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本を読む前、このピアニストについては、著者紹介にもあるNHKのド |
キュメンタリーを見た印象から、そんなに変わっていないなかった。 |
演奏も少しはきいて、古臭い表現だなあ、と思った程度。有名になら |
れたことはもちろん知っていた。 |
読んでみて、それ、変わりましたね。 |
人を知るということはこういうことでね、中国や韓国やましてや「北」 |
は苦手だが、人を知ってしまえば、その人のことは好きにならなくて |
も、認めて近しい感じにはなる。 |
そういう感覚そのものなのか、それより深いものになったかはよくわ |
からない。 |
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そのドキュメンタリーがいかに強烈だったかは、ご本人の生活の変わ |
りようを述べている中身によっても、非常によくわかる。 |
ピアノを中心とはしているが、部屋の中をよろよろとうごめく老婆(いや |
老婆に思えたが実はそんな御歳ではなかったんやね)。聴力障碍の |
こと、ネコ、ベジタリアン、タバコ、独身。 |
そのドキュメンタリー、主にパリだったような記憶があるが、この本に |
よれば下北沢だったんだ。(ウーン、そうだっけ・・・) |
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ともあれ、まさに波乱万丈の自伝。 |
犬猫何匹かを連れて下北沢に移ったが、「再スタート」後の今はパリ |
が根城らしい。猫35匹は今はどちらにいるのだろう。 |
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もうかなりの年齢だと思うが、コンサートはちゃんとやっておられる。 |
ごくごく最近もコンチェルトの大曲の広告が新聞に載っていた。外国 |
のオケ。「再スタート」が切れたときの録音はリストとグリーグのコン |
チェルトや、「ラ・カンパネッラ」。 リストやショパンへの愛が強いが、 |
ラヴェルが最後に住んでいたあたりに住みたいといろいろ頑張って |
みたというように、ラヴェルもお好きで、「ソナチネ」のことも出てきた |
し、なんと、なかでも「クープランの墓」なんだって。どちらも大好きな |
ワタクシメはそれを知っただけで他愛なくフニャフニャになりました。 |
ラヴェルを描いた短い小説を2年ほど前に読んだとき、このラヴェルの |
終の棲家、ワタシもどんなところなのか気になったのでした。何かで |
その家のデッサンのようなものを見たことがあるんだが、上記の本 |
にそんな挿絵はなかった。どこで観たんだっけ。 |
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少々音を外すことなんてどうってこともない、機械のように早く引くな |
んてことにも興味がない。要は中身。音楽がすべてで、音楽にすべ |
てが入っており、それを伝えるのが自分の天職なんだという。そのピ |
アノ演奏にはご自分の生涯が反映されていると、聴いた人からたび |
たび言われるのだが、その辺はどうもよくわからないんだって。 |
彼女はピアニストとして遅咲きながら、とうとう幸せになられたんだ |
な。 |
おしまいには、世界のテロなどのニュースに、死んでしまいたいほ |
どの衝撃を受けるとともに、体や体力のことはご本人も気にしてい |
る。ちゃんと今生きておられる。 |
人生の応援の書になっているけれど、こちらからも、がんばってくだ |
さいと言いたくなった。 |
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妹がよかったらどうぞと置いていった本。妹も誰かにもらったらしい。 |
ほっとくのもナンだ、すぐ読めるだろうと、とっかかったらたちまち読 |
了。ずるいね、ピアニストである妹も。こりゃあ、文句が言えない類 |
の本じゃないか。 |
そして、長男も最近この本の印象を彼のブログに書いていたんだっ |
た。音楽家として読んだようで、前を向いていこうという意志と鬱屈 |
がもろに同居した感想文になっていた。ただ聴くだけのオレだとそ |
んな読み方にはならないわけだ。「そんなふうに感じたんだよ」なん |
て、あいつとは話し合ったりすることはないんだろうな・・・
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