休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『サントメール ある被告』

20260407(了)
映画『サントメール ある被告』
  アリス・ディオップ監督/ガスラジー・マランダ/カイジ・カガメ
  2022年製作/123分/フランス/原題:Saint Omer/PrimeVideo
  <★★★☆>

これ、結構書きにくい。簡単になら一行で済むかもしれんが・・・
フランスは特にアフリカ由来の人が多いから、こういう作品が普通に多いと
いうか、人種の問題もピンからキリまでのジャンルにわたってある。でも、
この作品の作りはちょっと毛色が変わっていると思いました。
 
セネガルのダカールから法律を学ぶためにフランスに留学してきたロランス・
コリは、哲学を学ぶことにする。倍も年上の男(妻子がいる)といい仲にな
る。それが色々あって(って、その色々が映画の主題)、生後15か月の娘を
殺してしまったという罪状で裁判にかけられる。
なんとも動きの少ない、裁判の中での喋り(恐らく実際のものに近い)がメ
イン。ただ喋っている。でもそれがなかなかスゴイのですな。想像ですが、
映画の手練れじゃ採らない手法でしょう? そうでもないのかな?
 
もう一つの視点があって、この裁判を宿泊してまで傍聴している背の高い黒
人女性がかなり執拗に描かれる。彼女自身もセネガル系だからというのが
取材の動機らしい。作家か記者か、とにかく物書き。徐々に個人的な反応が
エスカレートしてゆく。いわば二重仕立てなんだけれど、どうもその二重仕
立ての意味が分からない。わからないので、割愛。(作者の意図がわかって
ないので、いい筈がないのでしょうが)
 
ロランスの示す多面性は一見ややこしい。アフリカから出てくるまでの出自
や家庭の事情。法律から哲学への方向転換(これが大きい!)。男との関係。
子どもにかかわる様々な思いや考え。哲学をかじりながらも近づいてしまっ
た「呪術」の(つまり先祖返りの?)影響。などなど・・・
そうしたものが合わさって、子どもを死なせてしまった理由は、しまいには
曖昧模糊としたもの(証言)になってゆく。
 
はい、これでも書きすぎかもしれませんが、結局書いちゃいますと、すべて
黒人女性をいたって当たり前に差別してしまうことが根源で、結果的に行き
ついてしまった複雑な状況を描いている。差別される側に起きてしまったこ
との丁寧な分析。する側の様々な認識のうち、仰天するような(実際には知
っているから仰天はしませんが)証言も描かれていました。
言葉をなくしてしまいそうな話ですが、なくすわけにはいかない・・・
そのくらいにしておきます。
 
2016年に実際にあった事件をもとにつくられた、とある。高々10年前の話
とは思えない「古さ」とその裏返しみたいなものを感じました。それだって
映画の主張と重なっているでしょう。
フランスの裁判のある形式なんですかね。裁判長のあの仕切り方!
最後には陪審員みたいな立場の数人が泣いていましたっけ・・・。
そうそう、ロランスのフランス語は、セネガルを出る時にはすでに完璧だっ
たみたいです。気にはなりましたが、これも、どう考えればいいのか・・・
ひどい鑑賞記。ま、しょうがない。