休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

コルンゴルト・ヴァイル・クルシェネク/ヴァイオリン協奏曲

20230401(了)

コルンゴルト・ヴァイル・クルシェネク/ヴァイオリン協奏曲

(1)エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897-1957):
   ヴァイオリン協奏曲 Op.35(1945)
   ①10:05 ②8:54 ③7:23
   <★★★★>
(2)クルト・ヴァイル(1900-1950):
   ヴァイオリンとウインドオーケストラのための協奏曲 Op.12(1924)
   ④Ⅰ10:29 ⑤Ⅱ.3:38 ⑥Ⅱ.3:32 ⑦Ⅱ.3:44 ⑧Ⅲ.7:11
   <★★★△>
(3)エルネスト・クルシェネク(1900-1991):
   ヴァイオリン協奏曲 №1 Op.29
   ⑨12:35 ⑩5:08 ⑪3:45
   <★★★☆>
 
   シャンタル・ジュイエ(vn.)
   ジョン・マウチェリ指揮/ベルリン放送交響楽団
   録音:1995年、ベルリン Tot.76:56
   CD/協奏曲/Ⓟ&ⓒ DECCA Record/輸入/中古

(1)コルンゴルトだけは知っています。聴いたものの中には、ムター/プレ
ヴィンの極めて豪華なご夫婦ものもありました。確か息子のCDで聴いた。でも
この曲を聴いたのは久々。「自作の複数の映画音楽に基づく」とあります。
全体のムードとしては後期ロマン派。もっとも、第1楽章は30-40年代のロマン
ティックなモノクロ映画のゴージャスで非常に美しい序曲かエンドタイトルと
いう感じ。マーラーの先を行って、後期ロマン派の行き着いた先、甘ったるい
ことこの上ない。最後にドシン!と来るコーダにビックリする。
第2楽章は更に息が長く甘い音楽。第3楽章は一転猛烈に速い楽章で、独奏ヴ
ァイオリンは気がふれたみたいに難しそう。ここのコーダもやたらデカイ音で
ドカーン、ドカーンという終わり方。
 
先に書いておくと、録音はいまいち。オケはなんとか普通に録れているが、ヴ
ァイオリンの音が固く、響かず、音が小さめ。実際のホールじゃあ、音が小さ
いのはしょうがないとはいえ、この響かなさや固さはいささか嬉しくない。
音が隅々まで柔らかく捕えられていたら、、、まあもっと映画音楽に近づいた
かもしれないが、それでもこの曲の本質が更に表現されたんじゃないか、なん
て思いました。
古い優れた映画音楽の掘り起こしという企画(RCA、アナログ録音/チャールズ・ガー

ハート指揮/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団のCD化)で聴いていたために、記憶に残っ

ていたんでした。15-6枚はあったか、ほとんどが名盤で、ワタシの宝物。

 
もとの映画は以下の如く・・・
 第1楽章 
  《砂漠の朝(Another Dawn)》 1937 あの美しいメロディ!
  《革命児フアレス (Juarez)》の「カルロッタの主題」 1939年
 第2楽章
  《風雲児アドヴァース(Anthony Adverse)》 1936
 第3楽章
  《放浪の王子(The Prince and the Pauper)》 1937
マーラーの奥さんに献呈されたとあって、なんとなく納得。
ネットで見ると、この曲、実に様々な有名曲とカップリングされているのです

な。ということは、ヴァイオリン協奏曲としてもはや完全にスタンダードな曲

なんだね。ワタシのほうが遅れている。

 
(2)ヴァイルはそもそもほとんど聴かないもんだから、珍しくてね。しかも
ウインドオケがバック(コントラバスは入っている)のヴァイオリン協奏曲。
このことも珍しい。録音のせいもきっとあるとは思うが、ドライ極まりなく、
皮肉っぽいサウンド新古典主義だとか擬古典派なんていうよりは、ずばり
(新)即物主義というところです。ロマンティシズムのかけらもない。
ヴァイルは始めは、マーラーシェーンベルクストラヴィンスキーなんか
からも影響を受けて「普通」だったものが、歌や歌劇や舞台に軸足を移して
ゆく。ユダヤ人なんでナチから逃れてアメリカに行く。政治的な方向に進む
のかと思いきや、ミュージカルの大立者風になった。
三文オペラ』だとか「マック・ザ・ナイフ」があまりに有名だが、いくつ
ものミュージカル以外にも、ほんとうは評価されるべき別の足跡もいろいろ

あった方のはずで、特にアメリカに逃れる前のものはあまり評価されていな

いんでしょうね。

この協奏曲の音色は潤いがなさ過ぎて、ワタシには好みではなかったですが、
この作曲家の低かった評価も今は恢復して、良く演奏されるようになってい
るなんて紹介されている。
 
(3)クルシェネクになると、とたんに音色がすてきに戻りました。聴き慣れ
たものになったということです。ワタシには、ですよ!
ヴァイオリンも素敵にむずかしいが、オケのきめ細かに音が詰まった感じは
好みです。後期ロマン派でストップしてしまい、ムード音楽になったかの如

くの(1)とは違い、もう少し時代が進んだ感じでしょうか。といってもこれ

は無調や「十二音」じゃないですけどね。

時に厳しくも、暗く深いオケの音色が、わりとロマンティックなヴァイオリ
ンを繊細に包んでいる感じ。多分第2次世界大戦の前のもの。不協和音なん
かも多いものの、さほど尖がった感じがない。ワイルと似たような作曲家に
影響を受けただけにとどまらず、十二音や電子音楽にまでも進んでゆく。そ
うそう、変貌を繰り返した作曲家なんでした。
音楽が進むにつれて全体が先鋭化しては行くんですが、難解さを感じるもの

ではなかったですね。

第3楽章がうんと短く、中途半端にフッと終わってしまう。

(1)の印象が強かったとはいえ、結構スマートでカッコよかったです。
 
 
ヴァイオリニスト、とても優れた方のよう。
指揮は、ハリウッドボウル・オ―ケストラの指揮者をやっていたことで名を
知っている程度のアメリカのベテラン指揮者。なかなかのインテりで、指揮

に関するエッセイが評判をとったとか。邦訳も出ている。読んでみたい気も

する。

 
いつも通りわかったように書いておりますが、ワタシには「クラシック」な
んかじゃありません。このCDの演奏の良し悪しなんてことは、実のところよ
くはわかりませんでした。演奏全体はきびきびとして、十分無難にまとめて
いたかなぁ、、、というところです。
録音に関する不満は決して小さくはなかった。90年台にしては、特に(1)
と(2)が伸びやかさに欠け、固くて潤いが乏しい感じがしましたねぇ。デ

ータ的にも場所は同じでも、(1)(2)と(3)は日時が違っていました。

ワタシにとってはちょっと残念。