休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『せかいのおきく』

20240808(了)

映画『せかいのおきく』

  阪本順治監督/黒木華寛一郎/池内壮亮/石橋蓮司佐藤浩市
  2023年製作/89分/日本/DVDレンタル
  <★★★☆>

レンタル屋で見つけたこのタイトル、恥ずかしながら全くの記憶違いで、「おき
く」を「きおく(記憶)」と覚えていまして、なんで「し尿処理」にかかわる話
が「世界の記憶」なんてことになるんだろう、なんてネ、嘘じゃない、本当に思
っていたのです・・・(ハハハ)
 
安政5年から始まる江戸の「汚わい屋」二人と下町(木挽町?)中心の生活圏と、
そこに住む人々、特にお武家を辞めたらしい男とその娘「おきく」が、安政6年、
万延元年あたりまで描かれる。
「世界」という言葉は、この時代にはまだできていないか、全く一般的ではない
ものだったに違いない(確信はありません)が、作者にとってはこの言葉しかな
かったのだろうと思います。
 
江戸下町、特に長屋のトイレ状況はあんなものやったんかもねぇ!
なかったらえらいことになる大切極まりない職業とはいえ、なにせ「汚わい」で
すからね、ずばり汲み取って(買って)お金を払い、船でもって貯める場所まで
運び、今度は農家に売る、という仕事。畑に撒くシーンもある。もろ屎尿を(そ
れらしくではあっても)リアルに写すのですから、えらい冒険的。
大半モノクロなんだが、時々数秒カラーになるのです。どういう基準でカラーで
見せたんだろう。理由はよくわかりませんでしたが、でもいい感じでした。そし
て一回だけナニもカラーになりました。この作品、確か海外の映画祭にも出たは
ずで、よく上映できたもんだ。大半が「素敵なモノクロ」だったからこそ大丈夫
だったんやろかねぇ。(ウジはなしやけど)
おもわず鼻をつまみたくなる感じだって何度もあった。臭いと言えば、江戸の下
町がいかに糞尿の臭いで満ちていたか、想像しちゃった。
 
幼稚園や小学校の低学年あたりまでは、農家が汲み取りに来ていましたし、その
同じオッサンたちが、年末には府営住宅のあちこちで餅を搗いてくれたりもして
いましたっけ。
一度か二度だけだったはずです、この映画だと「船」に当たるわけですが、馬が
木造のどでかいタンクを曳いて通りかかったのを覚えています。
それから、小学生の頃、その行先であるいわゆる「野ツボ」に落ちたこともあり
ました。一回だけ。あの時はいろいろと悲惨やった!

えー、戻りまして・・・
汚わい屋一人が二人になる、彼らと元お武家の娘が知り合いになる、下町の面々
とのいろいろ、何の説明もないがそのお武家が何らかの事情で誅殺され、その娘
も喉を斬られて声を失う、汚わい回収を下町だけでなく武家に広げてのいざこざ
、、、 汚わい屋、娘、下町の面々、娘が寺で教えていた子どもたちや住職など
との心の通わせ方を中心にさりげなく暖かく描いていて、汚わいのことがなけり
ゃ、案外なんの変哲もないお話。でも、汚わいがあるからそうはならなかったと
言っていいのかもね。
それから、環境問題に絡む話として考えるきっかけにはなるかもしれないけれど、
この話の先にあるものがあまりに多いのでね、あんまり気にするのもどうか。
ワタシはいたって楽しく観ました。