休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

浅田次郎『流人道中記』(上・下)

20240814(了)

浅田次郎『流人道中記』(上・下)

  2020年/時代小説/中央公論社/単行本/中古
  <★★★★>
読売新聞の連載小説やったらしい。最後まで来てわかった。
ワタシも今、朝日の土曜日の付録というか別紙というか、に週一で連載されて
いる沢木耕太郎の時代物を、なんとか抜けることなく読み続けていまして、そ
ろそろ結末が近づいてきたなぁと思わせる状況です。読み終えた分は残してい

て、随分ぶ厚い。終わったら、どうしたもんだろう、なんて時々思うこのごろ

です。

さてさて、「流人道中記」上下。
高位の旗本であった流人(蝦夷地送り)と二十歳の若き押送人の奇妙な凸凹コ
ンビが、江戸を出てから津軽三厩まで行く奥州街道の道中を、一種の詩情を
交えつつ、長く続いた武士の世の問題点を様々洗い出す、なんてことも結果的

にしながら描くロード・ノヴェル。始めてからすぐ、たった二人だけの旅にな

る。

硬軟両刀遣いの懐の深い流人青山玄播は、頭の良さ、勘の良さ、教養の深さも
あるうえに、武士としての気品や威厳や人徳まであって、どう見ても流人には
見えない。決してミステリーっぽくはないけれど、切腹を拒否したという破廉
恥漢としての流人玄播の秘密や事情、あるいは考え方はゆくゆく分かってくる
ようにできている。
一方若き押送人乙次郎は鉄砲足軽の次男坊で、ひょんなことから町方与力の家
に婿入りして一躍出世。女房殿はまだほんのおぼこで、添い寝をするのが関の
山。考え方は立場ということもあってか超真面目ながら頭は悪くなく感性も豊
か。ではあるのだが、はじめはまったく知らされていなかったため、色眼鏡で
見ていた玄播のことが、道すがら様々に起きることへの対応力や人間的なすば
らしさを目の当たりにするにつれ、本心では惹かれ、外面ではツンケンせざる
を得ない。それも玄播にはほぼほぼ見抜かれている。
抜き差しならぬ事情にぶっ詰まってしまった人々に出遭うたび、二人の主客転
倒としか言えないような場面が起きてしまうことから、ユーモアさえ漂う道中

を、読む側は楽しめばヨロシイという感じでしたね。乙次郎の成長譚という面

も当然ある。

さほど盛り上がるという結末ではなかったにもかかわらず、最後のページでは、
ワタシ、うっと来てしまいました。
歳のせいかもしれない。
 
浅田の小説では、って、そんなにたくさん読んでいるわけではないのでナンで
すが、『鉄道員』と『壬生義士伝』では確か、泣かされたという記憶がありま
す。うまいですねぇ、このかた。あざといと言ってしまいそうになる。まぁ、

目論見通りちゃんと乗ってあげられたということでもあって、恥ずかしがるこ

ともないのでしょう。

  表表紙、裏表紙、それぞれの内側、などを

  載せてみただけです・・・