休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『サウルの息子』

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20161026(了)
映画『サウルの息子 Saul fia(Son of Saul)
  監督・脚本:ネメシュ・ラースロー//ルーリグ・ゲーザ他
  2015年/ハンガリー/107分/DVDレンタル
  <★★★☆>
1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所での話。
ドイツ軍から、特殊な任務で別扱いされ、同胞をガス室に送り込むことを
仕事としたユダヤ人たちがいて、ゾンダーコマンド、つまりずばり特殊部
隊と言われた。
そして彼らも数か月たてば、抹殺されることになっていた。
ゾンダーコマンドであるサウルだけにピントを合わせたような画面で通す。
シャワーと偽って素っ裸になったユダヤ人をガス室に押し込めて殺すが、
服を持ち物と分けて片づけた後は鉄扉の外でゾンダーコマンドは中のユ
ダヤ人の阿鼻叫喚を聞きつつ死を待つ。扉が開けられたら累々たる死体
を素早く運びだし、ガス室を清掃し、焼却後の灰を川に流す。すべて小突
かれ叱咤を受けつつ・・・。 
死者の一部は研究と称して解剖されるが、それをやるのもユダヤ人の医
者。
こうしたことの繰り返しが流れ作業的に行われるのを、揺れるカメラで追
いかける。
それら、何とも言えない作業手順の描写!
 
そうした中で、これは本当の息子なのかどうかよくわからないのだが、サ
ウルは息子とおぼしき男の子が死んでいる(死ぬ)のを見つけ、ユダヤ
に然るべく祈りをラビに捧げてもらって、埋葬したいと意固地にこだわり、
シャカリキに奔走する。この奔走が、本来ならちゃんと進んでいくわけもな
い状況下、遅々として進まないかというと、実はそうでもない。その紆余
曲折が(バランス的にはけっこう奇妙なんだけれど)映画のストーリー(≒
推進力)である。
ドイツの終戦も近づいている。果たしてどんな結末が、、、という感じ。
強烈過ぎて、困ってしまう。
ゾンダーコマンドたちの立場のむごさ、流れ作業のむごさ・・・観たい?
ここまで見せてしまう映画だとは思わなんだ。
アカデミー外国語映画賞、カンヌのグランプリなど、華々しいが、70年や
そこいらでは(≒こんな映画が繰り返し作られた日には)、ドイツにとって
ユダヤ人にとっても、戦争は終わらないんだな。
その感覚や記憶を持ち続けるのが業のようなもので、前の世代のことだ
と目をつむってしまっては、確実に繰り返す可能性がいや増す。
そんなことしか言えない、そう思うしかないではないか。
 (ドイツも日本も鬱陶しいことこの上ないけれどねぇ、こういう映画、作り
  続ける意味は、残念ながら、認めます。)