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<本の内容>第二次大戦末期の砲火の下、フランスからドイツへ脱出する列車で |
出会った日本人少年と少女の淡い恋心を描いた表題作の他、主婦の足下に忍び |
寄る謎の女を追う「マリア観音」、清水の次郎長の三人目の妻・お蝶が男女のもつ |
れから死に至るまでを書いた「お蝶殺し」など魅力の五篇を収録。 |
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1990年の単行本「マリアごろし異人館の字謎」(講談社)がもとだが、一部差し替え |
てある。第一作品集だそうな。 |
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マリア観音; 謎の女による不穏な始まりがこんなオチに進んで、感動的なというに |
近いようなあっけにとられかた。妻(母親)からの視点。これが中では面白かった。 |
預け物; これも妻の視点から。昔友人に預けた絵を探して、たらい回しに遭う。 |
追憶列車; 第二次大戦の戦時下、パリからベルリンへ逃げるように走る列車の道 |
中で、日本人少年が経験すること。 |
虜囚の寺; 日露戦争の時期、ロシア人捕虜が四国松山に集められていた。逆の立 |
場の気骨のある者同士の駆け引きと、そこに絡む二人の少女たち。 |
お蝶ごろし; 清水の次郎長の3人目の妻になったお綱(お蝶)には忘れられない男 |
がいた。 |
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いずれもなかなか微妙な切り口からの物語が紡がれ、すいすい読み進めてしまっ |
た。下調べも綿密なようで、それは解説の杉江松恋も書いている。 |
プロの短編集だと思う。 |
ただし、初期の作品集であって、この後どんなふうに作風が変わるのか、変わらない |
のか・・・。長編ばかり読んだので、それらとは大変違っているんだと思いました。 |
切り口がちょっと風変わりな話ばかり。解脱とは少しずらしているというような、スレッ |
カラシ(悪口じゃありません)に受けるような感じじゃないかなあ。 |
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