休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

A・マクリーン/「キャプテン・クックの航海」

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20140501(了)
アリステア・マクリーン/「キャプテン・クックの航海」
  CAPTAIN COOK  (1972)(越智道雄/訳)
    プロローグ
    第一章   上級水兵 
    第二章   消えゆく大陸
    第三章   ニュージーランドを地図に
    第四章   オーストラリアとグレート・バリア・リーフ
    第五章   南極大陸ポリネシア
    第六章   北西航路
    エピローグ
  1982年/ドキュメンタリー/早川書房/単行本/中古
  <★★★★>
映画「キャプテン・フィリップス」の次は、キャプテンつながりでこの本へ。
  いや、ホンマ。えらい違い・・・。
18世紀後半、イギリスとフランスが、まあもう一つ加えてスペインもかな、領土
を増やす覇権争いみたいな状況下だったこともあるなかで、できるだけ遠くへ
行ってみようというクックと、たまたま需要供給が一致した、みたいな言い方で
はみもふたもない、つまらない。そうはしていない。
12-3年間の間に約三度も海洋の大冒険旅行をやってのけたキャプテン・クッ
クの航海を追いかけてみた本。1回の航海は平均3年以上!
領土のこと以外にもいろいろ目的があって、はじめは金星のことなんかも調査
に入っていた。ありていには地図や測量、動植物なども。
生まれが低かったため、能力による「推薦」でキャプテンの位になった。航海だ
けでなくなかなか頭がよく該博でもあったよう。
なんだけれど、厳格ではあってもたいそう人望があったという伝承や航海の資
料はあっても、人となりがとんとわからない不思議な人物で、早世した6人の子
供のことはともかく、奥さんのこともまるでわからないらしい。
だから、かのアリステア・マクリーンをもってしても、当惑した表現が多いのね。
戦争や東西の緊張関係下のスパイ物だけでなく、「女王陛下のユリシーズ号
という息も詰まらんばかりの海洋スペクタクルの名作をものした作家なのだか
ら、航海日誌などをもとにいくらでも想像力たくましく描くこともできたろうに、そ
ういうアプローチは採らず、いたって冷静に航海を追っている。表現上の勇み
足なんか全然ない。
それが物足りないもんだから、あまり受けなかったんじゃないかな。どうだった
か知らないけど。
自分ちのもの(領土)にしちゃおうということもあってだったのだろう、なんにでも
名前を付けていくというのが笑える。でもかなりのところでそのままちゃっかり
英国領にしてしまっているからねえ。笑っちゃいけないか。
おしまいには、名前の候補が枯渇してしまったりもしたんだって。
そのたくさんの命名、特に南太平洋で今でも結構使われている。
3度目の航海中、ハワイに2度目に立ち寄った際に、何人かとともに殺され、
おそらく(「神」として)食われてしまった。そのいきさつがはっきりしない感じだっ
たのが、若干物足りない。そりゃ自分で航海日誌には書けないけどさ。
フラに入れあげているウチのカミサンにそのことを言ってみたが、ノーリアクシ
ョン・・・
動植物のための画家以外にも画家が随行していて、いろんな絵を描いたよう
で、これがいくらか載せられている。この本の魅力として絶大。
いや、ショームナイもんでもいいから、もっともっと絵を載せてほしかった。
“石炭船”というのが使い勝手がいいので、はじめはそれで、その次も石炭船
のタイプの船を使ったという。スピードは出ないが堅牢でドデカイ帆船。乗組員
も70-80人ぐらいいたようだが、中は食料も半端な量でなく、豚、鶏、馬その
他いろんな動植物も乗り合わせ、女が入れば さながら“ノアの方舟”状態だっ
た時があるなんていうのね。特に豚や鳥は半端な数じゃない。船倉のその喧
噪、その臭気・・・。すごかったろうなあ。
著者の静かな語り口がかえってそうさせたのか、帆船の雄姿をベースに、航
海に伴う様々なシーン、艱難辛苦を映像としてかなり意識してしまう、楽しい読
書だった。

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   (イースター島
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   (タヒチ
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   (3回の航海の経路)