休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『敵』

20250917(了)

映画『敵』

 監督・脚本;吉田大八/長塚京三瀧内公美松尾貴史松尾諭河合優
 原作;筒井康隆
 2023年製作/108分/G/日本/配給:ハピネット/DVDレンタル
 <★★★★△>

確か新聞の紹介記事で観た作品。あまり面白そうじゃないけれど、原作者
が(実存や虚無を独特の ― どちらかというとバカげた?― 茶化し方をし
て、この先文豪扱いされそうな・・・って、知ったことではありませんが、
ハハハ)筒井康隆だというんで、リストに残しておいたんでした。
筒井は若い時にいろいろ読んだものの、オッサンになって以降は殆ど読む
ことがなくなってしまった。(少しは読みましたけどね) 結局いくつかの
長編以外は覚えちゃいない気がする。
 
仏文のわりと有名な先生だったらしい渡辺という後期高齢者男が、退官後
20年だかもたってしまい、祖父の代からの古い家に一人住まい。カミさん
はとうに亡くなり、預貯金がどれだけもつか計算しつつ、生活は一人でな
んでもやる。洗濯はもちろん、整理整頓もきちっとしている。簡単ながら
料理もやって、これがなかなかちゃんとしたもの。
講演、以前の著作の印税のほか、雑誌の原稿料などが収入源のよう。
古い友人や雑誌社との付き合い、様々な年代の教え子(に近いだけのもの
もいる)たちとの付き合いが、人や世界との接点。
著述と並行して、ほぼ天涯孤独の身に近いんだけれど、一人いる親族にあ
てて、遺言書をためつすがめつしたため中。 「こんな死に方」をして申し
訳ないんだが、なんて文言も入っている。「こんな死に方」?
ところが、人々との接点が、徐々に徐々に夢の中で(?)、自らの人とし
てのありきたりの欲望に添うように、現実が知らぬ間にするっと幻視・空
想の世界へと変容し始める。
気づくと朝目覚めて、それらは雲散霧消してはいるのだが、予想通り、そ
れらの「妄想」は日がたつにつれてどんどん発展し広がり、深まっても行
く。当然のように死んだ妻まで出てくる。隣家のジジイが犬の糞に拘るの

に巻き込まれるさまは始めは現実で、実にオモロかった。 (よくわかりま

す!)

 
さて、原稿を書くのに使っているPCに、詐欺めいたスパムメールがちょく
ちょく入るのだが、それが「敵」の存在に注意喚起するような内容になっ
てくるという事態も、同時並行的に、且つ暗示的に現れるようになってい
る。いろいろ今風にアレンジ。しかし、「敵」とはいったい何?
これら妄想がハチャメチャな状態になってくるというのが、いかにも筒井
康隆ふうで、この「ハチャメチャ感」、結構うまく出ている。妙に懐かし
いような感覚を覚えながら観てました。よくぞ映画にされた。
 
妄想の転がり具合を先生自身は全く制御できない。最後は行きつくところ
まで行きまっせ―という流れです。そしてカタストローフの後は、意外に
静かないいエンディングが待っています。小さい落ち/さげ とともに、後
味は悪くなかった。後味だけはちょっとね、心配していたのです。
 
「敵」についてはワタシなりに思うところがなくもありませんが、案外重
層的なんじゃないか。それを開陳するのはやめておきます。
それよりこのお話が、ちょうど読み始めた本(ミステリー)やオフクロのレビー
小体型認知症とバッチリ重なってしまったことは書いておきたいと思いま
す。先生の脳細胞もかなり緋色に染まっていたんじゃないかって。
 
アチャー!と言いそうで耐えて耐えて、仏頂面を続ける長塚京三さん、な
かなかはまり役。予想していなかった「筒井ワールド」でした。

 

  このあと、つまり上をアップしたただいま現在、映画の感想メモがひ

  とつも書けてませんで、プールなし。ちょっと困ったな―、というと

  ころです。次まで間が開く、きっと。どうでもいいことですけどね。