休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

「赤瀬川原平の名画読本」

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20150111(了)
赤瀬川原平/「赤瀬川原平の名画読本」 鑑賞のポイントはどこか
1章 モネ 「日傘をさす女」
        なぜ日本人は印象派が好きなのか
2章 マネ 「オランピア
        伝統を切り崩した色彩の挑戦
3章 シスレー 「サン・マメス」 
        風景画を美味しく味わう
4章 セザンヌ 「座る農夫」
        画家の筆触が“自由”を求め始めた
5章 ゴッホ 「アルルの跳ね橋」
        “炎の人”が浮世絵から学んだもの
6章 ゴーギャン 「タヒチの女たち」
        南洋の島が教えた塗り絵の楽しみ
7章 ブリューゲル 「雪景色の狩人たち」
        報道絵画は路上観察の目で見る
8章 レオナルド・ダ・ヴィンチ 「聖アンナと聖母子」
        “微笑み”をそう簡単には描けない
9章 フェルメール 「アトリエ」
        “カメラの目”で描いたリアリティ
10章 コロー 「コンスタンティヌスのバシリカのアーケードから眺めた
      コロセウム」
        絵に近代の光が見え始めた
11章 ロートレック 「ムーラン・ルージュの踊り」
        世紀末パリの怪しげな魅惑
12章 ユトリロ 「コタン小路」
        モンマルトルで見つけた侘び
13章 マチス 「ピアノのレッスン」
        現代美術の源流をさぐる
14章 ルノワール 「ピアノによる少女たち」
        「名画」という名のヤラセ産物
15章 アングル 「泉」
        儀礼的に描かれた絵に魂はない
    文庫版のためのあとがき
    解説 安西水丸
    2005年4月/絵画解説/光文社 知恵の森文庫/1992年カッパ・ブックス/
     中古(ネット)
    <★★★☆>

このへんてこりんな芸術家の訃報や追悼記事(タレント/俳優の松尾貴史さん
や建築家藤森照信氏の朝日のコラム)を読んだ後選んで、手に入れてみまし
た。美しいカラー写真と文章。
アヴァンギャルドなもの、抽象などに、熱に浮かされたようになっていた時期が
あって、その頃は思想や理由がどうしても必要に思えたんだけれど、それがあ
る時から変わっていったという。
(3)のシスレーは大好きなよう。その文章の中に、確かその辺を述べていたと
思う。シスレーの絵って、ワタシなんざぜんぜん記憶がない。
(5)のゴッホも相当好きみたいやね。若いころの思い出が熱い。
ゴーギャンのところ(6)にも絵の好き嫌いの変遷を書いている。食べ物の“美
味しさ”と似たようなもんだってさ。
それから、直感を信じて、早足で見て回れって。
後期印象派3人の順はゴッホセザンヌゴーギャンだったが、これがある時期
を境にして好き嫌いの優劣がつけられなくなった経緯がある。割と安直で、「塗
る」ことの魅力に開眼したこと、絵は「思想」がなきゃならないわけではないこと
が分かったこと・・・。
ルネサンスから始まって、時代を追うごとに好きなものが変わっていって、現代
美術が好きという尖がった時代のあと、上記のようなわけで、戻っていくという
か、優劣がつけられなくなった。でも文脈からは、現代美術だけは同率首位か
ら大分順位を落としてしまったようである。
そうそう、最後の二人(14章と15章)が、ケチョンケチョンなのがおかしい。
全体の印象は、やっぱり赤瀬川さんの文章で、文意をどちらにでも転がせるよ
うな、やる気があるようなないような、いわばヌルヌルしたもの、という感じ。
解説の安西水丸さんも、基本的に赤瀬川さんの鑑賞方法(たとえば早足や味
覚!)に全面的に賛成なよう。この本は名著だって。ちょっとかわったことも書い
ていたので紹介すると、「音楽は視覚で感じ取る」んだそうな。なんかちょっとわ
かる気がする。その安西さん(かなりすごい論客だったんじゃないですかねえ)
も去年亡くなったんでした。
私ごと(当然)なんですが・・・
絵なんか好きかどうか自分じゃよくわからないし、絵を描くことは嫌いに近いくせ
に、高校3年ぐらいから結構いろんな展覧会にいって「鑑賞」したので、中学校の
教科書レベルの知識はあるつもりなんですけどね(今だって中学に「美術」くらい
あるんでしょ?)、赤瀬川さんの書くように、絵を見るときは、買う気になって見ろ
って言われるとさぁ、確かになるほどなんだよな、そう思って見たことはなかった
よ。覚えておこう。もっとも、これだけ絵が下手では、もともと絵心が不足した人
間であって、絵の鑑賞もちゃんとできない、ましてや「直感」なんて・・・ てな気
がしないでもありません。
  ※初めての展覧会らしい展覧会は「エコール・ド・パリ展」だったように思う。
   1967年、大丸百貨店、大阪のね。本来ならこの呼び名は、20世紀初頭、
   第一次世界大戦後にパリのモンマルトルあたりで活躍した画家の総称で、
   本来フランス人以外の画家を指すはずだけど、展覧会ではフランス人画家
   が半分以上だったんじゃないか。そんなこと、今更どうでもいいけど。
点数若干低めなのは、本がちょっと小さくもうすこし読みたいという不満が募る
ことと、絵がきれいなカラーではあるけれど、文庫だもの、やはり小さいことで
すね。
  ※続編的な本;
    「日本にある世界の名画入門」(カッパブックス