休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人

20230219(了)

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人

   (1)一寸法師の不在証明
 (2)花咲か死者伝言
 (3)つるの倒叙がえし
 (4)密室竜宮城
 (5)絶海の鬼が島
 
   2019年/ミステリー/単行本/双葉社/中古
   <★★★△>

話題になったか、そこそこ売れたんですよね、この本。
「このミス」には載らなかったような記憶がありますが、どうだったかな。
確認するのも面倒。ならばどういうきっかけで読んでみようなんて思ったのか。
忘れちゃいました。手元にあることをいいことに、気軽に手に取ってみました。
日本人ならたいてい知っている昔話を、殺人事件(ミステリー)にしちゃった。
しかも今風に、なかなか意地悪な改変を施してある。
子どもだとか、ミステリーなんて読んだこともないなんて人がいたら、あるい
はおどろくかもしれないけれど、まあいらっしゃらないでしょう。でもそのあ
たりがターゲットなのかな。中学生や高校生・・・
ミステリー中毒のような読者は、読んでも多分感想はあまり発表しないんじゃ
ないか。悪趣味だとか冒涜ととるなんて方もいますまい・・・
ああ、ある種「地元」のようなエリアでは、嫌がられたかもしれないなぁ。
 
意外なキャラクターが死に、動機や解決はちゃんと理詰めでテクニカル。
この著者はおそらくしっかりミステリー好き。アイデアだと思いました。みん
なパターンが違ってるしね。
(1)「一寸法師」の不思議なアリバイ
(2)「花咲か爺さん」の犯人の意外性
(3)「鶴の恩返し」なんか、人間性に凝ってます。でもこれ、倒叙ものにな
 る?
(4)「浦島太郎」はなんでもござれだろうが、海底の密室ときたもんだ。
ちょっとだけ書いてみます、、、
このシチュエーションは驚天動地、面白かったですねぇ。ちょっと小ぶりに思
える竜宮の中は、乙姫様を中心にやはり小ぶりな集団を形成していて、海の生
き物たちが一匹づついる(大した数じゃない)というキャラクターの集まり。
そしてキャラたちは色恋や羨望や恨みにまみれている。そこで密室殺人が起き
る。しかも奇妙な理屈で浦島太郎がなんと探偵役に!幕切れのあり方は、理屈
はわかるものの、経験ない余韻・・・ こんなことよう考えるワ。
 
(5)「絶海の鬼が島」、つまり桃太郎伝説・・・
他より少し長い物語です。鬼たちの悲しい末路。
十一章に分かれてまして、十章までは長い時間をかけた殺鬼事件を肝心なとこ
ろは伏せて描き、本格的。「一寸法師」のツールが出て来ました。
最終章でしっかり種明かししています。桃太郎のキャラクターが鮮明になると
ともに、鬼がちょっと可哀そう・・・
 
子供に読ませたら、こっちが記憶に残っちゃって、問題視する人も出るかもね。

こっちはジジイなんで関係ない。楽しく読めました(≒笑いました)。おしま

い。