(「BOOK」データベースより) 風変わりで型破りな野性的言語学者にして文化人類 |
学者である著者が、遊牧のような旅を綴った叙事詩的エッセイ。未知の土地を |
転々と訪ね行く旅は、やがて点描となって、異国の人々の生活そのものや、彼 |
らが生活している風土・環境、ことばを、鮮やかに映し出す。 |
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著者は、大学の先生だがよくわからない方。でもまあこの本では基本的に「旅行 |
者」。(1937-2015年) |
40年間もの長い間著者の知り合いだったという少々口の悪い婆さん小説家(金 |
井恵美子さんのこと)が、著者が亡くなって追悼記事を担当されたのがほぼ1年 |
前。その記事(写真)に触発されて1冊手に入れておいたもの。 |
35~40年前だろうから、今となっては少し古い(本も黄ばんでいる)旅行記/エッ |
セイ。 |
早稲田の先生でもあってこういう旅行記なんだから、同じ早稲田出の自称秘境 |
冒険家の高野秀行さんや探検家角幡唯介さんの先輩格なわけで、彼らともひょ |
っとしてかなりのお知り合いなんじゃないか。 |
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始めのハイチ旅行からして、文章にヴァラエティに富んだ形容が多く、そのおし |
まいのヴードゥーの儀式見物まで、一貫、独特のうんと黒っぽい異様な雰囲気 |
が充満している。表現が濃厚。こりゃなかなか大変な旅行記やなあと、ちょっと |
覚悟することになった・・・。 |
結果的にはそんな覚悟なんてものは不要で、濃い内容のわりには、一つ一つが |
短く、苦労せず読了。 |
中でもアフリカ関係の文章がいずれも強烈で、なるほど、金井さん書くところの |
「レンズの目」。きわめて自然、かつ鮮やか。 |
この先生いったいいくつの言語を喋れたんだろう。 |
(解説の漫画家楳図かずおによると、アフリカ語だけで30種類だって書いてあ |
った。) |
ここではとくにケニヤ(ナイロビやモンバサ)には長く住まれていたようで、腰を |
落ち着けている感じ。研究の合間に書いていたんでしょうが、一文一文の切り |
取られ方が見事でね、一つ一つが重い。 |
その公平な視線、視点、その醸される雰囲気の感覚に、まるで立ち会っている |
みたい。感服。 |
皮肉を語らない。ニヒルだところが全くない。特に変わった文体というわけでも |
ない。 |
最後の「サンフランシスコ」だけは、文庫として出す時に加えたもののようで、 |
1983年とある。 |
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すいすい読めたものの、「35~40年前」というと、ずいぶん前で、今はどうなって |
いるんだろう、特にアフリカ。 |
イスラムが多いのはもともとだけれど、過激なテロ集団と化してISに追随する輩 |
のために、ずいぶん変わっているに違いない。 |
もし先生が書かれるとしたら、どんなふうに描かれたろうということが、気にはな |
った。 |
未開なところはどうなったか、そもそも未開なんてところは残っているのか、スラ |
ムの子供たちはどうか、人工的な成り立ちのナイロビなんていう大都会はどう変 |
わっているのか・・・、この本ですっごく伝わってきた‘アフリカの(ケニヤのでもい |
い)「情」のありよう’はどうなんだろうか・・・
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