休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

E・M・トーマス/「猫たちの隠された生活」

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20151202(了)
エリザベス・M・トーマス/「猫たちの隠された生活」 The Tribe of Tiger
  第一部 肉を食むものたち
  第二部 昔ながらの流儀
  第三部 新しい流儀
  1996年3月/エッセイ(博物)/単行本 ⓒ1993/草思社/中古
     <★★★★>
もう20年以上も前の作品で、「犬たちの・・・」の続編。「犬・・・」のほうを読んだの
はいつのことだったか。
昨今の猫ブームのせいか、目について拾い上げた。
(Bookデータベースより) 猫は何を考えているのか。人間をどう見ているのか。他の
猫との関係はどうなっているのか。彼らの行動の背後には何があるのか。人類
学者が、トラやライオンなどとの対比を通して、「狩りをする」動物、猫の本質に
迫った無類に面白い猫の本。
底流的に友人の飼うピューマを置いての、猫族全般にわたる観察や考察。
非常に醒めて落ち着いた記述がすばらしい上に、非常に広い愛情を感じる。そ
れに、「よくわからないが」と書かれていても、フィールドワークに基づいているか
らか、説得力が抜群。進化の知識もちゃんと持っておられる。それでも、やっぱ
り愛情、かなぁ。人類学者としてアフリカと縁が深く、フィールドワークもそこでの
ものが多い。
昨今のネコブームを切り捨てるつもりはさらさらないものの、なかなかドラマチッ
クで切り口鋭い猫族の説明で、猫を見る目が変わるかもよ、とは言えるね。
人の側がいかに思い違いをしているかはあきれるばかり。人からすれば、社会
(性)のちがいがあまりに大きく、社交(性)などかなりわかりにくいのですな。
具体的には、殆どの行動が「狩り」の擬態なんだなどという野生の捉え方が、わ
かりよく書かれていて、いちいち腑に落ちる。
テリトリーというものの考え方、持ち方、棲み分け使い分けも不思議がいっぱい。
食べ物のことが中心にはあるのだけれど、餌としての人間、餌を与えてくれる人
間も、ともにテリトリーという概念で捉えているとかね。
飼い主にひっかける尿なんてのもそうなんだって。(そういや犬もションベンをひ
っかけることあるけどなあ・・・)
基本的に、本能の出方の確認やその考察記録。帯の惹句よりはるかに深い。
特にライオンの観察記や経験は詳しくって、迫力満点。
昔、親父の本でアダムソンの「野生のエルザ」(シリーズがあった)を子供の頃読
んで面白かったけれど、そこでやっていたことや観察とは違って、ここのは一層
考察が行き届いているように思う。
などと思いながら読んでいたら、‘びっくりポン!’、当のエルザのことが出てきた。
ジョイ・アダムソンさんや夫で俳優のビル・トラヴァースさんともきっと面識があっ
たんやろう。
理解しがたいほどの『自制心』というのもビックリ。 「第二部 昔ながらの流儀」に
くわしい。思い浮かべるライオンの顔が「思慮深さ」という言葉と結びついて、妙
にもっともらしい感覚すら覚えるね。
さても、大型猫族(意外や‘安定を望む’!)の未来は、、、なんだか暗い。もちろ
ん、人為的な環境の変化による。
家猫、ライオンに続いて、虎やピューマなどが取り上げられて、見聞や考察が
綴られて行く。ライオン系とトラ系の性格の違いなど、目から鱗
引用したい箇所だらけになってしまったので、文章の抜書きはヤンペ。
先に出た「犬たちの隠された生活」 ほどでなくても、かなり売れた本のはずで、
ぼんやりした記憶によれば、この猫族の本は、評価が高かった。
「犬・・・」のほう、読み返してみたくなっちゃった。(もう処分して、ない。そこの図
書館にも確かなかった。)
こんなの、今は普通の知識だよなんて言う方もおられるのかもしれないが、ワ
タシとしては未読の動物好き、猫好きにはぜひぜひ薦めたいと思った。
家猫の背景がどーっと広がります。