもので、なんでこんな男についてゆ |
くんだかってのももちろん曖昧でヘンテコリンだが、なんといって |
も、彼女のよって立つところのモノのなさは、いわく言い難い。な |
にからなにまで宙吊り。それが帯文の‘カフカ’なんだろうか。 |
こんなアンニュイとでもいうのかな、彼女の感覚がどの編にも、薄 |
い墨を流したように覆っている。 |
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帯の惹句になかったら、カフカの名は思いつきもしなかった、きっ |
と。 |
虫なら「神虫」に出てきたが、ゴレゴール・ザムザを思わせるもの |
じゃなかった。ここでの虫はどこか‘孤軍奮闘の閻魔様’。 |
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交情がどんどん激しくあけっぴろげになっていったり、語り部本人 |
が幽霊になってみたりする。よせばいいのにやっぱり男を相手に |
する。カタカナで書かれる男はいつだって勝手で無理解。 |
そして女の曖昧さは終始変わらないみたい、何もつかむことがで |
きないみたい。しまいにゃ不死になってしまう。不死だよ! |
で、男との距離はどうなの? というところだけど、それはまあ、書 |
かぬが花。ワタクシメは‘寓意’はほぼ感じなかった。 |