休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

小野不由美/『営繕かるかや怪異譚』

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20151017(了)
小野不由美/『営繕かるかや怪異譚』
  ・奥庭より
  ・屋根裏に
  ・雨の鈴
  ・異形のひと
  ・潮満ちの井戸
  ・檻の外
  2014年12月/短編小説集/KADOKAWA/単行本/中古
  <★★★★>
今年始めに読んだこの著者の長編ホラー『残穢』(山本周五郎賞)と怖さが似
ているようでそれならおもしろそうだと思っていたところ、見つけて買い込んで
おいたもの。「遠野物語」の続きとして‘怪異譚’を選んだ。
怪談専門誌「幽」に連載されていたものをまとめたもので、まだ連載は続いて
いるらしい。
次が出たらまた読みたいと思うかどうか。
家に取りついているさまざまな状況の「霊」の話。実体を伴っているがごとくに
リアルさを感じさせる幽霊だ。
残穢』に出てくる「憑き物」は、独特のしつこさを見せるウイルスの増殖という
か、どこか数学的とでも言えそうな広がりを感じさせる、いやーな怖さがあって、
ぞくぞくしてしまったが、ここではそんな「広がり」はほぼ見せない。一篇一篇
がこじんまりとまとまって完結している。
で、ここに出てくる霊は、‘その後’は、たいがい、成仏させられたり、封じ込め
られたりするんじゃない。簡単に言えば、実害がないのであれば、むしろ共存
の方向で(!)解決していこうというふうに進みがち(って、言い過ぎかな・・・)。
それが面白い。
その奇妙な方向性の仕事を、若い営繕業者が、なんともさりげなくやってのけ
てしまうというお話のあつまり。
どちらの発想が先かはわかりませんが『残穢』とは兄弟分の関係でしょう。
いずれの話も出来不出来がないが、例えば、3つ目のものとか最後の篇など、
とりわけ印象深い気がする。
小野不由美さんの本は、宗教談義が絡んで、かつ異常に怖い大長編『屍鬼
を強烈に覚えている(といっても実はここに挙げた3作+1作ぐらいしか読んじゃ
いません)のですが、この小ぶりで繊細なお話達も、素敵です。日常とともに
ある身近な怖さの感覚は、癖になる感じ。
次のが本にまとまって、もし気が付いたら、まあ読むのは無理だとは思うが、
読みたくなるだろう。
(年齢のTPOなんぞに拘らない、悟らない‘じいじ’でおれますように・・・ )
 
残穢
http://blogs.yahoo.co.jp/rikoteki7iden4_jin_0127/63081815.html