休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

伊坂幸太郎/『AX』

20260426(了)
AX/伊坂幸太郎
  AX
 BEE
 Crayon 
 EXIT
 FINE
 
  2017年/連作短編小説/KADOKAWA/単行本/中古(積読から)
  <★★★☆>

安定感抜群のエンタメを途切れず出している(らしい)伊坂の、9年前の作
品。この頃は海外での評価や映画化も多いが、スラプスティック系というこ
とになるんだろうか。(1年ほど前に読んだ「死神の精度」、楽しかった)
 
妻や息子に隠れて、人殺しを仕事にしているが、一応会社員(文房具メーカ
ーの営業)もやっている。せんだって観たリーアム・ニーソンの『プロフェ
ッショナル』も、人知れず殺しを生業にしている男だったなぁ、と思い出し
た。ここでの主人公兜(カブト、裏稼業の名)は恐妻家。苗字は三宅・・・
妻への痛々しいというしかない気遣いを、しっかり笑いに結び付けている。
単純な理屈の積み重ねにすぎないながら、身につまされて渋い笑いになる。
る。それでも読んでいる分には楽しい。そして、仕事/事件の舞台がまさか

という身近さになるに及んで、ドタバタ度(≒思い込み度)も危険度も上が

る。

AXはそういう裏の仕事をする兜の日常、仕事と家庭のありようと思考のあり
ようを一通り紹介する。リーアム・ニーソンのような大男ではなく、目立た
ない普通の男だが、格闘技にも然るべく長けてはいる。緊張感がありつつも
すっとぼけてもいるのは「仕事」の伝達や斡旋係の医者との、符牒を使った
奇妙なやり取り。
 
BEEは、家が中心。スズメバチ退治の一部始終。カミさんや息子とのやり
取りの居心地の悪さもよくわかるが、スズメバチについては、けったいな独
り相撲。
 
Crayon、なぜかボルダリング。「自分の家族の平和」を願いつつホール

ドを掴み壁に身を寄せ・・・妻がもっと優しく接してくれますように・・・

ん?

ボルダリングを通じて、恐妻仲間(友人)ができる。二人とも子供が小さい
ころにクレヨンで男親の顔を書いてくれたのも共通点。
2人で呑みに行く際中、絡んできた男を死なせ、兜には瓢箪から駒の死体が
手に入ったが、せっかくの友人とは疎遠になってしまう。余韻がいい。
 
 あと2篇は、話がすこし長くなります・・・
 
EXIT 中心は何だろう、一つは、兜と息子の語り合い、とその内容と二
人の関係性。もう一つは、百貨店の警備員と少し語り合って、「友人」の概
念をいじくるんだが、警備員の息子が夜の職場見学を言い出して、警備員自
身が厄介ごとに気づき、兜に手伝いを頼む。悪ガキは来るが、別の事態が待
っていた。臭わぬでもなかったが、果たして・・・
とうに裏稼業を辞めたくなっている兜の環境は、ゆっくりと人間性を回復す

るとともに、妙に卑近なところから、にっちもさっちもいかなくなってしま

った。

 
FINE  最終章。なんと兜がいなくなってしまった。息子(克巳)が語
り部になっている。裏稼業で殺し屋をやっていた父親があっさりいなくなり、
意外や10年強がたっている。高校生だった克巳には妻も子供(3才)もおり、
同居ではないが、兜が痛々しいまでに気を使った彼の妻が、裏稼業のこと知
る由もなく存命。克巳も裏稼業のことなんぞ全く知らなかったが、出てきた
鍵を通じて、父のことをなんとはなしに調べることになってしまい、サスペ
ンスも発生してしまう。
兜が死んだとすれば、これ以上はない「普通」の終わり方でした。
ハイ、広い意味で捉えてほしいが、基本、男は恐妻家・・・
 
どう折り合いをつけるんだろうと、最後はさすがに考えちゃいました。杞憂

でしたけどね。映画化したらきっとヘンな作品になるだろうなぁ。ハイ、お

わり!

けどさ、映画といえば、ブラッド・ピットの奇妙奇天烈な『ブレット・トレ
イン』!これ、伊坂の『マリア・ビートル』が原作なのでした。読む気なん
ぞないけれど、小説のほうをどれくらい生かしてあったんだろうなぁ。ケッ
タイな映画だった。

 

(ついでの追)
5月26-7日ごろだったはずです。競馬のことはたいしてわかりませんが、女性
騎手が初めてG1レースに勝ったとかでニュースでわぁわぁ騒いでました。
その馬の名前が「ジュウリョクピエロ」、つまり『重力ピエロ』。伊坂幸太郎
の2003年のかなり売れたであろう小説のタイトルと同じ。読んではいません。
『このミス』の10位以内に入っていたように覚えています。(面白そう)
他でこんな言葉は知らないから、馬への命名者は伊坂の小説を読んだか、そ
のタイトルが面白いと思ったか。おそらくは、前者だろうと想像しています。