休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

多島斗志之/短編集「追憶列車」

イメージ 1
20140126(了)
 

多島斗志之/「追憶列車」

 

  マリア観音
  預け物
  追憶列車
  虜囚の寺
  お蝶ごろし
     解説:杉江松恋
     2003年/文庫/短編小説集/角川/中古
     <★★★△>
 

<本の内容>第二次大戦末期の砲火の下、フランスからドイツへ脱出する列車で
出会った日本人少年と少女の淡い恋心を描いた表題作の他、主婦の足下に忍び
寄る謎の女を追う「マリア観音」、清水の次郎長の三人目の妻・お蝶が男女のもつ
れから死に至るまでを書いた「お蝶殺し」など魅力の五篇を収録。
1990年の単行本「マリアごろし異人館の字謎」(講談社)がもとだが、一部差し替え
てある。第一作品集だそうな。
マリア観音; 謎の女による不穏な始まりがこんなオチに進んで、感動的なというに
近いようなあっけにとられかた。妻(母親)からの視点。これが中では面白かった。
預け物; これも妻の視点から。昔友人に預けた絵を探して、たらい回しに遭う。
追憶列車; 第二次大戦の戦時下、パリからベルリンへ逃げるように走る列車の道
中で、日本人少年が経験すること。
虜囚の寺; 日露戦争の時期、ロシア人捕虜が四国松山に集められていた。逆の立
場の気骨のある者同士の駆け引きと、そこに絡む二人の少女たち。
お蝶ごろし; 清水の次郎長の3人目の妻になったお綱(お蝶)には忘れられない男
がいた。
いずれもなかなか微妙な切り口からの物語が紡がれ、すいすい読み進めてしまっ
た。下調べも綿密なようで、それは解説の杉江松恋も書いている。
プロの短編集だと思う。
ただし、初期の作品集であって、この後どんなふうに作風が変わるのか、変わらない
のか・・・。長編ばかり読んだので、それらとは大変違っているんだと思いました。
切り口がちょっと風変わりな話ばかり。解脱とは少しずらしているというような、スレッ
カラシ(悪口じゃありません)に受けるような感じじゃないかなあ。