休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

クラム/Vox balaenae

イメージ 1
20151028(了)
クラム George CRUMB(1929- )
 
(1)鯨の声 Vox balaenae for Three Masked Players
  ①(フルート、チェロ、ピアノ)〈1971〉 18:50
(2)フェデリコの小さなわらべ歌 Federico's Little Songs for Children
  ②~⑧(ソプラノ、フルート、ハープ) 〈1986〉 13:25
(3)印象 第3集 「私生児のための牧歌」⑨(フルート、打楽器3人)
  An Idyll for the misbegotten,“Images Ⅲ”〈1986〉 9:51
(4)秋の11の木霊 11 Echoes of Autumn,“Echoes Ⅰ”
  ⑩(ヴァイオリン、アルト・フルート、クラリネット、ピアノ)〈1965〉 17:36
 
  ロバート・エイトケン(指揮&フルート)/ニュー・ミュージック・コンサーツ・アンサンブル、
  テリ・ダン(ソプラノ)ほか
  録音:2003年4月&2004年9月、カナダ、オンタリオ、キングシティ、
      CBCグレン・グールド・スタジオほか Tot.59:42
  2006年/CD/現代音楽/室内楽/NAXOS/輸入/Net/中古
 
  <★★★☆>
 
なにか現代ものをと思って選ぶ。名前は昔から知っている米国の作曲家。
CD1枚丸ごと聴くのは初めて。
NAXOSのHP.には紹介文に当たるものがない。
先入観なしに聴けるというもんだ、と書きつつ・・・
 
ジャケット裏に短い英文が通常載っていて、これを大雑把に見てしまう・・・
ブックレットの中の横文字はパス。
音楽の中身のことは何も書いていない。どんなに有名であるとかどんな賞
を受けたとか、せいぜいなにに触発されたとかいったことがあるくらい。
 
ここに並んでいるのは、フルートが出てくるという括りで選ばれた曲のよう。
もともとこの作曲家の曲の多くは小編成で、フルートや弦楽器に喋らせな
がら演奏させたり、演劇的なパフォーマンスを求めたりもすることもある。
(1)に for Three Masked Players なんてあるのもそうなんだろう。
神秘主義的、悪魔主義的などという言われ方もする。
 
(1)フルートを吹きながらエイトケンが唸る。
録音した鯨の声に触発されたもののよう。
フルートもピアノもチェロもamplifyされたもの、勿論声もだろう。
声はうがいの音が響いているよう、全体的には中東の感じ。
少しだけドビュッシーのような匂いがするのは、武満に似ていて、なにか
繋がりがあるのかな。この感じはどの曲にも言える。
 
とはいえどの曲もたびたび聞けるような音色はなく、まあ、言いようによっ
てはかなり美しい。
(2)のようなドイツ系現代音楽のような歌(といっても詩はロルカ)は、ワタ
シは例によってあまり理解したいとは思わないが、まあ違和感はあっても
懐かしいような声の扱いで、単なる楽器音として聴いておれる。
(3)でもエイトケンは少し喋っている。何度かドビュッシーの‘シランクス’が
聞こえる。時々ティンパニが爆発する。ひそひそした喋りは少し煩い。ティ
ンパニも十分煩いけどね。
(4)は木の精のお喋りのような(?)曲・・・ と言っておけばいいようなものだ
けれど、ひっそり閑として、音色は美しく懐かしい。いや、文字通り「なつか
しい」気がするのです。
ピアノの低音をドスンドスンと鳴らしたり、弦をいじくったり、木の部分を叩い
たり。そのほかどの楽器もささやき声も、森の生き物たちや物音のイメージ
的なものを模しているみたい。
 
ワタシは(4)がいいかな。
いずれの曲も、抵抗感なく聴いておれるのに我ながらびっくり。若い時には
取り合わなかったでしょう。
そんなもんで、年を取れば、つい変わらないはずだと思いがちな感性がいろ
んなふうに変わってきてはいるんだなあ、という感慨みたいなものを、スロー
モーションでに棺桶に入りつつ感じつつ、というところです。意味論ではあり
ません、むしろ肉体的なことです。もちろんのこと、神秘主義的、悪魔主義
的なものなど感じられない。