休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『ゲーテはすべてを言った』

20260120(了)

小説『ゲーテはすべてを言った』

/鈴木結生

  2024年9月30日/週刊朝日ムック/小説トリッパー 2024年秋季号
  <★★☆>

芥川賞受賞作)
独文の偉い先生である義父(統一)と、オペラを観聴きするためにドイツへ
行った折、義父が珍しく話し始めた内容が面白そうなので、録音。
書き手は、帰国後それを小説の形に作り直したという体の話。身近なものだ
けでない、とても(文学的でいわば衒学的)守備範囲の広さのある内容のも
の。なんたって「すべてを言った」だからね。
 
当て字を含めて、漢字の使い方が独特だけれど、ん?と思うのはたいていル
ビが振ってあるので慣れてくる。ドイツ語や英語が出てくるのもまあ何とか

なります。例えば「済補」⇒「スマホ」。人名もたいていヘンテコリンでした。

要はゲーテをあがめる「ある独文の先生」なるものの実像、みたいなものか
なあ。ワタシも独文には縁があったので、知っている先生たちに当て嵌めな
がら読んでしまいました。といっても、ついて行けたとは言えないですね。
往々、嘘ばっかりだろう、なんて気も起きました。
文学系の先生を知っている方にはこうしたもの(失礼)は、わかりにくくは
ないんじゃないかと思うものの、この系統の先生を全く知らない方だと、「な
んだよ、この義父って方は!」と、イラつく方がいそうな気もします。
 
なにかというと「ゲーテはすべてを言った」に収斂しがち。収斂といっても様
様なシチュエーションにおいてなのですけど。と、これじゃ何のことかわから
ないですよね。
統一という大学の日常、様々に感じ考えたことを、「文学」の範疇で拾えるだ
け広く拾った言葉や概念をぶち込みつつ、「ゲーテはすべてを言った」という
言葉が指すことに関して、まるで遊び半分ででもあるかのように説明を試み
ている。浮世離れも甚だしく、当然のようにあっちこっちで空想を飛び回らせ
る。そんな感じ。あきれるようなジャンルの広さに、「衒学」なん言葉をつい
使っちゃった。言い過ぎ。
ゲーテの解釈を、広範な読書遍歴、映画、音楽などを次から次へと織り込みな
がら、文学関係が中心の人々の生活臭のしない奇妙な日常やストーリー的な断
片が流れて行く。
Love does not confuse everything,but mixes.ってのもよく出てきたなぁ。
ドイツ行きの部分がいつの間にか終わっていて、現在形に戻った感じになると、
まだ話は続いているふうで、オシマイ。
 
ワタシには、結局お手上げでしたが、この作品の世界は、ゲーテと結び付けて
いるから古いというわけではなく、新しい世界でも文章でも表現でもないと思
います。ほとんど時代錯誤っぽかった。芥川賞として、なにが受けたんですか
ね。書いた人はスゴイとは思います。意外にワクワクしながら書いておられる
気がする。今どき珍しい書き手なんじゃないでしょうか。感覚的には狭い日本
からは踏み出しているとも思うけれど、、、 それが受けたの?
 
去年6月の新聞記事で、批評家福嶋亮大さんが書いた世界文学(の構造)を分
析した研究本を紹介したものがあって、とっかかりの方にこんな個所がありま
した。記事のほんの部分です、、、
             (本は「世界文学のアーキテクチャ」PLANETS刊)

  

なんてね。この作品に大いに絡んでそうな気がしたので、引っ張り出してみ
ました。記事では、いったんは世界文学のゲームオーバーを言い出している
んだが、その先には不確実な時代に向き合う世界文学というものが、構造を
分析することで見えてきている、みたいなことが書かれている。柄谷行人
名なんかもちらっと見えたもので、それだけでワタシなんぞギブアップです
けどね。でも、その先は?
 
丸谷才一の『樹影譚』に書かれているように、荷を降ろすように(ここでは
小説をではないが)ものを書くことで楽になる・・・なんてことも、わから
ないようで、なんとなく意味することはわかるような気がするが、そんなの
が数珠つながりに出てきたんじゃ、結局みーんな曖昧になっちまって・・・

ゲーテなんて、「ファウスト」なんて、すごいけどそんな感じじゃん、もとも

と・・・ 堂々巡りです。

 
そうか。このかた、様々な詩の形やメフィストやグレートヒェンは出てこな
いけれど、ご自分なりの「ファウスト」を書かれたのかもしれんね、聖書の

現代的(本当に現代!)解釈を拵えてみるとかさ・・・

 (ヘクサメーターなんて詩のスタイルの言葉を突然思い出しました)

 
ということで、、、疲れました、なにを感じたらいいのかもわからないまま、
再読の気力なし。早い話が、何度もわかりそうになっては、馴染めず投げて
しまった世界です。

選者も眩惑されたんじゃないんかい。んなことはないか、こっちが無学なだ

けだよね。