休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

A・ビナード/「亜米利加ニモ負ケズ」

イメージ 1
20150129(了)
アーサー・ビナード/「亜米利加ニモ負ケズ」
  Ⅰ.アメリカにないアメリカン
  Ⅱ.泥にはまって
  Ⅲ.粗茶ですが
  Ⅳ.わらしべ流
    あとがき
  2014年4月/エッセイ/新潮文庫/単行本2011年(日本経済新聞出版社
  <★★★★△>
まずタイトルに惹かれました。
(裏表紙) 日本語を愛するアメリカ人、アーサー氏。その多言語的な視点で眺め
れば、世界の新鮮な姿が浮かび上がる。 賢治の「雨ニモマケズ」の元ネタを発
見!? “アメリカン”なラーメンの正体とは。一番好きな日本語はあのセリフ。詩の
みならず、短歌や能、落語などに深く精通し、母国の暴走と日本の迷走を心配
する・・・。溢れだす知識とピリ辛のユーモアが好奇心を刺激する、贅沢なエッセ
イ集。
短いエッセイのみで構成されている本。雑誌のコラムの集積だろう。
詩人だそうだが、どんな詩を書かれるんだろう・・・ ま、詩はワタシ読まないけど
ね。とにかくさすが詩人、言葉に関するネタが非常に多く、その扱いが優しくて、
上手! しかも切り口は鋭い。グサッと来るところもあるにはあるが、その表現が
大人! 
そして日本の理解が半端じゃない。その例とも言えそうなもの・・・
  「日本の食べ物に慣れましたか」と今でもたまに聞かれる。慣れるもなにも、
  ぼくは最初からすべてがOKだった。むしろ、どうやって二十二歳になるまで
  豆腐と納豆と梅干なしで生きていたのか、不思議なくらいだ・・・
一篇ごとが短いので、始めは掘り下げが足りない気もしたけれど、しばらく読み
進めると、これはこれで良しという感じになった。 よく推敲されているのだろう。
日本語がまたどうしてこんなに?というほど、めちゃめちゃうまいのである。
そして話がいろんな方向へ思いもかけないような転がり方をする。
もち! 転がり具合を楽しむ。
少々やばい話題も、ここまで理解が進んでりゃ、こっちは拝聴するのみ。
謡いを実際に習っていたりする。
文化の摩擦という扱いではなく、間に立って異文化同士の観察のしあいをすると
いった、ゆとりのあるスタンスを守り通している。難しいことなんだろうに、巧まず
して、という感じがまたよろしい。
言葉ネタの大好きなワタクシメには、安心して楽しめる上質エッセイでした。
この「安心」、そん所そこらにはない、稀有なんだということはわかっているんで
す。その稀有はありえないほどの理想。
ま、ワタシの段階では読んで「楽しむ」しかない。むずかしいグローバル化が本当
に必須になる未来の人たちは、せいぜい苦労してくださいな。
 
イメージ 2