休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

物理学者、SF映画にハマる 高木裕一(著)

20230227(了)

物理学者、SF映画にハマる  

           「時間」と「宇宙」を巡る考察

                                /高木裕一(著)

はじめに

第1部 「時間」を巡る

 第1章 タイムトラベルの可能性と限界
  バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ
 第2章 過去に戻った捜査官に自由意志はあるのか
  『デジャヴ』
 第3章 「逆行」という新しいタイムトラベル
  『TENET』
 第4章 殺人マシンは5次元世界を旅してきたか
  ターミネーター』シリーズ
 第5章 限りなく時が止まった世界を体感するには?

  『HEROES』

 

第2部 「宇宙」を巡る

 第6章 宇宙に投げ出されたときの最後の移動手段 
  『ゼロ・グラビティ
 第7章 “ファミコン”で目指した月面着陸
  『ファースト・マン
 第8章 火星で植物を栽培するもう一つの理由
  『オデッセイ
 第9章 論文にもなったブラックホールのリアルな姿
  『インターステラー
 第10章 星間飛行に必須のアプリケーション
  『スター・ウォーズ』シリーズ
 第11章 宇宙人と交流するならマスクを忘れずに
  『メッセージ
 第12章 「宇宙人の視力」と「恒星」の密接な関係
  『
おわりに
 
  2021年10月/科学エッセイ/光文社新書/中古
  <★★★☆>

寝る前の読書・・・理屈の弱いワタクシメですので、楽しい読み物であれば
いいと思って。
各章、面白そうに見えるものの、当然「時間もの」の理屈も苦手なのです。
それに、取り上げられている映画をちゃんと観ているかどうか!(観ていな
いのもありますし) 大丈夫かいな。
 
ちょっと読んだだけでわかりました、あちゃー、物理、むずかしっ!
もっとも、タイトルに「ハマる」とあるのは、出版社側の入れ知恵だろうな。
 

第1部 「時間」を巡る

バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ

もともとマンガっぽいものだから、理屈を言ってもしょうがない気もするが、

真面目に論じておられる。あとまで読んで、結局この章が「基本」だったよ

う。

場所はともかく時間までピッタリのところへ移るのは極めて難しそうで、し
かも車に乗った状態というのも苦しい。相対論の立場やTVシリーズ『12モン
キーズ』を引き合いに出しているのがいくらかわかりやすい。分子、量子レ
ベルにまで分解してしまわないといけないだろうし、とのこと・・・ その

点『スタートレック』のスタイルなら、タイムマシンとしても理論的にはい

けるかも。

更にハードルが高そうな「過去の改変」について・・・ 歴史に影響を与え
ない(なんてことはあり得ないと思うが)範囲でなら変えられるか。それと
も「並行世界」(シュレディンガーの猫)か。
タイムトラベルを認めてしまって観ていると、どうしても気になることが出
て来てしまうばかリで・・・その他もろもろ、アーーーめんどくさいねぇ、
という感じでしょうか。たくさん、参考作品が出て来ました。
ついでに、空中を飛ぶということ(デロリアンが飛ぶことから説き起こして

います)についても少し考察していて、「危ないやろ!」って 同感です。

例えば「ブレードランナー」の空って! これはワタシの妄想。

 

タイムトラベルものとしてリアルに描いて興味をそそるとおっしゃる

『デジャヴ』

第一章で出てきた問題点をなんとか先に進めてみています。リアルタイムで
過去の改変を観測しながら、現実の変化も観測できるという斬新な(!)状
況設定・・・。過去に戻った自分がミッションを思い出す?そもそも自分に
自由意志はある?過去は変えられる? なんか因果応報的、ループ的世界に
入っていきそう。

この作品観たことないはずなんですが、ストーリーに「デジャヴ」感があり

ます。

 

『TENET』 これだけ説明してもらってもようわからんが、ところどこ

ろ、ドラマの構造がわかった気もします。観ている時はまるっきりわかって

なかったかも。

 

ターミネーター』シリーズ 転送するのに「裸の意味は全くありません」

には笑ってしまった。カミサンはやっぱりおちんちんアタリに視線が行く

と言ってましたっけ。
テレビドラマで「サラ・コナー・クロニクルズ」というのがあって(確か
にありましたねぇ、観てないですが)、これが理屈の上でも(?)面白か
ったそうです。というか、このドラマのほうでの理屈に拘って時間旅行の

問題を指摘していらっしゃいますナ。勿論ついて行けません。この先読ん

で意味あるんかいな・・・

 

HEROES』 TVドラマやね、これ観てません。

時間を止める能力のことなどを中心に。観る側双方の見え方云々。

 

第2部 「宇宙」を巡る

『オデッセイ』の次に海王星の近くまで行く『アド・アストラ』も考えた

ようですが、結局パスされています。
ともあれここからはぐっと身近になります。

 

ゼロ・グラビティ』 国際宇宙ステーション無重力のこと。

地上400㎞でも、地表の重力の88%もあるんですねぇ、そんなことも知

りませんでした。

 

ファースト・マン』 観たかなぁ。アームストロングさんの伝記でした

よね。

1960年代末ごろのパソコンなんて、80年代の任天堂ファミコンレベルの

しろものだったとか。対ソ連とはいえ、あんなもんで機体の制御や軌道計
算をやって、よく月まで行って帰ってきたもんだよ、今なら信じがたいほ
どの無謀だった、、、なんだそうな。重力圏から脱出するための理屈や、
月から戻るときのランデブー方式の難関、予期せぬ回転運動のこと(この
章はじめのスピナーの話が繋がる)など。
  ・・・アポロの映像では、地球が地平線から上る映像を見ることがで
  きますが、これは月面上では決して起こらない現象です。月の周回軌
  道のロケット内からしか、この「地球の出」は拝むことができません。
そうなんですね。
この著者先生も宇宙飛行士に応募したことがおありだそうです。
 

オデッセイ』 金星は地球の将来であって灼熱地獄。火星より近いが、

有人で行くようなところじゃないからね。

概ね火星での孤軍奮闘ぶりが気に入られたか、難癖になりそうなところも
柔らかく表現されて、なんだか素敵な映画解説になっている感じでした。
ウィアーの小説も面白そう。
 

インターステラー』 ワームホールブラックホール、ホワイトホール

などの考え方や空想の話になっています。ワープも。入ってしまえばワー

プのようになるみたいですが、なにせあんまり遠いところに行ってしまう。

別の銀河なんかじゃなく、せめてこの天の川銀河の中のどこかで良かった

んじゃないか・・・って。

次は土星の近所にたまたま見つかったブラックホールに入って、出たとこ
ろで、3つの移住候補の惑星が見つかる。ただし、いずれにしろ時間が猛
烈にずれてしまう・・・ そのあとも問題だらけで、ヤレヤレ・・・
『オデッセイ』同様待ちぼうけ役をやるマット・デイモンのことで笑いを
取ろうとしていました。火星では英雄的だったのに、ここじゃそうじゃな
い・・・(そうでしたっけ、もう忘れてしまってますねぇ) 

おしまいは五次元宇宙モデルの解説。ノーラン監督が理論的な部分を専門

家に助言してもらいながら作ったのですな。

ワタシには太刀打ちできません。そもそもこの映画を観た人でどれだけの
人がこのような理屈をうすらぼんやりとでもわかっていたんですかねぇ。
  「・・・科学的に議論する場合、高次元だから時間も自由に過去と未
  来が見えるというのは、愛で説明することとあまり変りません」
 

スター・ウォーズ』シリーズ 「スタートレック」シリーズと併せて、

星間移動の問題を多く取り上げている。転送技術も。でも初めに、お互い

こんなに遠い星の世界で、情報も欲も善悪もくそもないんじゃない?と言

っておいて、スペースオペラを論じていますね。「スタートレック」は結

局ソープオペラだと断じられている。

おしまいのほうでは、星座のようなマップでなく、星の相関関係がわかる
マップのアプリが必要だって。言えてる。
 

メッセージ』 マスクを忘れずに、というのは笑わせるが、この作品は

生身の交流ではない。そのためには宇宙服のようなものが要るぞという意。

それ以外には・・・

 ①異なる言語同士でどのようにお互いを理解していくか
 ②異なる大気成分の環境に適応した生物同士がどのように交流するか
が問題になり、ここでは生身同士は回避しているが、拘るなら『アバタ
―』が一見うまくクリアしている。しかし、伝達方法としての乗り移り
(≒テレパシー)は話としてはクリヤしているが、実際は無理・・・
そのあと『メッセージ』に戻って、映画でも中心主題であった言語に、

そして目的に向かう。言語は専門家に任せたいとおっしゃるが、わかり

やすい解説だった。で、

 ①侵略・支配  ②友好的な交流  ③ただの興味本位
いろいろ考えて著者は目的は③だろうという。それはいいですね。
最後に、同じヴィルヌーヴの『DUNE』がこの本の刊行と同年に公開にな
るのを楽しみだと言って結んでいる。
 

『V』 これ確かあらかた観た。VHSで。でもえらい前でね、結構好戦的

な宇宙人だったような気がする・・・ほとんど覚えてませんけどね。好戦

的パターンという交流・・・

太陽系の、地球以外での「生命」の可能性に触れた後、最後はオカルトを
持ち出して、「科学とはなんぞや?」という問いへのある緩い表わし方で
し終えられまた。
(『V』は続編も作られたそうな。そっちはまったく知りません。)

 

こんな本てどうなのよ、てなふうにまとめられる方が断然多いでしょうね。

ワタシはまとめることができなかったし、まとめられても、それをアップ

する気する気にはならなかったとは思います。

 
で、全章分感想を書いたら長くなってしまいました。
 
凄い経歴の先生ですが、気軽に読めそうな本を他にも書かれているようで
す。ここには一見理屈で見るのに耐えられそうな(?)SF映画を取り上げ
ています。タイトル作品以外にもいろいろなものが取り上げられています。
でないとつまらないしね。
それでも、白けてしまうかたも、きっとたくさんおられるでしょうが、著
者先生のほうは結構楽しんで書かれたみたいでした。
ワタシのほうは、、、存外気分転換になりました。